熱力学
授業もくじ
熱力学は,膨大な数の原子・分子等のミクロ(微視的)な粒子の集団から成るマクロ(巨視的)な物質の状態を、温度、圧力,体積などのマクロな物理量を用いて記述し,いくつかの基本原理をもとに,マクロな観点から物質の状態がいかに変化するかを考察する学問体系である。熱力学は,力学,電磁気学とともに古典物理学の基礎を構成している。ここで学ぶ内部エネルギー,エントロピーなどの概念は理科生にとって必須の基礎概念である。
以下に標準的な講義内容を示すが,担当教員によって項目の順序や内容は若干異なる。講義では、高校までに習った初等数学以外に、偏微分等の数学的手法を用いることがあるが、その場合は、そのつど必要に応じて講義で解説される。
0.序論
熱力学とは何か?ミクロな系とマクロな系,力学や電磁気学との対比
1.熱平衡状態
温度,圧力,状態量,示強変数と示量変数,状態方程式
2.熱力学第一法則
熱量と仕事,熱の仕事当量,内部エネルギー,定積熱容量(定積比熱)と定圧熱容量(定圧比熱)
3.熱力学第二法則
第二法則の諸表現(Thomsonの原理,Clausiusの原理),可逆循環過程 ,Carnotサイクル,不可逆過程,準静的過程,熱機関の効率,熱力学的絶対温度,Clausiusの不等式,エントロピー
4.自由エネルギー
Helmholzの自由エネルギー,Gibbsの自由エネルギー,Maxwellの関係式
その他、オプションとして取り上げられるトピックス
混合のエントロピー,エンタルピー,Joule-Thomson過程,Legendre変換,熱力学第三法則,相平衡,相律,Clapeyron-Clausiusの式,Le Chatelierの原理,化学ポテンシャル,Gibbs-Duhemの関係式,Maxwellの等面積則
ほーん
「ヨビノリ」 https://www.youtube.com/watch?v=438x0ZS4bV4
わかりやすい
1講 概観と魅力
工学的な観点としては、熱をどれくらい仕事にできるか、ということに焦点
理学的な観点としては、自由度6Nのものを熱平衡状態における温度、圧力、体積といったマクロな数少ない物理量で正確に記述できた
また、原子や分子がわからないときに完成していた
系の詳細に依存しない圧倒的な普遍性
熱力学は今のところ正しいので、未知の物理にチャレンジしようとしたとき、熱力学が見本とされる
熱力学は平衡状態と平衡状態の変化のみを扱える
熱力学は非平衡状態を経ても良いが、言えることは平衡状態同士の変化のみである
熱力学では自発的変化の方向性がわかる
時間の向きが内包された唯一の理論
このシリーズではイメージを重視する
2講 仕事と熱
熱力学第一法則
熱はエネルギーの移動形態であって、エネルギーではない
仕事も同様
だから、熱があるという表現はおかしくて、体温が高いという表現をするべき
普通は容器の運動エネルギーや位置エネルギーは無視するが、工業的には無視できないことがある
状態りょう = 熱平衡状態で値が決まるもの
足すとなぜか内部エネルギーの変化と同じになっているという見方
なんで内圧で仕事を定義しないのか?
→途中で非平衡状態を辿るから、外圧はちょっとぐらいピストンの部分が動いても変化しないと考えるから
そもそも、P外にしないと熱力学はうまくいかない
測定可能な外界の情報をもとに論理を組み立てる
仕事以外を熱と呼ぶ
系がする仕事と外界がする仕事はまじでゆっくりやらないと一致しない
その差は熱散逸になる
P = P外なのは特別
熱力学に、状態方程式を予測する力はない
仕事を計算するとき、警戒すべきことがたくさんある
ずっと準静的過程を辿るか
外圧が内圧でかけるか
温度が外に出せるか
状態方程式が使えるか、など
3講 エンタルピー
熱力学の考え方
→非状態量をある特定の過程に限定することによって状態量の変化で表す
例えば熱力学第一法則
目標は熱や仕事を状態量の変化で表すことを考える
うまい状態量を考える
内部エネルギーって直球で測ろうとしたら激ムズ
等積過程に限定することで外の情報から中の変化をかくことができた
化学では等積過程ではなく、等圧過程のときが多い
内部エネルギーだけが状態量じゃない!
→H = U + pvでエンタルピーを定義する
Uもpもvも状態量である
途中では非平衡状態になるかもしれないが、最初と最後は熱平衡
ここからは、エンタルピーの変化を計算する
すると、QがΔHでかけた!
等圧過程において、系に出入りする熱がエンタルピー変化
エンタルピーは熱そのもの、ただし等圧過程の
内部エネルギーは等積過程において系に出入りする熱のこと
エンタルピーはこれ以外の意味はない
数学的に考察したらもう少し面白いことがあるが混乱するので、とりあえず深い意味を考える必要はない
なんでpvを足したのか?
逃げてしまう仕事の分の熱も加えた
化学の例を使ってエントロピーの有用性を語る
化学反応の多くは等圧過程が多いので、ヘスの法則で用いるエネルギー図はエンタルピーを表している
どうしてヘスの法則があるのか?
Hが状態量だから!!!
4講 エントロピー
温めたコーヒを放置すると、冷めることはあるが、温まることはないという経験則がある
自発的変化の方向がある
これをなんとかして特徴づけできないか?
→エントロピーという状態量を定義する
エントロピー変化を準静的過程で考える
なぜエントロピー変化がこのように書かれるのかの、直感的な意味を説明する
統計力学をカンニングする
統計力学ではエントロピーを乱雑さのlogで定義する
熱は乱雑な動きを生む
dQは乱雑さの増加、Tは元々の乱雑さ
これは乱雑さを表す指標になってそうだよね
準静的過程のときのみ = が成り立つ
非平衡な過程のときは不等式になる
熱力学第二法則(エントロピー増大則)
本当は外界と仕事のやり取りがあっても成り立つ(すごい)
断熱変化のときは熱は変化しない
断熱過程の不可逆性の指標となる!!!
もう少し特殊な場合を考える
孤立系での自発変化ではエントロピーが必ず増大する
最大になって止まる
断熱自由膨張について考える
準静的過程じゃないので、普通に追うのは無理
どうやってエントロピーを計算するか?
エントロピーは状態量なので、準静的過程で一番わかりやすいルートを選べば良い
つまり、等温準静過程を考えれば良い!
等温準静的過程のエントロピー変化と断熱自由膨張のエントロピー変化は同じ!!
外界のエントロピー変化を考える
外界のエントロピー変化と系のエントロピー変化はセットでみないとこんがらがる
必ず、全体のエントロピー変化は0以上
系のエントロピー変化が負はあり得る!!
そのときは外界でエントロピーが増大しているはず
等圧準静的過程
さっきは理想期待しか計算してない
どうするかというと、等圧熱容量を使う
これは実験で調べられる
Cpという外の情報から中の情報を調べるという考え方
Cpが一定じゃなければ実験をして、プロットして面積で求める
5講 ヘルムホルツの自由エネルギー
孤立系での自発変化はエントロピーが大きくなる方向で、平衡条件はエントロピーが最大かつ、極大であるとわかった!
だが、孤立系じゃない、普通の系について変化の方向を知れないか?
外界 + 系という全体だけじゃなくて、系だけ見て議論したい!
熱力学では、こういう場合、変化を限定して議論する
等温等積の場合に限って、自発的変化が系の状態だけで見れるようになる
まずは、外界のエントロピーを計算する
これの方が簡単に計算できる
U-TSが減る方向に自発的変化が怒るので、これに名前をつけたい!!
全部系の状態量なのでさ辺も状態量
変化が起こるかどうか計算したいときはヘルムホルツの自由エネルギーを計算すれば良い
やったことがない化学変化でも進むかが予測できる!
等積は難しいので、等温だけで考えてみる
取り出しうる最大の仕事はヘルムホルツの自由エネルギーの変化でありそれは準静的過程で達成できる
Wがする仕事で、-Wは取り出しうる仕事
無限にゆっくりやってもTΔSっていう量が外に出て行ってしまう
これを束縛エネルギーという
自由エネルギーは最大限頑張ったときの取り出しうる仕事
まとめ
1 等温等積過程において自発変化の向きを知ることができる
2 等温過程においてFの減少分が取り出せる仕事の最大量である
実際、化学反応などでは等温等圧を考える方が実用性がある
6講 ギブズの自由エネルギー
化学やっている人にとって重要
等温等圧過程で良い意味を持つ
系だけを見ることで自発変化の方向を議論したい
外界は十分大きいので準静的と考えられる
U + PV - TSに名前をつけてえ
これにギブズの自由エネルギーという名前をつけてやる
自発的に進むかどうかの判断材料になる
GはFでかく方法とHで書き換える方法がある
等温等圧過程について考える
仕事には見落として側面がある
仕事は膨張仕事と非膨張仕事に分けられる
今までは非膨張仕事を無視してきたが、今回はあえて考えてさっきと同じことを考える
系が取り出す非膨張仕事はギブズの自由エネルギーの減少分以下であることが導かれる
取り出しうる最大の非膨張仕事はギブズのエネルギーの減少分、でそれは準静的過程で得られる
Uは内部エネルギー、PVは膨張仕事を、TSは熱を表す
等温過程で取り出せる最大仕事:F減少分
等温等圧過程で取り出せる非膨張最大仕事:G減少分
ヘルムホルツの自由エネルギーの減少分には本当は非膨張仕事も入っている
7講 化学ポテンシャル
開放系について考える
開放系:物質の出入りあり
閉鎖系:物質の出入りなし
閉鎖系は実はいろんなものを扱える
開放系という概念はなぜ導入されているかというと、閉鎖系の中の相を別々に見れないか?として見るために開放系を考える
平衡と別の観点で考える
部分モル量を導入する
状態量を2つ指定すれば物質の出入りがない場合はOK
出入りがある場合は物質の数を表す必要がある
特に今回はXがGである場合だけを考える
勘違いを生む元であるが、わかりやすい話からする
ギブズのエネルギーは示量性を持つ
化学エネルギーは1molあたりのギブズの自由エネルギー?
これが言えるのは一成分系の時だけ
エネルギーはその周りの物質の組成に依存するやろ!
相平衡(T,P一定)での1成分系を用いて化学ポテンシャルの性質を探っていく
仮想的に変化させる
閉鎖系のギブズの自由エネルギーはもう性質を知っているので、それを使う
自発的に系が進むのは化学ポテンシャルが高いやつから低いやつに進むと考えられる
ここでは1成分系というあまり化学ポテンシャルの恩恵を受けれない系で考えているので、今度は多成分系で考える
多成分系のときは定義に立ち返って考える必要がある
化学反応によって物質量が変化しない時を考える
AについてもBについても化学ポテンシャルが高い方から低い方へ自発的変化が起こる
持っている意味合いは1成分系と同じ
次は、化学反応がある場合
化学反応系について(T, P一定)
化学反応では反応系と生成系に分けて考えることで、同じような議論ができる
平衡条件
熱的平衡条件:温度が互いに等しい
機械的平衡条件:圧力が等しい
物質的平衡条件:化学Pが等しい
科学的平衡条件:反応系のP = 生成系のP