プラグマティズムの歩き方(勁草書房)
現代プラグマティズム叢書第一弾! ニュープラグマティズムの旗手による、概説書決定版。さまざまな思想が入り乱れる豊穣な世界を、パース、ルイス、クワイン、セラーズの流れと、ジェイムズ、デューイ、ローティの流れ、の2つに分け、伝統的なアメリカのプラグマティズムと20世紀の英米哲学との関係を明らかにする。 ありうべき規範を明示化し、真に知的な社会共同体を構想する思想こそ、本書が導き出す21世紀のプラグマティズムである!
avashe.icon読了
大別するとプラグマティズムにはジェイムズ、デューイ、ローティの流れとパース、ルイス、クワイン、セラーズの流れがある
前者のローティが特にネオプラグマティズムと呼ばれるようになったことに対して、パースを源流とした後者のプラグマティズムこそが重要だとする立場をニュープラグマティズムという
これら2つのプラグマティズムは歴史的に同じ名前で呼ばれているが、かなり意味合いが異なる
最近までプラグマティズムといえばジェイムズを源流とする風潮があったが、著者らはニュープラグマティズムの立場から歴史を読み直すことにした。それが本書。
プラグマティズム入門書として読んだのだが、この本はパース史観による比較的専門寄りな哲学史の本と説明したほうが適切だと感じた。入門書としては読む必要のない情報が多い印象。上巻のパースの章だけしっかり読めばニュープラグマティズム入門としては十分だと感じた。
というか、パースに対する文献学が進まず、結果後続の哲学者たちがパースを読み込めなかったことが悲劇の原因なようにこの本は読めてしまう
んで、パースのプラグマティズム自体の感想なのだが、科学者や工学者にとっては自然とやっていることを気持ちよく言語でモデリングしているという印象を受けた 簡潔に表すなら、「可謬的真理観の導入と、その世界観における規範についての思想」と言ったところ
少なくともミサック解釈の理論ではあるが、特別非直感的だと言うところは無い気がする
これが考えられていた時代(1839-1914)としては新しい考えだったのだろう
avashe.icon古典の哲学書を読むと議論が二元論になりがちで、もっと漸進的に、グラデーション的に概念を扱わないことが不満だったので、パースは偉い
数学でいえば最適化問題みたいな真理観である
この発想が出てくるのは数学者(特に貢献していたのは論理学だが)のパースらしいと感じる
こうやってみると、パースがやったことは真理という不動と考えられていたものを、可謬性という動くパラメータのような概念を導入して一段階ラッピングして動かせるようにしたんだな
規範に合意した人々からなるコミュニティの営為まで考えてるのがえらい、他者論みたいなところに一旦躓いてない