人間行動基礎論
視覚における運動の知覚
人間の認知について
人間は,環境から受け取った光や音の情報をもとに,外界のモノや出来事を認識し,過去の記憶や与えられた状況に応じて適切に反応し,また他の人間と相互作用することができる.このすぐれて知的な能力はすべて脳の情報処理によるものである.認知科学(cognitive science)とは,心理学・神経生理学・情報工学が密接に結びつきながら,その仕組みを解明し制御することをめざす巨大な学問領域である.
本講義では,多くの錯覚デモや模擬実験を体験しながら,知覚,認識,記憶,感情,思考,社会性といった「人の心の基本的な仕組み及び働き」を支えている脳情報処理の原理原則と,その背後にある生理学的・計算論的メカニズムの基礎を学ぶ.それによって,進化と学習が生み出した優れた情報処理マシンとしての脳と人間を理解するための視点を身につけることをめざす.人工知能を含めた現代と未来の脳工学技術や,「心理学の成り立ち」にも触れる.
0. ガイダンス: 認知科学とは何か
1. 五感と身体についてのエトセトラ
人間は外界からの認識の7-8割以上を視覚に依存していると言われている
眼球は水晶体の厚みを変えて焦点を合わせる
人間には盲点がある
周辺しやは錐体が少ないせいで色の情報は欠如しているが、なぜか私たちは視野全体がカラフルであると感じている
眼球は視線を固定しても常に動いている
人間は音波を周波数で分解して理解している
触覚の解像度は手と口の中が異常に高い
嗅覚と味覚は分子が結合することで反応している
音がどこから出ているかの認識は視覚情報に支配されがち
視覚は味覚を変える
2. 知覚情報処理の基本原理
知覚情報処理の原理:空間的・時間的な変化情報だけを伝達する
受容野について
網膜は画像の空間的、時間的微分を脳へと刻々と伝達していると考えられる
人間は相対的なものを知覚する
人間は脳内でフーリエ解析をして周波数次元で捉えている
差分を検出するという脳の情報処理の方式は私たちが普段目にする自然な画像を最も効率よく処理できる方式であることがわかっている
特徴分析能力は生まれつきではない
3. こころのなかの時間と空間
脳内では物事の認識と位置の認識を別の部分でやっている
網膜座標系、頭部座標系、身体座標系などがあり、座標変換が必要である
私たちは常に過去を見ている
行為に関連した神経活動はその意図よりも前に始まる
4. 外界の構造を推定するという逆問題
局所的な情報をまとめる
群化過程
人間は片目でも色々な手がかりをもとに3次元的に捉えられる
脳は三次元世界を復元しているわけではない
テクスチャ勾配も手掛かりである
物体認知の視点依存性もある
5. モノの認識と人工知能
限られた脳の処理能力を活かすためには注意機構というものがある
注意するとは意図的な情報の取捨選択である
視覚系は目から入った情報をボトムアップ処理だけでなく、過去に見たものに関する記憶や注意の向け方に依存して最終的な認識を決めるトップダウン処理を行うと考えられている
6. 意識,無意識,注意,自由意志の実験
7. 色・質感・好み・芸術を科学する
種によるセンサーの種類や特性は異なる
質感を表現するのは色よりも難しい
脳内特徴表現を操作すると質感が変わる
人間は見慣れたものを好む
8. 記憶と思い出の脳内機構
記憶には忘却曲線がある
感覚情報貯蔵→短期記憶、作業記憶→長期記憶
ワーキングメモリ量は訓練で増やせる!
繰り返すほど意味記憶は強くなり、エピソード記憶は弱くなる
記憶の記銘には情動が大きく関係する、これをフラッシュバルブメモリーと呼ぶ
手続記憶、多くの作業は慣れるほど上手くなる、上手くなるのは手続きを記憶したからである
サブリミナル効果は存在する
9. 感情を生み出す情報処理
人間は知的で合理的な判断をすると信じられてきたが、実は様々なバイアスがかかっている
プロスペクト理論:利得や損失が大きくなるにつれ、その変化に鈍感になる
利得に対してリスク回避、損失に対してリスク志向
プロスペクト理論:人間が知覚する確率は客観的確率と異なる
枠組効果:文脈が選択に影響を及ぼす
確証バイアス:信念に合致する情報ばかりを集める傾向
認知的不協和:人間は自分の選択と矛盾する情報を認知すると強い不快感を感じ、それを解消しようとする傾向がある
プラシーボ効果
バーナム効果
自然主義の誤謬:科学的知見から勝手に善悪論を展開
モーガンの公準;低レベルの要因で説明できるのに高レベルの要因を持ち出してはいけない
10. 顔とコミュニケーション
コラボは常に良い結果を生むわけではない
同調と服従
ゲーム理論
社会的ジレンマ
集団的意思決定、集団討議による意思決定は個々人の意思決定よりも極端な方向に行きがちになる
11. 思考と行為の非合理性
顔は人間にとって特別な視覚刺激
表情の次元説とカテゴリ説
12. 対人関係と社会集団の力学