コムギ近縁野生種の適応メカニズム
コムギ近縁野生種は、イネ科(Poaceae)コムギ連(Triticeae)のTriticum属とAegilops属に属し、地中海地域から中央アジア地域にかけて分布します。これらの植物は、自生地では、いわゆる「雑草」ですが、品種改良に役立つ遺伝資源として広く採集され、「系統」として保存されています。ひとつのコムギ近縁野生種(例えば、タルホコムギ)に注目して圃場で比較栽培すると、採集場所が異なる「系統」のあいだで様々な性質の違い(すなわち、種内変異)が観察されます。そして、出穂・開花が早い遅いなど、正常に生長して子孫を残すことに関係する性質にみられる種内変異は、自生地環境への「適応」の様式の違いを反映すると考えられます。この現象に着目して、私たちは、コムギ近縁野生種の「適応」に関する次のような問いに取り組んでいます。
コムギ近縁野生種の種内変異はどのような地理的・遺伝的構造をもつか?
種内変異は自生地の環境因子(気温、降水量など)とどのように関連するか?
コムギ近縁野生種の「適応」の遺伝機構はどのようなものか?
コムギ近縁野生種の「適応」はどのように進化してきたのか?
2022-05-19