生体流体工学
【講義の目的】
生体系は、臓器・器官、細胞、そして分子レベルと階層構造をとっている。各階層レベルにおける個別の機能は、内・外的な力学的環境下のもとで力学的法則の支配を受けて変化する。そして、それらの変化は同一階層での異なる機能に影響を与えるとともに、階層を超えて異なる階層にも影響を与える。このように広範囲にわたるスケール、かつ機能が複雑に絡まる生体現象を力学の観点から整理し、理解していくことが本講義の狙いである。特に、講義では生体機能の基礎の一つである流体現象を取りあげ、講義や演習を通して体系的に理解できるように授業を進めていく。
具体的な内容としては、生体内の流動現象、特に血液の流れである循環器系に焦点をあてる。解剖学・生理学の基礎、および流体力学の基礎の復習とともに、心臓・動脈系の比較的太い血管系の血流から微小循環の血流と異なるスケールの血液の流れ、血流-血管壁の相互作用あるいは物質や熱伝達などの応用分野について講義する。また、循環器系疾患を中心に医療・医学に向けた臨床応用についてもふれる。
1.生体系内の流体現象
2.循環器系に関する解剖学・生理学の基礎
3.循環器系の流体力学の基礎
4.心臓・動脈系の流体力学
5.血管構造および血管の力学
7.微小血管系の流れ(マイクロ混相流れとレオロジー)
8.血液の流れと循環器系疾患および臨床応用
9.血流ー血管壁の連成解析
10.微小循環における流れと血栓形成