旋律の音価、遷移、拍節構造に関するルールに基づくIR分析器実現方式の検討
○能登楓, 竹川佳成, 平田圭二(公立はこだて未来大学)
本研究では,Implication - Realization モデル(IR モデル)に基づき,IR シンボル列を獲得する方法について述べる.IR モデルとは 1992 年に E.Narmour が提唱した音楽理論であり,3 音以上からなる音列の参照関係を 8 つのシンボルへ分類することによって旋律を分析する.これまで,ルールの曖昧さや分析事例の少なさといった理由から,IR 分析器は部分的には実装されているものの,総合的に実装された事例はない.本研究では,旋律における音価,遷移パターン,拍節構造に関する 3 つのルールを提案し,Narmour 自身による分析例から抜粋した 61 例に対する IR 分析,および評価を行ったところ,再現率が 0.836,適合率が 0.844,F 値が 0.84 となった.また,提案ルールの有用性に関する議論を行なった.
聞き逃したかも,VRが顕著に誤推定?になった要因をもう一度聞きたい(橋田:福公大)
提案したIR分析の手順は,クロージャ内における特徴量が大きいものから順にIRパターン開始音として選出し,IRパターン開始音から始まる3音へのIRパターン (8種類) の付与となっています.この時,クロージャ内における最大付与数というものを設定し,特徴量が高いものから順にIRパターンの付与を行います.これらの推定が正しかったかどうかの評価方法としては,other を除く8パターンの開始音に関する,再現率,適合率,F値となっています.otherを除いた理由としては,IRパターンのように意味のあるパターンではないと考えられるためです.
本システムの評価値が低くなった要因としては,付与されるシンボルがナームアのものと異なることが考えられます.ナームアのIR分析において,otherというパターンは基本的にアウフタクトのように,余った (という表現が正しいか分かりませんが)1,2音に付けるようなものであり,3音に付与するようなパターンでは無いです.しかし,今回採用したパターン付与方法 (ナームア 1992, 矢澤 2016) では,基本8パターンに含まれない3音に対しても,otherというパターンを付与してしまいます(P.16 左図).一方,このような3音に対してもナームアはなんらかのIRパターンを付与していることから,たとえ,パターン開始音を正しく推定できていたとしても,異なるパターンが付与されることになってしまいました.
異なるパターンが付与された際,PとIPだったりDとIDなどを混同して付与する場合,評価値への影響がないのですが,otherと任意のIRパターンを混同してしまった場合には,パターン開始音であるべき箇所にotherが付与されるため,評価値が下がってしまいます. (能登 : 未来大)