共同研究提案 by 増井
以下のような共同研究を提案させていただきます
どうかご検討ください
他にもテーマはありますので、一度打ち合わせさせていただけるとありがたいです
増井俊之 @ 慶應義塾大学
/icons/mail.icon masui@pitecan.com, tmasui@gmail.com, masui@masui.org
=========================================== 提案内容 =============================================
現状の問題点
複雑なシステムやサービスでは、ユーザからの疑問に正しく答えるのは難しいものです。
そういったシステムではFAQやヘルプやマニュアルが用意されているものですが、有効に利用されているものは少ないようです。
twitterで1000人ほどにアンケートをとってみたところ、パソコンユーザの半数はヘルプ機能を全く利用していませんでした。よく使うと回答した人は10%程度でした。
メルカリガイドのようなヘルプも充分役にたっているとはいえないかもしれません。 メルカリではコールセンターなどでのユーザサポート業務が重要だと思いますが、ユーザからの様々な質問や要求に即座に適切に回答するのは大変な仕事だろうと思われます。 ヘルプやマニュアルがうまく機能しない理由
適切な説明文書が存在する場合でも、それを検索できなければ役に立ちません。
検索が失敗する大きな理由のひとつとして、ユーザの語彙とヘルプの語彙が異なっているという問題があります。
たとえばMacのヘルプで「時間」と入力すると以下のようなヘルプが表示され、システムの時計を設定する方法は表示されません。
https://gyazo.com/209d8b0a9551e5e9b3f94a9cdbf87cd2.png
この場合、ヘルプ文書を作成した人は「時刻を設定する」のような文字列で検索されることを想定しているのに対し、ユーザは「時間をあわせたい」と思っており、語彙の不一致で検索に失敗していることになります。
また、ちょっと綴りが間違っているだけでもヘルプがみつからないこともあります。
たとえばMacのヘルプで「Eternet」と入力しても何も表示されません。
https://gyazo.com/e260e916fe965dea08c8c0c88c25f25a
もちろんこれは「Ethernet」のtypoですが、こういった些細な間違いも許さないのは不親切だといえるでしょう。
ヘルプやマニュアルに不具合がある場合、それをユーザが修正することはできませんから、こういう問題が多いとフラストレーションが溜まってしまい、ヘルプを使うよりも人に聞いたりググったりする方が良いと感じてしまう人は多いでしょう。
ヘルプの問題の解決
以下の手法で上のような問題は解決できると考えています。
1. あらゆる語彙で検索できるように想定質問文を用意する
たとえば(時間|時刻|時計)を(設定する|あわせる|セットする)のように正規表現を用意しておき、これを展開して検索対象とすることにより、「時間をあわせる」でも「時計をセットする」でもヘルプがヒットするようにします。
2. 曖昧検索を利用する
「eternet」と入力しても「ギガビットEthernetを使用する」のようなヘルプエントリがみつかるようにします。
3. 適切なヘルプエントリや想定質問文が存在しない場合は自分で追加する
Wikipediaのように、ユーザが自力でヘルプエントリを編集したり、それを見つけるための質問文を追加したりできるようにします。
たとえば「画面の上の方の変な記号は何なん?」といった質問からでも「メニューバーのアイコン」に関するヘルプエントリが見つかるようにします。ヘルプエントリに「画面の上の方の変な記号は何なん?」という質問文をユーザが追加することができれば、次回からはこういった質問にもすぐに回答できるようになります。
具体的な解決法
上記の1~3の問題に対し、以下のような解決手法を開発して実験を行なっています。
これらの組み合わせにより、ヘルプやマニュアルの作成や利用がとても簡単になりました。
うまく検索できなかった場合やエントリが存在しなかった場合は自分で情報を編集することができます。
https://scrapbox.io/SFCHelp/ https://gyazo.com/b3598b3425deba55c7845d98566be9ce ⇒ https://gyazo.com/d2e5c4db3d93c68351f9f091afdcc447 http://expandhelp.com/SFCHelp/index.html
共同研究の提案
以上のように、ある程度有用なシステムが構築できることは間違いないのですが、これを更に優れたものにすることができれば、御社にとってもユーザにとっても私の研究室にとっても大変有益なのではないかと思います。
たとえば以下のような研究開発が可能です。
コールセンターの運用経験にもとづいたシステム改良
曖昧検索アルゴリズムの改良
未発見の問題の発見及び解決
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