パンコムギの起原
「コムギ」は生物学的には単一の植物種ではなく、生物学的に 異なる「種」に分類される植物からなるグループです。中でも、 現在最も広く栽培・利用されるパンコムギ(Triticum aestivum L. subspecies aestivum)は、ユーラシア各地で古代文明の成立と発展を支えたコムギとして知られています。パンコムギは、別々の種である2つのコムギ — 二粒系コムギ(Triticum turgidum L.)とタルホコムギ(Aegilops tauschii Coss.)— が自然交雑して生じた雑種の子孫であると考えらています。二粒系コムギには、荒地などに自生する「野生型」と野生型から栽培化され作物となった「栽培型」がありますが、パンコムギの祖先になったのは栽培型のものです。タルホコムギは野生種で、作物として栽培されません。また、二粒系コムギとタルホコムギの$ F_1雑種は非還元配偶子を作って生殖し、ゲノムが倍化した子孫を残します。「パンコムギの起原」を明らかにすることをめざして、私たちは次のような問いに取り組んでいます。
二粒系コムギとタルホコムギはどのような集団構造をもつのか?
二粒系コムギとタルホコムギの交雑はどのようにして生じたのか?
二粒系コムギとタルホコムギの$ F_1雑種が非還元配偶子を作る遺伝機構はどのようなものか?
二粒系コムギとタルホコムギの$ F_1雑種の子孫が遺伝的に安定するのはどのようなメカニズムによるのか?
パンコムギDゲノムとタルホコムギ・ゲノムは進化的にどのように繋がるのか?
パンコムギの起原地はどこか?
2022-05-19