追記的週報 【2025年第43週/第44週】
【0566】 処世の本としても読めるようなコラム本は、長い年月を経たあとに読むのがいいかもしれないと、『ひとことで言う 山本夏彦箴言集』(新潮社2003)をザラ読みしつつ思う。書き手は、世の中のよしなしごとの来し方を自分の周りにたどって、レトリックを駆使して自信に満ちて厳しめに断言的に述べ立てていくので、刊行直後に読んでいたら、その文章にアテられていたかもしれない。➣けれども、初出が昭和57年~平成15年の数冊の本からの抜き書きというテイの本なので、最初に書かれたときからある程度の年月が経っており、書き手の予想が結果的に外れるところなどもほほえましく感じられたりして、安心して読める(読み流せる)ような気がする。
【0579】 ◉『いま批評は存在できるのか』(ゲンロン2025)⁴ を入手して読みはじめる。216頁。➣後ろの章からbackwardに読んでいく。◉大船の最安値チェーン・カフェ 〈モリバ・コーヒー〉 が閉店していた。◉NHKニュース 「いわき信用組合に一部業務停止命令へ 反社関係先に資金提供か」³ に遭遇する。普通の預金者が今後どのような動きを見せるのか気になる。自分だったらどうするか。◉研究のタコツボ化が進むと、提案される学説の検証がおろそかになるという当然の帰結。◉生成AIに対して、「(問い手に)身体性を感じさせる出力」 をするように誘導する問いを試行錯誤的に投げかけていく試み。◉ハルシネーションを生じかねないようなキワの問いを生成AIとの対話のなかで投げ込んでみるという試み。◉生成AIに 〈自虐ギャグ〉 を作らせることはできるか?◉『無限と連続 現代数学の展望』 遠山啓(岩波新書1969)² という本を図書館(の書庫)から借り出す。194頁。➣書き込みをまず消しゴムで消す。◉市長選の候補者のひとりから選挙運動用はがき(選挙はがき)が届く。選挙時に候補者が支持を求めて郵送する印刷物。公職選挙法で認められた、候補者が有権者に直接送付できる文書。➣自分が受け取ったのは、元は手書きと思われる文章が印刷されたもの。◉「サイエンスアゴラ2025」¹ という、科学技術振興機構(JST)の主催する科学イベントが今週末から始まる。ツイートが流れてくる。ポスターには外国人の少年とおぼしき人物の写真が使われている。これは国内のイベントなんだよな……と思案する。◉子供の頃に参加していたボーイスカウト(正確にはその年少集団であるカブスカウト)の指導的立場にあった大人のなかには、かなり左翼的な人もいたことを思い出す。発言のなかに左寄りの内容が含まれていたことは、少年ゴコロでもときに気づいていた。 #zap
¹ https://bit.ly/4ndEghB
² https://bit.ly/46YHZLf
³ https://bit.ly/3JaSPov
⁴ https://bit.ly/3USHwmO
【0565】 『大日本いじめ帝国 戦場・学校・銃後にはびこる暴力』 荻上チキ+栗原俊雄(中央公論新社2025)¹ を読みすすめる。224頁。➣差し挟まれる史資料(体験談や回想記)の部分は 「エモさ」 の度合いが高いと判断し、最初のほうの章から以後 飛ばすことに決定。この部分だけ後に(たとえば1年後に)改めて読むことにする。本は待ってくれる。
¹ https://bit.ly/4mmxXYW
【0564】 ジャパンタイムズ 2025-10-31号の一面見出し 「South Korea to build nuclear-powered subs in U.S.: Trump」 は、見出しらしい英文(の構造)をしている。中学生・高校生の自分であったら、その変則さにとまどっていただろう。➣生成AIで規範的な英文に直して(戻して)もらった結果が以下:「President Trump said that South Korea is going to build nuclear-powered submarines in the United States.」。こういう生成AIの使い方もできる。オリジナル記事はこちら¹。
¹ https://bit.ly/48VwcPb (ウェブ版記事タイトル=「South Korea to build nuclear-powered subs in U.S., Trump says」)
【0563】 生成AIの使い方として、自己のなかにある(浮かび上がる)「ダーティな考え/思いつき」 を問いのかたちに仕立てて生成AIに投げかける/ぶつける、という応用がありはしないか? 曲がりなりにも回答は返ってくるわけで、そうした ”思考スパーリング” を繰り返すことで、当初のどす黒い想念は(一部)清浄化されていくのではないか、という仮説。ただし、適切な問いの文を作るスキルは必要である。
【0562】 『言語学者、生成AIを危ぶむ 子どもにとって毒か薬か』 川原繁人(朝日新書2025)¹ という本が気になる。264頁。➣おそらく結論は、「要は使いようですよ」 あたりに落ち着くと予想される一方で、生成AIを利用しようとする小中学生相手にそもそも問い(プロンプト)の文章の作り方を教えることはなされていたりするのだろうかという疑問が浮かぶ――そこが一番大事なような気がする。否、年少の生徒たちだけとはかぎらない。たとえば大学に入学したての学生たちを対象に教養課程において、「プロンプトの作り方」 に類する講義を設けている事例はあるのだろうか? 「習うより慣れろ」 式は今日の大学新入生たちにどれほど有効なのだろうか/期待できるのだろうか。
¹ https://bit.ly/47mA9Kr
【追記】 入手して読みはじめる。リスクを煽〔あお〕る系(と言っていい)の新書は、書き手・編み手による構成つまり目次の順のまま読まないことにしている。まずは、「はじめに」 をざっと読んだ後に、最終章へ飛ぶ(今はこのあたり)。その後に、対談の章などを読み、あとは残りの章をランダムに読んでいくことにする。
【0561】 生成AIの使い方としてたとえば、「哲学カフェ」 や 「サイエンスカフェ」 への参加に先立って、お題に関して生成AIと議論しておいて、アタマを暖めておくという使い方があるということに遅ればせながら気づく――サンドバッグとして、さらにはスパーリング・パートナーとして。➣関連して、大学の討論系授業においても有用であることは明らかだろう。とすると、授業の 「お題」 が記載されている 「シラバス」 は、擁護の対象となり得るか。
【0560】 『リーダーのための潜在意識をコントロールする技術 世界初! 顕在意識と潜在意識を数字化』(ワニブックスPLUS新書2025)¹ という本が存在することを知る。224頁。図書館に所蔵がない(少なくとも県内の公立図書館には皆無)ということは、版元から図書館に対し、何らかのメッセージが送られているのではないかと推察するがどうか。
¹ https://bit.ly/4nyuV4n
【0589】 『古典基礎語辞典』 大野晋=編著(角川学芸出版2011)¹ という本はかねてから気になっている。1424頁。図書館の辞書棚を通り過ぎるときに横目に入ったら手に取って、数ページながめてそのつどいいなと思ってまた戻す。そもそもこの辞典に興味を覚えたのは、『日本語のために(池澤夏樹=個人編集 日本文学全集30)』(河出書房新社2016)² に収録されている上記辞書のページレイアウトにグッときたことがきっかけ。➣そしてこの辞典では、一部の収載語の語源についてタミル語との対応をつけようとする記述も添えられていたことを覚えている(そうした記述はあんまり必要ないのではないかと個人的に思っているのはナイショ)。➣「日本語のタミル語起源説」 というのは、その後、大野氏のお弟子さんたちのなかで継承して主張している方は見受けられない……ということは、学説として徒花であった、と素人は見なしてもよいのかもしれないという仮説。人文系の学説は、「言ったもんがち」 のところがあるのではないか? 検証があまりなされないのではないか? とかねがね思っていたりするのもナイショ。
¹ http://bit.ly/2GepPHm
² http://bit.ly/2bECmsS
【0588】 『日経サイエンス』 は 『サイエンティフィック・アメリカン』 の日本版という位置づけの科学雑誌。掲載記事の半分以上は本家からの翻訳だけれど、一部は日本版オリジナルの記事だったりする。そのオリジナル記事群こそ、日本版を読もうとする読者たちへの強い 「引き」 の一つになると推測する。➣図書館から借りてきた日経サイエンス 2025-09号¹ から、日本版オリジナル記事を抽出してみる:
◆「SCOPE」(短報)
◆「XXのオスとXYのメスは何を語るか」(特集:連続する性|性の二元論を超えて)
◆「オスの消滅を回避せよ Y染色体のダイナミックな進化」(特集:連続する性|性の二元論を超えて)
◆「北海道で発見 太古の地下生態系」(特集:地底世界に生命の起源)
◆「地下で生き延びる 微生物同士の共生関係」(特集:地底世界に生命の起源)
◆「パズルの国のアリス|同数のプラス評価とマイナス評価」
◆「旧東京天文台 岡山天体物理観測所(上)」(nippon 天文遺産)
◆「BOOK REVIEW」(書評)
➣これらのどのページが、潜在的読者(=これから読み手になるかもしれないビギナー)へ訴求するか考えてみる。
¹ https://bit.ly/4qw12Eg
【0587】 来たるべき、(ビギナー向け)科学テクストはおそらく、「とりあえずそんなに詳細に知る用意はこちらにはないんだよな」 と潜在的に感じている読み手に対し、当該科学トピックについて考えることがいかに楽しい可能性を秘めているか、ということをささやいてくれて、そのうえで、提示されるトピックについて読み手自身が自ら自分なりに考えていきたくなるようなきっかけを提供してくれる文体で書かれるべきだろう、と科学のビギナー代表のひとりとして切に思う。
【0586】 NHKニュース 「【ライブ予定】クマ駆除支援 秋田県知事が防衛相に緊急要望」¹ に遭遇する。クマ問題が自分たちではどうにもならないという立場をとって、ゆえに自衛隊による支援を要請する(総務省とかではなく)、というのはイキナリ感を覚える向きも多いのではないかと推測する。同知事の履歴を調べてみる² と、自衛隊の出身だったりする(記事は知事の経歴について言及していない)――なるほど。➣軍隊のプレゼンスを増すべく、内閣&防衛省まわりが事前に根回しして、隊出身の知事に要請を出してもらったという見立ては成立しますか? と生成AIに尋ねてみる。
¹ https://bit.ly/3Wr8WBa
² https://bit.ly/431muaf
【0585】 古書店の棚で見かけたら即時購入すべしという本のリストを持ち歩いている――おりおりに眺めている。もちろん価格とは相談ではあるが。数えてみたら現時点で300冊弱のタイトルにのぼる。たとえば以下のような本たち――ジャンル横断的にタイトルのみ挙げてみる:
◆「自己組織化と進化の論理」◆「理科基礎 自然のすがた・科学の見かた(東京書籍2003)」◆「科学的愉快」◆「神奈川の鳥2006-2010(神奈川県鳥類目録Ⅵ)」◆「生命のメカニズム――美しいイメージで学ぶ構造生命科学入門」◆「自然観察者の手記」◆「人間機械論*サイバネティックスと社会(1960)」◆「人間の自然認知特性とコモンズの悲劇」◆「英文法用語の底力」◆「うでずもう選手スヌーピー」◆「アルタミラ洞窟壁画」◆「ずっと探していた」◆「カメラはスポーツ」◆「I.W. 若林奮ノート」◆「裸でベランダ/ウサギと女たち」◆「夢と幻想と出鱈目の生物学評論集」◆「片岡義男COMIC SHOW」◆「答え合わせは未来で」◆「キャナリーロウ」◆「阿久正の話」◆「波止場日記」◆「誘拐部隊(ポケミス863)」◆「カガクするココロ」◆「平出隆詩集」◆「ジャック・ルーボーの極私的東京案内」◆「無名氏の手記」◆「旅する哲学」◆「哲学論理用語辞典」◆「思考と行動における言語」◆「欲望について」
➣それぞれの本にはそれなりの選択理由があるけれど、それは別の機会に。
【0584】 「書誌ページ」 というものがある――出版社のウェブサイト上に含まれる、ある書物まわりの事項を記したウェブページのこと。以前から考えていたこと:当該本の著者が刊行している ”別の出版社から刊行されている” 本の存在も、ページの下の方に書影つきで記しておくとよいのではないか。読書文化の推進に役立つと思うけれど、既に実践している出版社は存在するだろうか。
【0583】 あともうひとつ、「仮説集」 を書きたいと思っています。それがおそらくぼくが一番やるべき終活になると思っています。もっぱら自然科学に関する仮説ばかりを書いた本です。ただしエビデンスはいっさいなし。アナロジーとアブダクションだけで書きたいように書いていく。
――『世界のほうがおもしろすぎた ゴースト・イン・ザ・ブックス』 松岡正剛(晶文社2025) p357
➣ぜひ読みたかった。
【0582】 行きつけの図書館のひとつ、藤沢市図書館の南館は駅前のデパートの上階に位置する。館内には、この市にお住まいであった映画監督の大島渚氏のご家族から寄贈されたとおぼしき、氏が生前使用したという、大きくて重厚な机が置いてある――畳一枚ぶんくらいの木製。図書館の利用者は誰でも利用できる。だいたい誰かが座って本を読んでいる。
【0581】 『SINRA』(シンラ)というネイチャー系の雑誌が以前刊行されていた。その創刊準備号にあたると推測される、たしか 『マザー・ネイチャーズ』 という誌名の雑誌が何冊か刊行されていて、そのうちの一冊を書店で見かけて買い求めた記憶がある――30年くらい前。たしか、村上春樹氏の連載なども掲載されていて、なにより印刷されていた紙が美しく、全ページカラーでツルツルした薄いものだったような記憶がある。グラビア紙というのか? ネイチャー系の写真も満載。➣こんな雑誌が毎月読めるようになるのか、と大いに期待して、その後に出た 『SINRA』 と書店で遭遇することになる。[to be continued ... maybe]
【0580】 『時代を読む コラム批評一〇〇篇 1982~1985』 鮎川信夫(文藝春秋1985)という本を図書館から借りてくる。市内の図書館には所蔵されていなくて、近隣の茅ヶ崎市立図書館から広域利用制度を介して手元に届いた本(ありがたい)。➣30年前の本なのにとても状態がよい。ほぼ新品といっていいハードカバー。スピン(しおり)の折れ方から想像するに、一度もめくられたことのない本とおぼしき。本の背には 「書庫」 のラベルが貼られていて、さらにその下に 「開高家寄贈」 というラベルも貼られている――「開高家」 とは何か? 想像するに、長く茅ヶ崎に住まわれていた作家・開高健氏のもとから市立図書館に寄贈された本ではないかとみる。おそらく著者(鮎川氏)からの献本として開高氏が受け取り、その後一度も読まれることなく、開高氏の死後に遺族が図書館に寄付した本とみる。そしてさらに、図書館の書庫に所蔵後も一度も借り出されたことがなかったのであろう(だから美本)。➣でもオレは読みます。
【追記】半分くらいまでは付き合えたものの残念。離脱。後半は書評本のようになってしまっている。毎週のコラムは苦しそうである。
【0578】 図書館から借りてきた 『兆民先生 他八篇』(岩波文庫2023)¹ は文語文で書かれている。それはそれで魅力なれど少々しんどい。幸い、著者をフィーチャーした 『幸徳秋水伝 無政府主義者宣言』(夜光社2024)² という本が手元にあるので、そちらから先に読み、基本的事項をおさえてからまた上記文庫へと戻ることにする。
¹ https://bit.ly/47aRXK4
² https://bit.ly/4nGpy3E
【追記】 『幸徳秋水伝 無政府主義者宣言』 では、秋水が師匠にあたる中江兆民から学んだ文章修業の内実について知りたかったのだけれど、そのあたりはそれほど詳しく描かれていない。別の本にあたることにする。大逆事件については詳しく書かれている。➣登場人物が多い(そりゃそうだ)。なので、初出ページをメモしつつ読みすすめるのがいいかもしれない(と、ひとまず読み通してから気づく……)。
【0577】 生成AIへの問い  #Q_for_ChatGPT:
◉科学技術振興機構(JST)が「ムーンショット型研究開発事業」を推進しています。「ムーンショット型」なので、当初の目的を果たせなかった(つまり失敗した)という帰結も含みうる事業構想なのだと考えます。失敗に終わったプロジェクトに関して、関係者(研究者を含む)が、「当初の目標を達成することはできませんでした。しかし~」というような、いわゆる「失敗報告書」のような文書を一般国民に向けて作成・発表している例は過去にありますか?
◉ロケットの打ち上げが成功したというニュースを見ました。ロケット技術はすなわちミサイル技術であるという見立てはできますか?
◉サギ被害に遭った人にも落ち度があるという言説を肯定しうる場合があるとして、どのような側面が該当しますか?
◉マスコミ人がジャーナリズムについて語るとき、自画自賛系になることが多いように感じます。その理由としてどのようなことが考えられますか?
◉被害者意識をもちやすい人々に対して、そうした意識を払拭するための、ユーモアを含む語りかけをいくつか紹介してください。
◉科学の新知見について、例えば専門家向けのジャーナルに掲載・発表されるような科学新知見について、専門家圏とは異なる興味のアングルを、非専門家・ビギナーが持ち得るとして、どのようなアングルが一般にありうると考えることが可能でしょうか?
▶▶追記的週報 【2025年第41週/第42週】 https://bit.ly/4od1zZY