追記的週報 【2025年第41週/第42週】
【0576】 「サンゴ」 というワードを含むタイトルの論文は、たいていが温暖化を糾弾するというトーンで締められる。ネイチャー 2025-10-16号² に掲載されている論文 「2℃を超える温暖化での大西洋のサンゴ礁の成長の減退は海水準上昇の影響を拡大する」¹ も同じデンで、「このまま無対策だと大変なことになりまっせ!」 という脅し系の結論を導いている(と読める)。➣この論文では、特にモデル化&シミュレーションが用いられている――将来の予測をしているわけだから当然といえば当然。解説記事³ を読むと、さすが未来予測だけに、「scenario(シナリオ)」 だとか 「モデリング(modelling)」 だとかといったワードが頻出することはもちろん、文中に使われる助動詞 「could」 「might」 のオンパレードには素人でもすぐに気づく(動詞では 「suggest/predict/projected」たちが頻出)――うんざりする。。➣サンゴ礁-気候系の知見はそもそもが複雑系なわけで、ビシッとしたことは言えないのかもしれない。それにしても、ではある。解説記事の書き手はすなわち原著論文の査読者(レビュアー)なわけだけれど、これほどあやふやなトーンで語らなければならないことに忸怩たるところがあるのではないかと少々同情する。➣それでもまあ、モデリングにどのような因子を加味したのかは気になる。記事を読もう。おそらくザツに読むことが、素人にとって正しい読み方である気がする。論文執筆者の方々には、自分たちのシミュレーションの正しさを今後しっかり検討してほしいところ。 #素人が科学誌をよむ
¹ https://go.nature.com/4niSzBH
² https://go.nature.com/4n91iX5
³ https://go.nature.com/42Puf33 (PDF)
【0575】 NHKニュース 「全米各地で再び「王はいらない」デモ トランプ政権に抗議」¹ に遭遇する。動画に映り込むデモ隊の掲げるプラカードには、「NO KINGS」 と書かれているものがほとんど(なるほどこういうときは複数形なのか)。デモの主張は、自国のやりたい放題にみえる現大統領の振るまいを 「王」 の所業に見立てて抗議する、というあたり。➣興味深いことに、ウェブページ上のニュースクリップのサムネイル画像には、動画中には登場しないとおぼしき瞬間の静止画が使われていて、そこでデモ隊の一人が掲げるプラカードに、「NO EMPERORS」 というものが見える。➣今日 「emperor」 と呼称されるのは、日本の天皇と、もうひとつアフリカのどこかの小国の王様だけであるという記憶がある。数は圧倒的に少ないであろう 「NO EMPERORS」 のプラカードをサムネイル画像にあえて掲げるというところに、このメディアの何かしらの主張・意図・誘導があると深読みすることもできる。
¹ https://bit.ly/4orHyPs
【0574】 NHKニュース 「日本郵便 “懲罰自転車” 過去の社内の指摘に「不適切」と回答」¹ に遭遇する。➣〈懲罰〉 的な対応を組織が社員に対して行う業態(の傾向)に興味がある。たしか鉄道会社でも過去にあった。日々同じことを同じようにすることが求められる組織においてそうした慣行が生じやすいのではないか? という仮説。➣誰か既に調べているか。
¹ https://bit.ly/3JfaR8R
【0573】 『アメリカン・サイエンティスト』(American Scientist)¹ という科学誌に興味を覚える。なにやら、個別の科学トピックを深掘りするというよりも、「科学するとは?」 という方法論や哲学への言及も個々の記事に含まれるような匂いがする。そのあたりは個人的興味とベクトルが一致する。➣ありがたいことに、この雑誌は横浜市立図書館の中央館に所蔵されていることを知っている。同館では、『ネイチャー』 も 『ニュー・サイエンティスト』 の受入を既に停止して久しいけれど(両方とも英国の雑誌だ!)、『アメリカン・サイエンティスト』、『サイエンス』、『スミソニアン』、『ナショナル・ジオグラフィック』 などの科学系雑誌の受入は継続中のもよう。➣英語圏には科学誌がいろいろあってうらやましい。日本語でも、日本学術会議² あたりが新科学誌を創刊してくれないものか。存在意義を示すためにもどうすか。 #素人が科学誌をよむ
¹ https://www.americanscientist.org/
² https://www.scj.go.jp/
【0564】 ◉『眠れない夜に、言語化の話をしよう 脳科学者はため息を言語化し、開発者は深呼吸を可視化する』 中野信子+川田十夢(ソシム2025)⁵ という本を読みすすめる。224頁。➣同人の各氏に薦める。◉『白水社の本棚』(2025年秋号)が手元に届く。無料で送ってくれる⁴。◉科学技術振興機構(JST)の発行する 『JSTnews』 2025-10号を受け取る。冊子を無料で送ってくれる³。研究内容に迫るというより、研究「者」 をフィーチャーしている印象。「角川アスキー総合研究所」 というところ(出版社?)が制作を担当している。◉サイエンティフィック・アメリカン 2025-11号² の目次が公開された。◉ChatGPTのプランをアップグレードする。◉その人が生成AIに投げかけるカジュアルな問い群から、その人の今の問題意識が垣間みえること。◉スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)の試みにおいて、最も攻めている高校を知りたい。◉図書館から借りてきた単行本版 『ぼくは勉強ができない』 山田詠美(新潮社1993)を読みはじめる。235頁。◉毎日新聞がその社説を日々ウェブで公開していることを知る¹ 。その意気や良し。なれど執筆者の名前は明記されておらず。◉新聞の社説を書いているような人たちこそ、自分たちの日々つづる文章の文体の限界について切実に感じているのではないか? という仮説。◉既存の科学系新書は厚すぎるのではないか? 読み手としては200ページ以下が適切と考える(妥協して220ページまで)。執筆者である専門家に対して、編集者がしっかり口をきけない状況も背景にあるのではないかという仮説。 #zap
¹ https://mainichi.jp/editorial/
² https://bit.ly/46PgUKs
³ https://bit.ly/4nb9bLr
⁴ https://bit.ly/4chAZZp
⁵ https://bit.ly/41nhzPW
【0572】 NHKニュース 「村山富市元首相 死去 101歳 社会党で委員長など務める」¹ に遭遇する。同氏は以前、マルクス 『資本論』 なんて読んだことはない、とどこかで述べていた。いい話だと思った。合掌。
¹ https://bit.ly/4o0bylG
【0571】 読みすすめている 『ぼくは勉強ができない』(新潮社1993)は、『太郎物語』 にテイストが近くてグッとくる。今日のPC的風潮をものともしない雰囲気もいい感じ。➣映画化されていることを知る。https://amzn.to/4oqt0ja
【0570】 『アナキズム 一丸となってバラバラに生きろ』 栗原康(岩波新書2018)¹ という本がある。272頁。まずはこれ良書。➣参考書籍として確認したいところがあり、市内の公共図書館の所蔵を確認するも、2018年当時は確かに中央館に所蔵されていたと記憶しているけれど現在ではどこの地区館にも存在せず。内容に不穏なところがあると解釈した行政がのちに(こっそり)除籍したのだろうと忖度する。➣新書なのだから自分で買えばいいという話もある(990円也)。
¹ http://bit.ly/2FtWqwf
【0569】 論文タイトル 「フランスの1789年の「大恐怖」におけるうわさの伝播を疫学モデルで説明する」¹ に遭遇する。ネイチャー 2025-10-09号² に掲載されている。➣〈「大恐怖」〉とはフランス革命に先立つ暴動を指すらしい。「うわさ」 の伝わり方を調べるのに、なぜ 〈疫学モデル〉 が有効なのか? という素朴な問いが頭に浮かぶ。疫学という分野では、病気の拡がり方を調べるモデルやツールが充実しているから? 解説記事³ があるので、まずはそちらから読んでみたい。 #素人が科学誌をよむ
¹ https://go.nature.com/4hkLJuc
² https://go.nature.com/3VWOnfH
³ https://go.nature.com/46QKSh8 (PDF)
【0568】 『帰れない探偵』 柴崎友香(講談社2025)¹ を読みすすめる。小説。304頁。➣予想外に読めるのは、登場人物の発話の扱いかと考える。括弧書きで直接的に置いている部分もあれば、(一人称語りの)主人公が、別の人物の発話をいったん受け止めて(加工して)間接話法に直して置いている(テイの)部分もある。➣おそらくこの2つの発話処理スタイルのリズムが読み手をして心地よく感じさせるのかもしれないという仮説。
¹ https://bit.ly/46RDwKC;
【0567】 NHKニュース 「自民 高市総裁が首相指名選挙に協力呼びかけ 両院議員懇談会」¹ に遭遇する。記事の中身はどうでもよくて、添えられた写真に注目する。空席の目立つ座席群を俯瞰で(見下ろすように)撮った動画の止め絵が添えられている。当メディアはもちろん、この写真の切り取り方を意識してやっている。そのココロは、「新総裁の人気は……」 というメッセージとみる(ように視聴者を誘導している)。
¹ https://bit.ly/4oiSbnE
【0566】 免疫学者の坂口志文氏へのインタビュー記事¹ がサイエンティフィック・アメリカンのウェブに掲載されている。坂口氏は同誌2006年10月号に、制御性T細胞まわりの記事を共著で執筆していることが記されている。タイトルは 「免疫系の平和維持部隊(Peacekeepers of the Immune System)」²。➣その翻訳版は、サイエンティフィック・アメリカンの日本語版である 『日経サイエンス』 2007年1月号に、「免疫系の“守護神” 制御性T細胞」³ というタイトルで掲載されているもよう。➣インタビュー記事¹ はそれほど長くはないものであり(おそらくじっくり話を聞く時間がとれなかったと想像する)、初読では少々理解が難しいかもという印象。2006年10月号の長めの記事² こそ読むに値すると考える。読む。
¹ https://bit.ly/4q4Velf
² https://bit.ly/47aHJaR
³ https://bit.ly/4nHTDA2
【0565】 生成AIの普及に伴って、疑問文へのなじみが高まる状況になり、既存のジャーナリズムにおける、(半ば景気づけ的な)断言的なもの言い/文章は流行らなくなる、受け入れがたくなるのではないか? という仮説。少なくとも違和感をもって受け入れられるようになる(なっている?)、ということは、真面目な吟味の対象となる言明とはならなくなるのではないか、という仮説。例えば……
【0563】 NHKの朝のニュース番組 『おはよう日本』¹ では、ストレートニュースの合い間にVTR枠の取材リポートが挟まれることがよくある。今日(10/11)の場合は、「”家が借りられない” 老後の住まい支援策は」 というもの。このコーナーは何と呼ばれているのか気になる。つくりとしては、新人時代も終わりに近づいたディレクター・記者・カメラマンの若手チームが一本立ちする直前にある程度の時間をかけて企画・取材して制作したテイにみえる。卒業企画のような。➣トーンはだいたいいつもウェットな感じで、これが、新聞で昨今指摘されている 「エモさ」² のテレビ版かもと感じたりする。ついつい耳が持っていかれる(そして後悔する)。➣作り手は毎日異なる(であろう)のに、実際に放送される完パケの手ざわりが似ていると視聴者(とりあえず一人だけど)に感じさせるということは、ひょっとすると、このコーナーにはルールのようなものが社内で存在し(あるいは忖度条件としてあり)、若手チームはそのプロセスを経ることで、同社色に染められていくことになるのかもなあという仮説を立ててみる。
¹ https://www.web.nhk/tv/pl/schedule-tep-g1-140-20251011/ep/R74711V74Z
² 『エモさと報道』 西田亮介(ゲンロン2025) https://bit.ly/46LprOY
【0562】 ジャパンタイムズ¹ という英字新聞は、土曜日と日曜日の版はまとめて週末版として刊行されている(つまり日曜日には配達はない)。2025-10-11/12号の一面をつらつら眺めて気づいたことは、土日以外の平日版とは新聞の編集作業の進行スタイルが異なるのかも?ということ。具体的には、「版切り」 の時刻が、週末版では平日版より後ろにずれ込むのかなという仮説。「版切り」 とは、編集作業を締めて印刷を開始する時刻のこと。➣なぜそう考えるか?――同号の一面に掲載された、「自公連立解消」 「ノーベル平和賞発表」 「石破首相の談話」 のいずれの出来事とも金曜日の遅めの時間の話であった(7時前くらい?) 通常、そのあたりの時刻のニュースは、この新聞では翌朝版でフォローされ ない」傾向があると以前から感じていた(のんびりしている)――平日版ならまずとりこぼす。なので、今週の週末版(10-11/12号)を眺めて軽く驚いた次第。
¹ https://www.frontpages.com/the-japan-times/
【0561】 生成AIへの問い  #Q_for_ChatGPT:
◉自分が、「お前が言うな」という言葉を受けざるを得ない状況に陥った者である認識はあった上で、それでも、そういう言葉を投げかけてくる人たちに「お願い」の言葉を言い続ける方法があるとして、それは何ですか?
◉社会人枠(のようなもの)で大学の教授へと転身した方々は、最初は意気込みがすごいと感じさせるところがありますが、しばらくすると何も言わなくなる傾向があるように感じます。その要因は、奈辺にあると考えられるでしょうか?
◉他者を意気消沈させる言葉をカジュアルに発する人は、どういうつもりでそうした行為をしていることがあると考えられていますか?
◉世の中のよしなしごと(人・もの・こと)に対していちど得てしまった第一印象を瞬時に打ち消しうることが知られている手法があれば紹介してください。
◉裁判における判事による判決の言い渡しにおいて、主文を冒頭で述べず最後にまわすことに演出的な意味合いはありますか?
◉公共放送の伝える報道において、隣国の船舶が領海を侵犯したというものがわりと頻繁にあります。そうした事案をニュースに仕立てること自体が、国民に対して、軍事費の増大はやむを得ないものだと暗に・無意識に、刷り込もうとしているという見方をしている人はいますか?
◉ある科学的成果が軍事転用できることに気づいてしまったとして、しかしながらその可能性に言及してしまうと、世間の「寝た子」を起こしてしまい不穏な展開になりかねないので、別の方向へと、世間の「目を逸らす」言及として、ありうる例を挙げていただけますか?
◉文学部関係者「以外」で、大学における文学部の必要性を訴えている人物を挙げてください。存命中の方で。
◉雑誌で、『○○』や『□□』など、編集している人たち自身が各誌で扱われている特集テーマに何の関心もないまま雑誌づくりをしているのだろうなあ、と読み手のひとりとして、残念に思うことが少なくありません。読み手として、そうした雑誌つくりの弊をなんとかできないものかと考えます。アイデアをお貸しください。[誌名は敢えて秘す]
【0560】 NHKニュース 「食料自給率4年連続38% “2030年度に45%”目標達成に開き」¹ に遭遇する。➣数字が出てくる記事を読むと、その計算式を知りたくなる。細かいところまでの。どこかに公開されているのだろうか?
¹ https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014946331000
▶▶追記的週報 【2025年第39週/第40週】 https://bit.ly/4pAzZYa