インフラ勉強会を題材に卒論を書きます。
〜加筆修正中の記事です〜
要旨を簡単に
卒論を書くのに、アンケート調査が必要です。アンケート調査はデータ収集したらすぐに公開する予定なので、もしインフラ勉強会に関して分析したいことがあれば事前に話がしたいです。
アンケート調査をするためには、調査の協力をする必要があります。どうやってアンケート依頼をするかの方法によりますが、もし特定の期間において勉強会のセッションの前のときにアンケート調査の依頼をするならば、登壇者に事前に承諾を得る必要があります。
目的
オンライン学習コミュニティの先行研究の蓄積が少ないのでその補完をすること。
「教育」というと学校教育におけるフォーマルな教育にスポットが当たりがちだが、教育学では成人教育の研究の蓄積があり、また学校外のインフォーマルな教育の研究も進んでいる。これらの研究に関しては、教育学を学んでいない専門外の人にはまだ馴染みが少ないので、教育学における研究の蓄積や教育の歴史においてオンライン学習コミュニティがどのよう位置づけになるかを、オンライン学習コミュニティである「インフラ勉強会」を題材に分析する。
その研究が誰のためになるの?
その1.教育学を学ぶ教員にオンラインにおける学習コミュニティの知見を伝えること。
その2.オンラインにおける学習コミュニティの実態と課題を分析して持続的な学習コミュニティを運営していくうえで必要なことが何かを明らかにすることで、今後の学習コミュニティ運営のヒントになる(学習コミュニティの参加者への還元)。
学習コミュニティの教育学における研究はいくつか先行研究があり、またオンライン・コミュニティの研究の蓄積も進んでいるが、オンラインにおける学習コミュニティの研究に関しては、(自分の知る限り)日本語で書籍化されている本は読んだことがないし、論文であってもそう多くはないと(現段階の自分の調査では)考えている。Twitterにおける緩やかな学習コミュニティなどは定量的な分析をするにも技術的な(そして研究上で配慮するべき個人情報などの観点でも)ハードルが若干高いように思うし、学部で使われれる教育学のテキストにはその分析した記述が載りにくい(数冊しか読んでないけど)。
教育学部の授業を受けていても、「生涯学習の時代だから学び続ける力を身に着けないといけない。」「リカレント教育に即した学校システムに変わっていくべきだし、学習者もそれを意識して人生設計をするべき。」というような話は聞いても、オンラインにおける学習コミュニティの話はあまり聞いたことがないので、教員を目指す人や現役の教員にもオンライン学習コミュニティの知見を伝えたいと思い、分析対象として「インフラ勉強会」が相応しいのではないかと考えました。
卒論の提出後には(そのままの提出論文を公開できるのかはわかりませんが)、加筆修正版を公開して、インフラ勉強会が存続していたならば、インフラ勉強会で自分の研究結果について発表する予定です。金銭的な対価は学生という身分上あまり払えないのですが、学習コミュニティへの還元としてはそういった形で行う予定です。
どうやって分析するの?
「インフラ勉強会」といってもその全体を分析することは難しい。自分は2018年1月~9月ごろまではほぼ毎日インフラ勉強会に参加していたけど、その後2018年10月~2019年1月まではほとんど参加していないので、今どういう運営になっているかも正確に反映できている訳ではない。仮に、今後は意識的に参加するようにしても、それでもその全てを把握するのは不可能だろう。
主観的に、どんなメディアを用いて、どんな活動をしていて、どんなメリットとデメリットがあって、といった仮説を立てることは容易いが、それを客観的に証明しようとするのは意外に面倒だ。
今回は卒論のための分析なので、修論や博論で求められるような準備に手間のかかるような分析手法を用いることはしないが、論文という形式においては客観性が求められるので、グーグルフォームを使ったアンケート調査をすることでそれをクリアしようと考えている。
アンケート調査において、課題となることは、「誰を対象にどんな質問をすれば価値のあるデータが取れるのか」を考えることである。もし次のインフラ勉強会の1年オフ会のようなものが2019年6月にあるとするならば、そこへ来る人のみに対象でアンケートをすればいいと仮定してみよう。ある程度の人数の母集団から回答が得られて、客観性が増すかもしれない。でも一方で、そのアンケート調査で得られる母集団は、「その開催地に近い人のほうが参加しやすいという意味で偏った居住地の人から回答を得ているのではないか」と「意欲の高い人がオフ会にも参加しているのではないか」といった偏りを見出すことができる。またアンケートの項目の多さも、ある程度の人数の人に対して回答をお願いするには少なくならざるをえなくなる(アンケートの項目の多さと回答数の多さのトレードオフ)。
インフラ勉強会と一言でいっても、各自が想像するインフラ勉強会の印象というのも多様であろう。僕自身にとって印象的だった初期のインフラ勉強会の禊とか、再演とか、SRE本輪読会とか、雑談部屋で聞いた話とかを題材にしたくても、音声データが残っているわけでもなく(アーカイブの欠損)現段階では分析不能であり、主観的な印象論にしかならない。
その人がインフラ勉強会のどのセッションに参加して、その印象を持つようになったのかを分析対象とするのは難しく、インフラ勉強会のどこを切り取るかを考えずに印象論を切り貼りするだけでは客観的な議論とはいえない。そこで、卒論でインフラ勉強会の分析を扱うとするならば、特定のセッションに限定して分析を行うことが一番お手軽で、確実な方法ではないかと考えた。
ただ自分にとって難しいと考えていることは、SRE本や問題地図本輪読会に参加していたときに感じたことであるが、実務経験がないので、登壇しにくく、自分で勉強会を開いてその参加者にアンケートをお願いするということが難しい。自分が分析対象としたいインフラ勉強会のセッションを自分自身で開いてその対価としてアンケートにも答えてもらうというのは、(その客観性にかける分析手法はどうなんだ?という批判からは免れ得ないが)少なくともアンケートに答えてもらうための方法としては理にかなっているように思える。しかし、自分が登壇できるような勉強会というと自分が開こうとして凍結中の[3分間ネットワーク輪読会 を開き直すということぐらいしかできないと考えている。それも数回連続で続けるだけのことが可能なのかという観点でいくと、一度頓挫していることも勘案して、難しいかもしれないと不安に思うところがある。
分析の日程スケジュールは?
2020年の1月あたりが卒論の提出期限だとして2019年10月までに収集したデータをもとに卒論を書く予定で、まだ日程には余裕がある。しかし、アンケート調査の項目はまだ十分に練られておらず、アンケート調査という分析手法の性質上、何回も行うことは望ましくないと考えている。そうなると、分析期間を決めて、またアンケートの内容も固定した上で集中的にデータ収集をする期間を設けることが望ましいと考えているが、それをセッティングすることは僕一人ではとてもじゃないけれど難しいように思える。
盛り上がっていた2018年夏までのインフラ勉強会のように途切れずにセッションが埋まるような状況でもないし、意図的に分析したい種類のセッションを短期間に入れて、その期間中に参加してもらった人にアンケート調査に答えてもらうという状況のセッティングには、自分のインフラ勉強会の参加率を上げるだけでなくて、前もってそのことを話して協力してもらえそうな人に声をかけておく必要があると自分は考えた。なかなかそういった機会を作るのは難しいが(雑談部屋に積極的に参加したり登壇したりしてコミュニティに参画していく姿勢を見せないといけないから)、インフラ勉強会の一周年オフ会がそういった話をするのに役立つかもしれないと思ったので、せっかく行くならそういった話ができたらいいなと考えています(ちなみに去年の半年オフも行ったのですが、あんまり喋ることができなかったので今回も難しそうだと思ってます)。
その他
例えばインフラ勉強会の読書会はDiscordと画面共有で行っているけれども、教育オンライン読書会では顔出しありでZoomを使って、グループごとに別れてオンライン読書会を行っているというようなメディアの特徴に目を向けた対比の分析がしたくても、後者が潰れかかっていて、なんか分析するところまで持っていけそうにないなと思ったり、「客観的な」分析をしようと思うと意外と面倒な課題が多くて辟易します。主観的な分析ならば、そのあたりを補完できるので、論文には書けなかったようなことも最終的には全部ネットに書いてしまえばいいかなと思ってます(そのあたりの分析は後任者に期待しましょう)。
アンケート調査で明らかにしたいことの例
オンライン勉強会は居住地の制限を受けにくいって本当?
手持ちのデバイスによって参加しやすさ、登壇のしやすさは影響を受ける?
携帯電話をもってる人ともってない人、PCをもってる人ともってない人
学歴に関係なく参加している?
アンケート調査で難しいこと
インフラ勉強会のためのアンケート調査と教育学論文のためのアンケート調査は質が違う。
例えば、インフラ勉強会のためのアンケート調査ならば、どんなセッションを開くことでインフラ勉強会が盛り上がるかといったことを明らかにするための質問を考えるべき。
教育学論文のためのアンケート調査では、より一般的にオンライン勉強会を開いていくためにインフラ勉強会からヒントになることを見つけるための質問を考えるべき。
「インフラ」という制約を取っ払って、インフラ勉強会というコミュニティから学べることを「客観的」に記述することを目指す。
インフラエンジニアにとっての学習コミュニティから学べることを、それ以外の学習コミュニティに活かすために
情報リテラシーの程度や所有する情報機器の有無、どんなコミュニケーション指向をもっているか、これまでどのように学んできたのか、学んできたことを共有するためのメディアとしてどんなものがありうるか、共有するためのコストをどれくらい負担できるか、などといったことを明らかにすることが必要。
教育学論文のためのアンケート調査がインフラ勉強会のためになるとは限らないという点において、わざわざ時間をとってアンケート調査をしたのに、欲しいデータが得られなくて失望される方も出てくると思うので、場合によっては2回に分けて調査をするべきかもしれない。
当初、卒論のテーマ設定で提出した文章はこんな感じでした。
知識の共創をICT活用で促進する方法について、教育学、メディア論、ファシリテーション、コミュニケーション、創造性研究、問題解決などの観点で整理する。生涯学習において、学び直しの機会をどのように提供していくべきという課題があるが、その解決の方法の一つとしてオンライン勉強会というものがある。このオンライン勉強では、設計によって、参加者を不特定多数から顔見知りの少数まで変えることが可能だが、人数の多さや構成員の属性によって勉強会の深まり方や参加者同士の交流のあり方も変わっていく。テキストチャットやボイスチャット、画面共有、Scrapboxなどのメディアの複合でオンラインのコミュニケーションのあり方も変わってくるが、どのような権力関係や動機付けが成立するのかを考察し、オンラインでの知識創発の支援を目的とした分析を行う。 でも実際に分析してみようとすると、課題があまりに多く、目的に合致した研究を行うことが困難だと思うようになりました。あくまで卒論レベルの分析しか求められていないし、先行研究も少ないので、「実態と課題」を明確化することができるだけでも目的として十分なのではないかと指導教官とSkypeで話したりしていました(僕は通信教育の大学なのであまり指導教官に相談する機会がないのです)。
実は、卒論の計画書の再提出を食らって、まだ再提出原稿が書けていないので今月中に計画書の書き直しをしないといけないなと焦っています。
オンライン勉強会の課題としては運営の負担であったり、学習意欲をどう維持するかとか、学習コミュニティ忌避(自分なんかはまさにそうなんですが、参加したくても進歩が出なくなると参加しにくくなる)とか、つながり疲れとか、学習評価の問題とかを論文に書けたらいいなとは思うのですが、そういったことの言質のとり方がアンケートという手法で可能なのか僕としては不十分だろうなと思っていて、できたらそういったテーマで話し合う機会が作れたらいいなとおもうのですが、それって「介入」にあたるので、観察者の主観に引っ張られそうという懸念があります。
教育学の論文って具体的にどんなのを目指しているのかというと理想としては、日本教育工学会論文誌(色々とネットで無料で読めるので興味のある人は読んでみてください)に掲載されている
成人の趣味における興味の深まりと学習環境の関係-アマチュア・オーケストラ団員への回顧的インタビュー調査から-
というような論文で議論されているようなものが書けたらいいなと思い、m-GTAとか会話分析を勉強したりもしたのですが、実際にやってみようとなると手間暇がかかりすぎて辛いので、今回はもっとかんたんな分析をしたいと考えています。
なので、インフラ勉強会の参加者にとって当たり前の結果しかでないかもしれませんが、当たり前の結果がでないならむしろ問題で、「当たり前のこと」を客観的に記述して、もっと知ってもらうことが目的なので、そのあたりは承知ください。
上記の論文だとそこから一歩踏み出して、分析のための概念の生成まで踏み込んでいるのですが、そこまでの議論を論文にするだけの余力がないので、主観的でもいいのならば、それに近いような話はネット向けで別に書いて公開する予定です(ただしこれも、分析者の解釈を分析対象に周知させることがその議論の客観性を著しく損なうので、卒論が終わってからしか公開できない)。