株式会社シンク・ネイチャー 琉球大学理学部 久保田研究室「日本生態学会の新賞」を読んで
2023-03-20 facebookに投稿
日本生態学会が生物多様性に関する記載研究を推進する研究者を表彰する新たな賞の創設を決定。
「新賞提案の背景」は声に出して読みたい日本語です。「生態学の研究者ならば、記載研究の重要性に疑問をもつ人はいないでしょう。」…ぼくもそうあってほしいです。
以下、抜粋します。
「私たちの研究チームでは10年以上前から、全球と日本の自然史情報を稼働化し、生物多様性のパターンを可視化するプロジェクトを行ってきました。その過程で、私たちが認識したことは、国際的に見た場合の日本の自然史研究の歴史と層の厚さでした。日本には、地域の自然史に関わる研究者(市民を含む)が存在し、膨大な数の生物情報が丹念に記録されてきました。(中略)一方で、私たちのプロジェクトの過程において、記載的な研究が劣化していく傾向も確認できました。私は、日本における記載研究の活動史の素晴らしさに感動すると同時に、その将来を悲観しました。生態学の研究者ならば、記載研究の重要性に疑問をもつ人はいないでしょう。けれども、近年の基礎研究を取り巻く情勢からすると、記載研究が十分に評価されにくくなっており、研究予算も得にくくなっていることも事実です。現状のままだと、生態学の裾野は急速に脆弱になると予想されます。私たち研究者も、基礎研究の重要性を標榜しますが、「選択と集中の軛」のため、基礎研究の持続可能性を必ずしも担保できない現状もあります。私は、このようなジレンマ、閉塞的な状況を少しでも改善できればと考えるに至りました。」