追記的週報 【2026年第13週/第14週】
【0694】 科学雑誌(一般向け)の定期購読に今ひとつ踏み込めない理由のひとつに、批評的な視座が欠けている(ように見える)ところがあることに気づく。科学・技術業界や研究者・専門家への忖度・おもねりを可能なかぎり抑えた雑誌があればうれしい。改めて探す。読み込む。見つける。
【0693】 東アジア人への薬の効きかた――昨今のネイチャー誌に掲載される論文は中国発が多い。毎週の論文の半数近くが同国人の著者によるものではないか。2026-04-02号¹ の目次をつらつら眺めていると、論文のタイトル中にさえ 「中国人の~」 という文言が含まれる関連論文が2本掲載されている――関連論文というのは研究テーマがかぶる論文のこと。そういえばSTAP細胞の論文も確か、関連論文として2本同時に掲載されたのではなかったか。➣論文のタイトルを挙げておくと、「中国人の2型糖尿病成人におけるマズドゥチドとプラセボの比較」² と 「中国人の2型糖尿病成人を対象としたマズドゥチドとデュラグルチドの比較」³ というもの。カタカナが薬剤名と推測できる。➣なぜに 「中国人の糖尿病患者」 限定なのだろうか? という問いが浮かぶ。論文本文の冒頭あたりに何か書かれているかと思ったら……オープン論文ではないのかよ!――なので推定してみるに、この薬剤がそもそも中国企業か同国の研究所によって開発された? あたりではなかろうか。➣それでも、患者を対象としている臨床試験ということは 「第3相」 の臨床試験ということになる。臨床試験は「第1相」→「第2相」→「第3相」と進んでいく。最終相である第3相はだから、臨床への移行に一番近い試験ということになる。欧米人ではなく中国人の被験者が対象なら、同じ東アジア人である日本人は遺伝的構成が近いだろうから、試験の結論の見立てをまあそのままスライドできるのではないかなどと考えてみたりする。 #素人が科学誌をよむ 【0692】 〈総合診療医〉 のライバルとなるか?――まれな出来事の発生を突き止めるためには?➣人工知能(AI)システムは、大規模な過去のデータがあるからこそ、そのデータベースから有効な情報を引き出してこれる。したがって、「まれな出来事」 となれば、過去の発生率が低いわけだから、そもそも関連情報も少ないということになる。なので、その出来事の正体を突き止めるのに時間がかかる。AIに問うても、有効な出力は返ってこない可能性が高いことになる。➣「まれな出来事」 として 「まれな病気」 を考えてみる。医師たちがまれにしか遭遇しないわけだから、症例数がそもそも少ないという前提がある。結果、診断の確定まで時間がかかることになる――診断が確定しなければ治療も始められない。患者にとっては深刻な状況となる。それでも、まれな疾患すなわち 「希少疾患」 を少しでも速く診断したいという願いは続いていて、そのジレンマをAIシステムの構築によって突破できると主張する論文がネイチャー 2026-03-19号² に掲載されている。タイトルは、「追跡可能な推論を備えた希少疾患診断用エージェントシステム」¹。論文著者の主張によれば、3000件弱の疾患について高性能の結果を得たもよう。どんな仕組みのシステムなのか気になる。〈ドクターG〉 のライバルになることは確実。解説記事³ がある。 #素人が科学誌をよむ 【0691】 NHKニュース 「日本・インドネシア首脳会談 エネルギー安全保障分野 連携確認」¹ に遭遇する。リード文に登場する、「自由で開かれたインド太平洋の実現」 という、よく耳にするフレーズに立ち止まる。形容詞が連ねられると、いきなりうさんくささが立ちのぼる印象を受ける。ほかにもいくらでもある:「持続可能で包摂的な社会」、「公正で透明性の高い政治」、「力強く持続的な成長」、「多様で寛容な社会」、「開かれた透明なガバナンス」 などなど。上滑り感・空疎感が半端ない――こういうフレーズは誰が作っているのだろう。
【0690】 自閉症をどうやって研究するか?――論文タイトル 「自閉症のヒト幹細胞モデルにおける発生の収斂と分岐」¹ に遭遇する。ネイチャー 2026-03-19号² に掲載されている。➣なにはともあれ、冒頭の 〈自閉症のヒト幹細胞モデル〉 というフレーズに目が止まる――細胞でモデル化するのか!。 ふつう、ヒトの病気のモデルといえば、霊長類(サルとか)とか齧歯類(げっしるい)(マウスとか)の「個体」が思いつく。動物の個体に現れるであろう 「自閉症の症状」 を研究者が目で見て確認しなければならないから。それが今回の報告では、〈ヒト幹細胞モデル〉 ときた。細胞を対象として研究する、というその考え方の背景には、「自閉症には遺伝する要素があって、関連する遺伝子群を研究者が操作することで、自閉症関連遺伝要素をコントロールできるのでは?」 というロジックがあると思われるがどうか? #素人が科学誌をよむ 【0689】 『建築を学ぶためのパターン・ランゲージ』(丸善出版2025)という本¹ が気になる。264頁。➣〈パターン・ランゲージ〉 を並べた本は少数ながらいくつか存在する。その構造的な提示のされ方、リマインダーとしても読めそうな彫琢された(と思われる)文章群にグッとくるところがある。以前購入して手元にある、『プレゼンテーション・パターン 創造を誘発する表現のヒント』(慶應義塾大学出版会2013:168頁)も 〈パターン・ランゲージ〉 を並べた本。ちなみに後者は、「パターン・ランゲージ・ブックス」 と銘打たれたシリーズの一冊のようであるけれど、この本以外には(現時点で)他の刊は存在しないもよう。その理由を考えてみる。
【追記】 そういえば、〈パターン・ランゲージ〉 本といってもいい、『Life with Reading 読書の秘訣カード』³ を以前、藤沢の書店で見かけたことがあった。
【0688】 まわりくどい言い方――論文はそもそも専門家向けのものだから、自らも専門家である論文著者は他の専門家への目配せをしているように一般読者には映る。イキオイ、素人にはわかりにくい言い回しが出現することがある――論文タイトル 「中程度の地球温暖化は全球気候の極端な結果を排除しない」¹ もそんな印象。ネイチャー 2026-03-26号² に掲載されている論文。➣地球温暖化まわりの論文というのはだいたいが不穏な・ダークなトーンに終始するように読み手は感じる。この論文のタイトルを、(自分ももちろん含む)素人向けに言い直してみると、「地球温暖化は、中程度の穏当なものだったとしても、地球全体の将来の気候を極端に悪化させる可能性があるよ。だから気をつけなはれや!」 というあたりか。「可能性がある」 という文言が外せないのは、今回の研究があくまで、研究者たちが想定したシナリオのシミュレーションだから――つまり想像ということ。でもベタに、「可能性がある」 なんて文言をタイトルに含めると負け感が生まれてしまうと書き手たちは考えて、別の言い方として、「極端な(=深刻な)結果を排除しない」 なんてまわりくどい言い方にを採用したのかもしれない。素人の読み手にはわかりにくいと思うけどどうか。その点、解説記事³ は、より広い読み手を想定しているからか、インパクトをねらって、「中程度の地球温暖化がもたらし得る最悪の結末」 なんてズバリのタイトルを付けている。もちろんこちらから読む。 #素人が科学誌をよむ 【0687】 『民主主義が科学を必要とする理由』(法政大学出版局2022)¹ という本を再読したくなる。278頁。➣『科学コミュニケーションの再構築 連帯志向の専門知へ』(勁草書房2026:224頁)² を読む前の準備として。図書館に所蔵されている。
【0686】 ネイチャー 2026-03-26号¹ の表紙は、犬と人間の写真。添えられたコピーは 「古い友だち」(OLD FRIENDS)――犬と人間の昔からの関係を意味している。このネイチャーに掲載されているのは、知られているかぎり最古のイヌゲノムを報告する論文が2本²⁺³。➣新知見の詳細よりも個人的に気になるのは、旧石器時代および中石器時代にさかのぼれるという今回のイヌゲノムを含む遺骸(死体のことです)は 「どこから」 見つかったのか、ということだったりする。論文中には、「cave」 という単語がちらちら見える――「洞窟」 ということ。大むかしのヒトの骨が見つかるのもだいたいが洞窟――保存に適している? とすると、今回のイヌの遺骸はヒトと一緒に葬られたものだろうかなどと想像したくなる――あるいは犬だけの墓地があったとか? まずは解説記事⁴ を読む。 #素人が科学誌をよむ 【0685】 『サイエンスコミュニケーション講座から学ぶ 科学が伝わる技法〜共感を生む双方向の対話、情報発信、アウトリーチ、研究資金獲得に活きるヒント』(羊土社2026)という本¹ が気になる。384頁。➣並行して、編者&著者の方々によるサイエンスライティングの実作を探していく。
【0684】 『吉本隆明詩集』(岩波文庫2024)という本¹ が気になる。353頁。➣以下の一文に遭遇して:
詩と科学と霊性が、父の思想の地下水脈なのだ。――『隆明だもの』 ハルノ宵子(晶文社2023)² p072
【0683】 『二月のつぎに七月が』(講談社2025)¹ を読みはじめる。長編小説。736頁。➣語り手が次々に変わっていく。ページをめくっていくと、「問い」が逆に浮かび上がるような不思議な心持ちがする――どういうことか。先に読み通ったページでは、「問い」とは気付かなかったものの、後続のページで、登場人物に関する何らかの「答え」的なる言辞がおかれることで、逆向きに、「問い」の存在に気付かされるというか。➣読み進めるのが楽しみ。
【0682】
◉新聞の社説はどうして書き手の名前を出さないのだろうか? という素朴な疑問。
◉既存の一般向け科学誌は、読み手の知的好奇心の成長・醸成という方向性で、誌面だけで完結していないのではないかという仮説。
◉サイエンス・フリーペーパー構想の実現には、エディトリアル・デザイナーが必要であることはわかっている。サイエンス・イラストレーターも。探す。
◉ポケットに収まるボールペン軸として「ユニボール ワン P」² という短い軸がある。この軸には他社製のリフィル、例えばエナージェルやサラサのリフィルを詰めて使うことができる。ならば、フリクションのリフィルが収まるような短軸は存在するか?
◉プロンプト・エンジニアリングに特化した学術誌または一般向けの雑誌は空白地帯らしい。
◉ダーウィンは偶然についてどのように語っているかが気になってくる。
◉近所のスーパーがチラシを写真付きカラーから、わら半紙モノクロ印刷に変えたことに気づく。燃料高騰に起因する印刷費値上げを見越して?
◉雑誌 『窮理 第28号』(窮理舎2025)¹ を読みはじめる。 #zap 【0681】 動物の行動の異常を 「ひとつの」 遺伝子の修正(編集)で治すという論文¹ に目が止まる。行動とか精神といったレベルの特性はたいてい複数の遺伝子やらタンパク質やらが絡んでいることが普通だから、この報告には惹きつけられる。➣論文で注目されているのは発達障害のひとつ――「スナイデルス・ブロック–カンポー症候群」 といもの。初めて耳にするけれど、神経系の発達障害とのこと。この疾患のマウスモデルの話――「マウスモデル」というからには当然、ヒトにみられる同疾患の研究が背後にある。➣どんな症状が現れる病気か、ということが論文要旨には書かれていて、それは、「知的障害、自閉症様行動、および運動障害」だという。➣そうした障害・異常を、研究グループがDNA配列を人工的に修正することで消した、という報告だけれど、改変マウスを対象に、どういうテストをして確認したのかということが気になってくる。まずは解説記事³ から読む。 #素人が科学誌をよむ