追記的週報 【2026年第21週/第22週】
【0690】 【0689】 
【0688】 『コレラの感染様式について』 ジョン・スノウ(John Snow)(岩波文庫2022)¹ という本に改めて興味が湧く。250頁。疫学という学問の黎明期の話。今なら読めそうだ。スノウは、パスツールやコッホより前の人。
¹ https://bit.ly/3unpwU5
【0687】 [Part I-Ch01-004]すべての細胞はタンパク質を触媒として用いる
(All Cells Use Proteins as Catalysis)
➣ここは、〈触媒〉 という語だよなあやはり。触媒は 「介在する実体」 と考えられる。介在の程度が変わることで反応の速度が速まったり遅くなったりすることになる。考えてみればすごい仕組みだ。しかも触媒である分子のほとんどが 〈タンパク質〉 という、それほど種類の多くない構成要素(=アミノ酸)の組み合わせから構築されている分子であるという、その不思議さ、精妙さ。
#『細胞の分子生物学』の目次を読む。 (PART I:第1章 細胞,ゲノム,生物の多様性▶地球上の生物が共有する特徴)
【0686】 『生命の仕組み――新しい生物学のための取扱説明書(How Life Works: A User's Guide to the New Biology)』 フィリップ・ボール(Philip Ball)(シカゴ大学出版局2023)は未だ訳本が出ていないもよう。552頁。➣『みすず 読書アンケート 2025』² で紹介されている本。どこかの出版社で翻訳が進行中とみるけどどうだろう。
¹ https://bit.ly/4dNNdNs
² https://bit.ly/4rKNvc4
【0685】 [Part I-Ch01-003]すべての細胞はDNAの一部を転写してRNAを作る
(All Cells Transcribe Portions of Their DNA into RNA Molecules)
➣〈一部を転写する〉 というところがいいね。つまり必要時に必要な分を転写するということ。〈転写〉 とは、情報を別の形に写すことと解釈できる。細胞の場合、写される先は 〈RNA〉 という、DNAとは異なる核酸分子となる(DNAも核酸分子)。情報の流れからみると、RNAはアダプター的な役割を果たすということになる――仲介役というか。この写す段階を 〈転写〉 と命名した経緯を知りたかったりする。
#『細胞の分子生物学』の目次を読む。 (PART I:第1章 細胞,ゲノム,生物の多様性▶地球上の生物が共有する特徴)
【0684】[Part I-Ch01-002]すべての細胞は,鋳型を用いた重合反応で遺伝情報を複製する
(All Cells Replicate Their Hereditary Information by Templated Polymerization)
➣〈鋳型〉 という仕組みの採用にグッとくる。鋳型だから、一方が決まれば自動的に他方も決まるということになる。何たる省エネルギー的な仕組み。その一方で、情報の複製に 〈重合反応〉 が必要となるわけだから、そこではエネルギーが必要になるということになる。
#『細胞の分子生物学』の目次を読む。 (PART I:第1章 細胞,ゲノム,生物の多様性▶地球上の生物が共有する特徴)
【0683】[Part I-Ch01-001]すべての細胞は遺伝情報を二本鎖 DNA 分子の形で保持している
(All Cells Store Their Hereditary Information in the Form of Double-Strand DNA Molecules)
➣〈すべての〉 という形容詞にグッとくる。生きとし生けるものすべては細胞から作られているわけで、そのなかに 〈情報〉 がキープされていて、適宜読み出されて 「モノ」 が作られるしかけ、というのは、よくよく考えてみると不思議だし、すごいことだ。しかもその情報は 「二本鎖の分子」 として具現化されているという。一本鎖でも三本鎖でもなく。
#『細胞の分子生物学』の目次を読む。 (PART I:第1章 「細胞,ゲノム,生物の多様性」▶地球上の生物が共有する特徴)
【0682】 言葉の意味に立ち止まる――「消費」 ってなんだ? 論文タイトル 「中部アフリカ全域における野生動物消費の増加」¹ に出会う。ネイチャー 2026-05-28号² に掲載されている。「消費」 という言葉を目にしてまず思い浮かぶのは 「食べること」 だよなあ。誰が野生動物を食べるのか?――普通に考えれば、まあ、近くにいるアフリカ人たち?――と考えてしまうがどうか? 論文の要旨を眺めてみると、やっぱりそうだ。「野生動物の肉(野生肉)の消費」 という意味合いで、「消費」 という言葉は使われているもよう。➣次に頭に浮かぶのは、じゃあ、具体的にどのような動物種が主に狩られているわけ? その狩り方はどんなもの? といった疑問。このあたりは要旨には書かれていない。論文本文を読むしかない。読んでやろうじゃないか。 #素人が科学誌をよむ
¹ https://go.nature.com/3PCnSwF
² https://go.nature.com/4veeX3l
【0681】 ダーウィンがビーグル号航海中につけていた(とおぼしき)手帳を博物館の展示で見かけたことがある(たしかレプリカ)。手のひらにおさまるくらいの大きさだったか。開かれていたページには、ゆったりとした行間で、(もちろん)英文で何やら書きつけてあって、そのひとつひとつの文がストライクアウトされていた――つまり、取り消し線が引かれていた。➣これが何を意味するかといえば、ダーウィンは船上あるいは上陸地を歩いているときに思いついたことどもを、この手帳に書きつけていたが、おそらくそのメモ書きを、後に自分の船室に戻ったときに、別のノートに適宜書き写していた/まとめなおしていたということ(転記が終わった部分はストライクアウトする)。➣そんなことを、手元にある、『方法としてのフィールドノート 現地取材から物語作成まで』(新曜社1998:544頁)¹ や、『他人の手帳は 「密」 の味 禁断の読書論』(小学館新書2025:288)² を読み進めつつ考えた。
¹ https://bit.ly/4wpXnuH
² https://sgk.me/4tj2c6k
【0680】 「人間の協力は断続的に減少する」¹ というのは、ネイチャー 2026-05-28号² に掲載されている論文のタイトル。つづめて読めば、「協力関係は(そのままでは)減っていく」 という、何やら当たり前のことを言っているような気がする。そりゃあ、「手入れ」 しなければ、人どうしが自発的に協力関係をキープできないだろう。➣いやしかし、論文になったということは、何かそこに新知見があるはず。例えば、①協力減少のメカニズムがはっきりしたとか、②協力減少が顕著な状況の条件がはっきりした、とか? そう考えると大いに興味が湧いてくる。ただ乗り、とか、モチベーション、とかの問題圏にもつながるような気がする。➣論文は専門家向けのものであるけれど、ありがたいことに、この論文には解説記事³ が付されている。こちらだけでも読む価値はあるような気がする。実験系も気になるし。 #素人が科学誌をよむ
¹ https://go.nature.com/3RSrFqc
² https://go.nature.com/4veeX3l
³ https://go.nature.com/4fc8RMl (PDF)
【0671】 ◉◉◉
◉『サイエンティフィック・アメリカン』 の定期購読を1年延長する。[Print & Digital]コースで。冊子(紙媒体)を入手することは外せない。
◉『人生後半、そろそろ仏教にふれよう』 古舘伊知郎+佐々木閑(PHP新書2024)² を読みはじめる。200頁。なかなかいいです。
◉『T・S・スピヴェット君 傑作集』(早川書房2010)¹ を図書館から借りてくる。392頁。原書の造本・装丁はいかなるものだったのか知りたくなる。
◉ラッパーたちはなぜ罵りあうのか? 文化として埋め込まれているのだろうか? ならばなぜそのようなカルチャー?
◉志のベクトルが同じ(というか近い)他者と出会えること/の存在を知ることの嬉しさというものがある。
◉振り返ってみると、人生の途上で他者から「心ない言葉」をいくつも投げかけられてきたなあ、そして自分は素直すぎたなと反省する昨今。 #zap
¹ https://bit.ly/4316hBs
² https://bit.ly/3L56LAZ
【0679】 遺伝学における 「文法」 とは?――ネイチャー2026-05-28号¹ に掲載されている論文にこんなのがある:「ヒトの発生における調節の文法をマルチオミクスと深層学習によって解析する」²。この 〈文法〉 という語に素人は立ちすくんでしまう。ハテ、遺伝学の論文なんだけど、そこに 〈文法〉 というような、言語学で使われるような言葉が出てくるとはどういうことなのだろう?――ちなみに原文の英語では、「syntax(シンタックス)」 という語が使われている。➣想像してみるに、「文法」 というくらいだから、「繰り返し使われるルール」 のようなことを意味しているのではないか? 考えてみれば、遺伝学ではDNAを対象とするわけで、DNAは4種類の 「塩基」 という 「文字(!)」 で書かれた情報、という解釈もできる。DNAが発現していく過程では、DNAに 「書き込まれた」 情報が、「転写(つまりコピー)」 され、「翻訳され(まさに言語学的!)」ていってタンパク質分子が作られていくことになる。➣こういう比喩(メタファー)の使われ方が、素人が専門分野を理解しようとするときに落とし穴になるんだよなあ。このあたり、分子生物学分野の基礎的な教科書として名高い、『細胞の分子生物学』³ には何か、業界における比喩の使われ方に関する説明があったりするのだろうかと期待する。図書館でちょっと手にしてみたい。  #素人が科学誌をよむ
¹ https://go.nature.com/4veeX3l
² https://go.nature.com/4uF1SAl
³ https://bit.ly/48mxZfO
【0678】 「適応」、つまり、生き物が周囲の環境に合わせて自らを変えること。適応という現象には、スピードの緩急があるらしい。そんなことを考えたきっかけは、ネイチャー 2026-05-28号¹ に掲載された、微生物学分野の論文のタイトル 「転位性遺伝因子がEnterococcus faeciumの急速な適応を駆動している」²。冒頭2つの固有名詞はとりあえず保留で、個人的に注目したのが、〈急速な適応〉 という部分。➣そうか、生物種によっては、そしておそらくその生物種の置かれた状況においては、適応のスピードが速くなることもあるんだろうなという気づき。➣で、ならば、適応速度を速める要因はなんだ? という問いが頭に浮かぶ。それが、さきほど保留した語の 〈転位性遺伝因子〉 というDNA断片――これが、ある病原菌のゲノム上をぴょこぴょこ動き回ることで、着地される部分に元からあった細菌遺伝子の発現が変化する→適応度合いが変わるというロジック。➣〈急速な適応〉 というほどなのだから、細胞内でそのDNA断片がゲノム上をいかに頻繁に 「ジャンプ&着地」 しているかということが想像できる。 #素人が科学誌をよむ
¹ https://go.nature.com/4veeX3l
² https://go.nature.com/3RPw0dK
【0677】 新しい科学機器、ここでは新型の望遠鏡、それも宇宙望遠鏡がフル稼働し始めたことで、これまで知られていなかった天体の存在が明らかになってくるという 〈科学の進歩〉 のあり方がある。「小さな赤い点」(little red dot)というのもその1つなのかと想像する。➣今日、目次がオープンになった、ネイチャー 2026-05-28号¹ に掲載されている論文の1つに、「高赤方偏移に位置する「小さな赤い点」におけるブラックホール質量の直接測定」² というものがある。「小さな赤い点」 とカッコ書きなので、専門家サークルのあいだでも、新しめの概念なのだということ、つまり専門用語として固まっていない、仮の命名であることがうかがえるがどうか。➣「小さな赤い点」 は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって新たに発見されつつある天体を指すもよう。そういえば、最近の 『サイエンティフィック・アメリカン』 でも記事があったぞと思い出す。同誌はネイチャーとは違って一般読者向けの科学誌だから、新たな発見の解説媒体として、とっつきやすい文章で書かれているはず。2026-05号² に記事タイトルもそのまま 「Little Red Dots」 という記事³ が掲載されている(p.036-043)。ちょっとこの記事は、Google 翻訳を使ってナナメ読みしておこう。 #素人が科学誌をよむ
¹ https://go.nature.com/4veeX3l
² https://bit.ly/4s0fIf8
³ https://bit.ly/43ArhiG
【0676】 ネイチャー 2026-05-28号¹ の目次が公開された。➣表紙のコピーは 「STORM WARNING」――気象警報の定型句として、「暴風警報」 の意味らしいのだけれど、今週号の論文では、「暴風」ではなく、「雹嵐〔ひょうあらし〕」を指すもよう。気候変動に伴う雹嵐被害のシミュレーション結果の報告。だから、「警報」 のスパンは長い――21世紀後半ころの推定だったりする。
¹ https://go.nature.com/4veeX3l
【0675】 ヒトが他者を模倣する(真似る)ことで喜びを感じる生き物であるという概念は、いろんな学問分野で見かける:モデリング(心理学)、模倣〔イミテーション〕(発達心理学)、ミラーニューロン(神経心理学)、模倣的欲望(社会学)、同一化(精神分析)などなど。➣この概念をひっくり返せば、自分の近くにいる他者が、自分の真似を 「しない」 ように見えると認識することで、その他者に腹立ちを感じる、ということにつながるような気がする。
【0674】 『鬱病日記』 杉田俊介(晶文社2025)¹ を興味深く読む。256頁。➣よき本。著者に感謝。この本がシーズン1を描いたものだとして、後に刊行されるであろう、〈シーズン2とシーズン0〉 をまとめて記述・考察する本が期待される。
¹ https://bit.ly/4ab8bnI
【0673】 『アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で ”正しい判断” をする方法』 アトゥール・ガワンデ(晋遊舎2011)¹ を再読する。とても重要なことがいくつも述べられているような気がする。原書タイトル、『The Checklist Manifesto: How to Get Things Right』 がカッコイイ。著者の公式サイト² に詳細な説明がある。➣言及されている映画 『ハドソン川の奇跡』(クリント・イーストウッド=監督)を観たくなる。
¹ https://bit.ly/3qHzZqj
² https://bit.ly/4dtOPvD
【0672】 なじみの書店に勤める知り合いの書店員の方は、氏の古くからの知り合いである小説家を 「君づけ」 で呼んでいる。それを聞くたびにこちらはグッとくる。(おいおい、芥川賞作家を君づけだよ)
【0670】 サイエンティフィック・アメリカン 2026-06号¹ の目次が公開された。特集は、量子コンピューティング。うつ病の評価尺度と知能指数の関係に関する短報が気になる。今月号はジャスト100ページ。これくらいの薄さが月刊科学誌としてはちょうどいい。
¹ https://bit.ly/4dVAuYM
▶▶追記的週報 【2026年第19週/第20週】 https://bit.ly/4tdqjn1