赤いお椀の中にはいつのまにか温かい味噌汁が
ところが娘は、さっきちゃぶ台の上においた赤いおわんを両手でかかえて、そっと新吉の前におくと、
「さあさあ、
おつゆ
も
さめないうち
に飲んでくださいよ」
といった。あっけにとられて、新吉は娘の顔を見た。このおわんは、さっきからずうっとここにおきっぱなしだったじゃないか。そういおうとして手をふれると、赤い
おわん
はあたたかい。まるで、
たったいま
おつゆを入れて運ばれてきたみたいにあたたかいのだ。おどろいて、新吉はおわんのふたをあけた。すると、ふうっと
ゆげ
があがって、おわんの中は
山うど
の
みそ汁
だった。
『ききょうの娘』