テクノロジーは貧困を救わない
外山健太郎(著) 松本裕(翻訳)
https://gyazo.com/d9ca622a3ffac09f7b6dab0dcafc4da0
第1部
(
どのパソコンも見捨てない—教育テクノロジーの矛盾する結果;
増幅の法則—テクノロジーの社会的影響についてのシンプルで強力な理論;
覆されたギーク神話—テクノロジーの迷信を打ち砕く;
シュリンクラップされた場当たり処置—介入パッケージの例としてのテクノロジー;
テクノロジー信仰正統派—現代の善行について蔓延するバイアス)
第2部
(
人を増幅させる—心、知性、意志の重要性;
新しい種類のアップグレード—テクノロジー開発の前に人間開発を;
願望の階層—内面的動機の進化;
「国民総英知」—社会的発展と集団の内面的成長;
変化を育てる—社会的大義の枠組みとしてのメンターシップ)
マイクロソフト・リサーチ・インドでの実践が生んだ、
新たな解は《人そのもののアップグレード》だった。
著者の研究は万能な解決策などないことを思い知らせてくれる。
人間の行動特性と文化的相違への深い理解に基づいたもの
でなくてはならないのだ。
――ビル・ゲイツ
いまだITスキルに大きな格差があるインド。学校では上位カーストの生徒がマウスとキーボードを占領している。 「これこそまさに、イノベーションにうってつけのチャンスだ。1台のパソコンに複数のマウスをつないだらどうだろう?…そしてすぐに〈マルチポイント〉と名付けた試作品と、専用の教育ソフトまで作ってしまった」。
しかしその結果は…
「ただでさえ生徒を勉強に集中させるのに苦労していた教師たちにとって、パソコンは支援どころか邪魔物以外のなんでもなかった。…テクノロジーは、すぐれた教師や優秀な学長の不在を補うことは決してできなかったのだ」。
こうして、技術オタクを自任する著者の、数々の試みは失敗する。その試行錯誤から見えてきたのは、人間開発の重要性だった。
人に焦点を当てた、ガーナのリベラルアーツ教育機関「アシェシ大学」、インド農民に動画教育をおこなう「デジタル・グリーン」、低カーストの人々のための全寮制学校「シャンティ・バヴァン」などを紹介しながら、社会を前進させるのは、テクノロジーではなく、人間の知恵であることを語りつくす。
著訳者略歴
外山健太郎
とやま・けんたろう
ミシガン大学情報学部W. K. ケロッグ准教授、マサチューセッツ工科大学「倫理と変革の価値観のためのダライ・ラマ・センター」フェロー。
2005年にマイクロソフト・リサーチ・インドを共同設立し、2009年まで副理事を務めた。同研究所では「新興市場のためのテクノロジー研究班」を立ち上げ、世界でも特に貧しい地域の人々がエレクトロニクス技術とどのように触れ合うかを研究して、テクノロジーが社会経済的発展を支援する新しい方法を開発した。同研究班は数々の賞を受賞。その成果には、MultiPoint, Text-Free User Interfaces, Digital Greenなどがある。