追記的週報 【2025年第29週/第30週】
【0469】 NHKニュース 「科学雑誌「サイエンス」15年前の論文を撤回 研究側は反発」¹ に遭遇する。➣〈撤回〉といっても、論文の著者たちが撤回を申し出たのではなく、編集部が強制的に撤回した、という構図。なぜ15年もかかるのかという素朴な疑問――同誌の撤回基準に要因があってこれほど長い時間を要したもよう。サイエンスの今週号で編集長から経緯が説明されている²。ニュース記事³ も掲載されており、こちらのほうがわかりやすい。➣(撤回された)論文の主張するところを乱暴にまとめるなら、生体を構成する分子(例えばDNA分子とか)の構成分子に含まれるリン原子がヒ素原子で置き換えられるのではないか?――「ヒ素生命体」が存在するのではないか?――という趣旨。リンとヒ素は元素の周期表上で上下の関係にあるからよもや、と業界が色めき立ったのだと想像する。でも結局、著者たちの主張する結果を再現することが業界的にできなかったので、不正行為が絡んでいたか否かはともかく、著者たちの主張は否定される、という同誌による判断。
【0468】 『文体史零年 文例集が映す近代文学のスタイル』 国文学研究資料館=編(文学通信2025)¹ を入手して読みはじめる。440頁。➣来たるべき「新科学散文(new science writing)」 のための文体のヒントが得られるかもしれない。まずは第4章 「写生文とは何か」 &第10章 「日清・日露戦争期における美文・写生文と文範――異文化を描く文体」 あたりから。
【0467】 『生命の起源を問う 地球生命の始まり』 関根康人(ブルーバックス2025)という本¹ が気になる。272頁。➣40億年前くらいと目されている 〈生命の起源〉 のメカニズムの正確なところはわかるわけはないと素人目には思える。このたぐいの話は――いろいろな研究者が研究/提案しているけれど――エンタメとして/放談として聞けばいいという考えることもできる。➣そうすると、読みどころとしては、書き手がどのような仮説(できれば複数)を提示しているか? そしてその仮説を検証するためにはどのような実験系を組めばいいか?どのように書かれているか、その書きぶりがある。➣この本では、どのような仮説が、どのような証拠を元に展開されているのか期待する。
【0466】 ネイチャー 2025-07-24号の目次が公開された。「「制御された混沌」――天才を育む環境の作りかた」 と題するエッセイ¹ で、1930年代のカフェで(研究室ではなく)、核物理学の理論的研究が進んだということが紹介されている。フィーチャーされている人物は、スタニスワフ・ウラムという数学者・物理学者・コンピュータ科学者、そしてカフェは、現在のウクライナにある 「スコティッシュ・カフェ(the Scottish Cafe)」。➣学生や研究者を惹きつけるインフラとしてのカフェという話はたまに聞く。例えば理系の研究者(のタマゴ)たちが集った歴史をもつカフェをまとめたガイドブックのような本があってもいいかもしれない―ー集った人物たち、研究のジャンル、そこで生まれた成果、当時の店のメニューなどの一覧を添えて。➣エッセイで言及されているウラムの自伝 「Adventures of a mathematician」 の邦訳が、『数学のスーパースターたち ウラムの自伝的回想』(東京図書1979)という本のもよう(なぜ複数形として訳されるのか謎)。図書館で借りてみる。
【0459】 ◉『未来学の提唱』 梅棹忠夫(日本生産性本部1967)という本が気になる。245頁。➣『未来学 人類三千年の 〈夢〉 の歴史』(白水社2025)の訳者あとがきで言及されている本。◉気になっている本:『アリストテレスから動物園まで 生物学の哲学辞典』 P.B. メダワー(みすず書房1993)⁴。428頁。今だったら読めるかもしれない。◉プロジェクトが失敗した集団の長(たち)が、失敗の判明後に、何の責任も引き受けたように見えない場合、当該組織がどのような展開を辿っていくのかに興味を抱く。◉サイエンティフィック・アメリカン2025-08号³ の目次が公開された――鳥インフルエンザに関するウェブ記事をまとめた号のもよう。同号はデジタル版のみの発行(印刷版はない)。◉『科学的精神の形成 対象認識の精神分析のために』 ガストン・バシュラール(平凡社ライブラリー2012)² という本は図書館から何度か借りてきては途中で読み止めてしまっていた本。今なら読めるかもしれないという予感がする。◉コーヒーカップの茶シブを落とすのには 「ピューラックス」¹ という薬液が有効であったりする。 #zap 【0465】 『鳥はなぜ集まる? 群れの行動生態学[新版]』 上田恵介(東京化学同人2023)¹ を読みはじめる。240頁。➣読む理由:NHKニュース 「航空機バードストライク “最も危険な鳥のひとつ”国内で急増」² に遭遇したから。航空機のエンジンに鳥が突っ込んで起こる 「バードストライク」 という事故の要因が、鳥の 「群れ」 にあるらしいことを知る。➣ならば、群れを(少なくとも空港付近で)作らせない(作らないですむ)ようにするには? あるいは、群れがほどけるようにするには? と考えたくなる。そこで、そもそもの 「群れの行動生態学」 を知ることで、そのメカニズムを考えたくなるという展開。
【0464】 『禅林句集』 足立大進=編(岩波文庫2009)という本¹ が気になる。語彙集/フレーズ集。474頁。➣禅僧のための 「アンチョコ本」 と言えるか――記憶を呼び出すリマインダーとしての 「禅林句」。➣関連してふと頭をよぎるのは、たとえば仏教僧/研究者などで、原始仏教の経典(たとえばダンマパダ/スッタニパーダ)を暗記している人は国内にいるのだろうか、ということ。➣『群像 2025-06』 に掲載された、奥泉光×町田康 両氏の対談で言及されている本。
【0463】 『サイエンスライティング 科学を伝える技術』(地人書館2013)¹ はときおり再読したくなる本。432頁。半ば反面教師として、染みる言葉が語られているから(すいません)。原書=『A Field Guide for Science Writers Second Edition』(Oxford University Press, 2005)。あと関連書として気になるのは、『The Craft of Science Writing: Selections from The Open Notebook』 という本。第2版²(2024)が刊行されている。365頁。未邦訳。
【0462】 『若者をモチベートする科学』 という本¹ が気になる。464頁。ネイチャー 2025-07-17号の書評ページ² で出会った本。➣ビギナーに科学を語る際の心構えに資するかもしれないと期待する。[メンター・マインドセット]
【0461】 クレイグ・モド氏の新刊 『Things Become Other Things: A Walking Memoir』(Random House 2025)という本¹ が気になる。308頁。➣タイトルを訳してみる:『あらゆるものごとは変転する――日本を歩く』。➣ジャパンタイムズ@2025-07-17³ で紹介されている。国内の古道を旅した記録(回想録)のもよう。紀行文。文体が気になる。
【0460】 サイエンティフィック・アメリカン2025-06号の記事 「ヒトは未だ進化の途上」(Humans Are Still Evolving)¹ をポツポツ読んでいく。実質6ページほどの記事。このテーマは、最近刊行された岩波科学ライブラリーの一冊 『世界は進化に満ちている』(岩波書店2025)と響き合うところがありそうな気がする。150頁。 #素人が科学誌をよむ