宿題⇄授業の連動〜両方にけテぶれを導入すると…〜
勉強が苦手な子が救われる
「宿題」でも「授業」でも、自分で内容や方法を選択して学ぶ環境が用意できれば「宿題でわからなかったことは、授業で聞く+授業でわからなかったことは、宿題で補う」というサイクルがすぐに回り始めます。これは授業でみんなのペースに追いつけない子にとっては非常に助かるはずです。
今までは、授業中に「あまりしっくりこないなぁ」と思っていても、宿題ではいつもどおりの決まりきった作業を要求され、次の日学校に行けば問答無用で次の内容に進んでしまっていました。個人的な疑問や違和感にしっかり向かい合うタイミングがまったくないのです。そういうことが積み重なってしまえば、学習がわからなくなってしまうのは当然です。宿題と授業で「けテぶれ」を回すことができれば、そういうことが一切なくなります。授業でわからなかったことは、宿題でじっくり取り組み、それでもわからなければ、次の日の授業で友達や先生に聴けばいいのです。「先生、この問題、家でもやってみていいですか?」こんな当たり前の意識が子どもたちの中に芽生えていきます。シンプルで当たり前のサイクルが確実に実現される。この状況は勉強の苦手な子を救うことが容易にわかりますよね。
やる気がでる。維持する。
宿題におけるけテぶれを実践する上での悩みで多いのが「そもそも学ぶ気がない」という子に対するアプローチが難しい、というものです。やる気はあるのだけど、みんなのペースに追いつけない、という子は前述の宿題と授業のけテぶれサイクルの中でかなり救われましたが、そもそもやる気が無い子は、宿題にけテぶれを導入したところで自ら学ぶようになる姿はあまり想像できませんよね。家で一人で取り組むというのは、実は結構ハードルの高いことだったりします。
しかし、それが授業となると様子が変わります。同じ空間に、同じ年齢の仲間が、一生懸命学習に取り組んでいるのです。そういう状況が、やる気のない子に及ぼす影響は大きい。「みんなやってるからやる」は人間の行動原理の中でもかなり強いものです。そしてモチベーションは行動から生み出されます。つまり「やる気がある→やる」でなく、「やる→やる気が出る」ということが起こるのです。宿題になかなか取り組む気がわかない子も、授業でみんなと勉強してみれば、少し宿題でも頑張ってこようかな…という気持ちになるのです。実際にこういう例は本当に多く、目にしてきました。車のエンジンを指導させるときもまずは外部の回転力をもらうことが必要ですよね。学びのエンジンも同じように、まずは外側からの回転力をもらうことで、指導するということがよく起こるのです。
この構造は、「モチベーションの維持」にも当然効果的です。家で一人でやるだけの「けテぶれ✕宿題」ではどうしてもモチベーションの維持が難しい。しかし授業と宿題が連動し、共に頑張る仲間がいることで、モチベーションが維持されやすくなるのです。ある子がやる気がでない時の対処法として、「友達が頑張っていた姿を想像する」という方法を教えてくれたことがあります。頑張る仲間の存在は自分の背中を強く、温かく、支えてくれるのですね。
成長のキャップが外れる
これまでは「学力の低い子どもたち」「学習意欲の低い子どもたち」にフォーカスを当て、そういう子達にけテぶれがどう作用するのか、と見てきましたが、けテぶれの効果はそれだけではありません。
それらに加え、最も大きな効果の一つとして「上位層の成長のキャップを外せる」ということがあります。けテぶれは何をどれだけ学んでもOK。成長にキャップがされることはありません。自分で学ぶ環境において、習っているか習っていないかなんて問題にならないからです。この環境は「学力の高い子」「学習意欲の高い子」に火をつけます。一日数10ページも学習をしてきたり、どんどん先の単元に学習を進めていったりする姿が見られるようになります。その上で「けテぶれ✕授業」の環境を実現させれば、困っている子に今の学習内容を説明するために自分の理解度を深めようとしたり、学習プリントを自作したり、タブレットの動画撮影機能を使って、単元の解説動画を作ったりと、たくさんの試みをするようになります。そして、こういう子達の勉強に向かう熱が、中間層に伝染し、苦手な子たちを温かく支えようという雰囲気を生み始めます。上位層の成長のキャップをとることは、その子達の成長だけでなく、教室全体の学びの熱量を挙げることにつながるのです
今の学校教育では、勉強が苦手な子や、やる気が無い子に対しては支援が講じられやすいですが、その一方で学校の勉強が簡単すぎて力を持て余している子は、よくできているから、とほったらかしにされている状況があります。その結果本来もっともっと「学ぶこと」を楽しめるはずの子どもたちが、その成長にキャップをされ、伸び悩んでいるのです。これは、イルカの子供を25mプールに入れて、いつまでも息継ぎの練習をさせているようなもの。これほどもったいないことはありません。けテぶれを指導する際には、こういうどこまでも伸びる力がある上位層もしっかり視野に捉えておきたいところです。