演奏者の意図は聴取者にどう伝わるのか -フレーズ表現における視覚情報の 影響分析-
◎藤坂亜南(関西学院大学), 橋田光代(福知山公立大学), 片寄晴弘(関西学 院大学)
本研究では,演奏表現が聴衆にどう解されるのかという課題について取り扱う.特に,フレーズ表現の理解という課題に対して,演奏映像,つまり,視覚的情報がどのように関与するかを調査することを目的とする.フレーズ構造の意図伝達は,演奏者が意図した表現と聴取者が聴き取った表現がどれだけ一致しているかで表すことができることから,本研究では,クラシックピアノ・ソロの楽曲を演奏している音声のみの動画と,映像付きの動画を視聴してもらい,フレーズ構造を記述する被験者実験を実施する方法をとる.しかし,フレーズ構造を記述する難しさ,また昨今で話題になっている COVID-19 感染対策により対面実験が行えなくなったことから,実験用の Web システムを開発し,オンライン化で実験を行なった.視聴実験の結果から,演奏映像をつけることでフレーズ構造の伝達度は低くなり,特にピアノを経験している被験者はその傾向が強いことが示唆された.
実験に使用した楽曲を選んだポリシーなどあれば教えていただきたいです。今回使用した楽曲はあまりにも有名な曲ばかりなので、被験者(特に楽器経験者)の作成するフレーズ区切りは事前知識の影響を受けると思いました。(未来大: 能登)
実験で使用した楽曲に関しては、一つの楽曲でも多様に解釈されやすいものを選びました。実験で選んだ5人の演奏者の間でも、同じ曲にも関わらずほとんど異なるフレーズ構造を書かれていました。有名な曲が故に事前知識の影響があるというご指摘は、こちらもその通りだと考えています。(発表者:藤坂)
(口頭質問)どういう演奏(者)を選んだのか
体の動きが極力大きく、且つ(言い忘れていましたが)フレーズ構造があまり似ていない演奏者を選びました。また、今回の演奏者は全員コンクール入賞を経験されたことのあるプロの方です。(発表者:藤坂)