自走式クレーン事件
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自走式クレーン事件意匠権侵害差止請求事件
弁理士
遠山 勉
事件の概要
意匠登録第766928号
自走式クレーン
被告製品
自走式クレーン事件の結論
右1に認定した本件意匠とイ号意匠の一致点によれば、イ号意匠は四に認定した本件意匠の要部である構成を具備しているものであり、そのことによって看者に 彼此混同を生じさせる共通の美感を与えるものであり、イ号意匠は本件意匠に類似すると認められる。
本件意匠とイ号意匠との間には、右2に認定したような相違点があるが、いずれも細部についてのものであり、その個々の相違点も、また、それらの相違点全てを 併せ考えても、前記共通の美感を左右するに足りるものではない。
とした。
裁判所の判断本件意匠の基本的構成(1)
二 本件意匠の構成について 本件公報によれば、本件意匠の構成は次のとおりであると認められる。
1 本件意匠の基本的構成態様は、
(一) 四つのコーナー部にアウトリガーを配し、各アウトリガーの内寄りに四つのタイヤ式車輪を有し、後端部上方にエンジンボックスを搭載した下部走行体と、
本件意匠の基本的構成(2)
(二)
(1) 下部走行体の正面視の略中央の、左側面視の左側部に高い箱体状のキャビンを、
(2) 同じく略中央の、左側面視の右側部には低く正面視横長箱体状の機器収納 ボックスを、
(3) 左側面視においてキャビンと機器収納ボックスとの間の略中央部には、伸縮自在のブームを各々搭載した、
上部旋回体と、からなっている。
本件意匠の具体的構成(1)
2 本件意匠の具体的構成態様は次のとおりである。
(一) 下部走行体は、 (1) 前後の車輪の上方に、車輪の上面部を覆う、正面視において略台形状に折 曲した板状のタイヤフェンダーを設けている。 (2) タイヤフェンダーの間に、正面(車体左側)では前輪寄りに直方体の箱体 状の部材が、後輪寄りにはステップが、また背面(車体右側)では後輪寄りにステ ップが取り付けられている。 (3) 下部走行体(下部走行フレーム)の後端部上方には、正面視において左 (車体前方)部分が前方に向かって低くなるように傾斜する略変形五角形で、右側 面視では縦長方形のエンジンボックスが搭載され、エンジンボックス後部の空気出 入口は網状となっている。 (4) エンジンボックスの上面は機器収納ボックスの上面よりやや高くなってい る。
本件意匠の具体的構成(2)
(二) 上部旋回体は、
(1) キャビンは、正面視において下部走行体の略中央の位置にあって、横幅が 下部走行体の横幅の二分の一弱、正面視において長さが下部走行体の全長の二分の 一弱の角張った箱体状で、背面視において右方(前面)は上端部から前方に傾斜 し、下方部で逆くの字形に屈折した形状となり、左方(後部)の天井部は僅かに後 方に傾斜していて、全体が右方(前面)下部が前方に突き出した横長変形六角形を なしており、周側の上部には一連の方形状の大きな窓が設けられ、天井部の前方寄 りにも方形状の大きな窓が形成されている。 そして、平面視は、略横長方形ではあるが、ブーム基部上面に配設されたウイン チがキャビンの後方略二分の一の部分に若干食い込むようにキャビンの幅が狭まっ ている。
本件意匠の具体的構成(3)
(2) 機器収納ボックスは、正面視において下部走行体の略中央の位置にあっ て、高さがキャビンの略三分の一、前後の長さがキャビンの長さと略同じの前後に 長い箱体状であり、正面視において、上辺が下辺より右方(後方)へ退いた略平行 四辺形状となっている。
(3) ブームは、その基端部が、キャビン側方の後方でエンジンボックスの前方 斜め上の位置で旋回フレームの基台から突設された正面視略直角三角形状のブーム 支持フレームの上端部に枢着され、収縮・収納状態では前下がりの状態でキャビン の下方側部を横切り、先端部が下部走行体の先端より若干突出して下部走行体に近 接した位置で終わっており、正面視においてブーム中央部の下方の一部が機器収納 ボックスに隠れている。
本件意匠の具体的構成(4)
(4) ブーム基部より前方、キャビン後側部上方付近のブーム上面には、ブーム を跨ぐように、前後の長さがキャビンの略三分の一、上縁最高部がキャビンの天井 部とほぼ同じ高さにある、正面視において横瓢箪型の覆いが取り付けられたウイン チが設置されている。また、ブーム支持フレームの頂点(最高部)は、キャビンの 天井部とほぼ同じ高さにあり、ブーム支持フレーム後端部には、平面視において略 台形状の分厚いカウンターウェイトが配設されている。
イ号意匠の基本的構成(1)
イ号意匠の基本的構成態様は、
(一) 四つのコーナー部にアウトリガーを配し、各アウトリガーの内寄りに四つ のタイヤ式車輪を有し、後端部上方にエンジンボックスを搭載した下部走行体と、
(二)
(1) 下部走行体の正面視及び背面視の略中央の、左側面視の左側部に、 高い箱体状のキャビンを搭載し、
イ号意匠の基本的構成(2)
(2) 同じく略中央の、左側面視の右側部には、低く正面視横長箱体状の機器収 納ボックス及びこれと連続するウインチ収納ボックス(一体となって駆動機器フー ドを構成する)を搭載し、右駆動機器フードはブーム支持フレーム下部の後方から キャビン後方にまで回り込ませ、
(3) 左側面視において、キャビンと機器収納ボックスとの間の略中央部には伸縮自在のブームを各々搭載した、
上部旋回体と、 からなっている。
イ号意匠の具体的構成(1)
イ号意匠の具体的構成態様は次のとおりである。
(一) 下部走行体は、
(1) 前後の車輪の上方に、車輪の上面部を覆う正面視において略円弧状に曲げ られた板状のタイヤフェンダーを設けている。
(2) タイヤフェンダーの間はサイドフェンダーで覆われ、車輪に対峙する部分 は車輪の外周面に沿った円弧状となっている。
イ号意匠の具体的構成(2)
(3) 下部走行体(下部走行フレーム)の後端部上方には、正面視において左 (車体前方)部分が前方に向かって低くなるように傾斜する略変形五角形で、右側 面視では左右対称に角がゆるやかに突出した六角形状のエンジンボックスが搭載さ れ、エンジンボックス後部の空気出入口にはルーバーが嵌込まれている。
(4) エンジンボックスの上面は機器収納ボックスの上面よりやや低くなってい る。
イ号意匠の具体的構成(3)
(二) 上部旋回体は、
(1) キャビンは、正面視において下部走行体の略中央の位置にあって、横幅が 下部走行体の横幅の二分の一弱、前後の長さも下部走行体の全長の二分の一弱の平 面視横長方形の角張った箱体状で、背面視において右方(前面)は上端部から前方 に傾斜し、下方部で逆くの字形に屈折した形状となり、左方(後面)は上端部から 後方に僅かに傾斜し、中間部で下方へほぼ垂直に屈折していて、全体が右方(前 面)下部が前方に突出した横長変形六角形をなしており、周側の上部には一連の方 形状の大きな窓が設けられ、天井部の前方寄りにも方形状の大きな窓が形成されている。
イ号意匠の具体的構成(4)
(2) 機器収納ボックスは、正面視において下部走行体の略中央の位置にあっ て、高さがキャビンの略三分の一、前後の長さがキャビンの長さの二分の一弱の前 後に長い箱体状であるが、正面視において上辺が下辺より右方(後方)へ退いた台 形状となっており、その後方にこれと連続するウインチ収納ボックスはキャビン側 方からエンジンボックスの前面上方ブーム支持フレーム下部の後方を経てキャビン 後方にまで回り込んでいる。
イ号意匠の具体的構成(5)
(3) ブームは、キャビンの側方の後方位置でエンジンボックスの前方斜め上の 位置において旋回フレームの基台から突設された正面視略直角三角形状のブーム支 持フレームの上端部に枢着され、収縮・収納状態では前下がりの状態でキャビンの 下方側部を横切り、先端部が下部走行体の先端より若干突出して下部走行体に近接 した位置で終わっており、正面視においてブーム中央部の下方の一部が機器収納ボ ックス及びウインチ収納ボックスからなる駆動機器フードに隠れている。
(4) ブーム支持フレームの頂上(最後部)はキャビンの天井部より若干低く、 右頂上には滑車が設けられているが、ウインチは外部から視認できない。
裁判所が認定した本件意匠の要部の認定(1)
本件意匠において看者の注意を惹く点即ち要部は、
1 正面視において下部走行体の略中央の位置にあり下部走行体の全長の二分の一 弱で、背面視で右方(前方)下部が前方に突出した横長変形六角形の高い角張った 箱体状のキャビンと、高さがキャビンの略三分の一の前後に長い箱体状の機器収納 ボックスの各構成態様及びキャビンと機器収納ボックスとの間にキャビンの下方側 部を前下がりの状態で横切り、正面視において中央部下方が機器収納ボックスに隠 れるように配設された収縮・収納状態のブームの三者相互の配設関係、
裁判所が認定した本件意匠の要部の認定(2)
2 ブームの基端部が、キャビンの側方の若干後方位置で、かつ、エンジンボック スの前方斜め上の位置で旋回フレームの基台から突設された正面視略直角三角形状 のブーム支持フレーム上端部に枢着され、ブームは収縮・収納状態では機器収納ボ ックスとキャビンの間を前下がりの状態で横切り、その先端部が下部走行体の先端 より若干突出して下部走行体に近接した位置で終わる構成態様並びにブーム支持フレーム、ブームとエンジンボックスを含む下部走行体及びキャビンとの配設関係、 にあるものと認められる。
要旨認定の基準について
公知意匠中に存在するありふれたものとまでは認められない個々の構成態様を取り出して本件意匠の一部の構成態様と同じであるとして要部から除外すべきであるとすることは採用できない。
要旨認定の基準について
本件意匠を本意匠とする類似意匠が登録されている場合、本意匠である本件意匠 の要部の認定に際して各類似意匠を参考にすべきことは勿論であるが、前記各類似意匠を参酌しても、前記四の本件意匠の要部の認定に沿うものでこそあれ、反する ものではない。本件意匠の要部及び類似の範囲は、本件意匠が出願された時点で観念的に定まっているのであり、本件意匠出願後公知となり、類似意匠の出願に先行 する意匠の存否にかかわらず一定であると解されるから、イ号物件Iの発売によってイ号意匠が公知となった後に出願された類似意匠が登録されていることをもっ て、本件意匠の要部及び類似範囲が変動する訳ではない。
対比(一致点)
本件意匠とイ号意匠とを対比すると、両意匠 はいずれも意匠に係る物品を自走式クレーンとするものであり、その基本的構成態様は、機器収納ボックス(及びウインチ収納ボックスと連続して一体となった駆動機器フード)の配設位置を除き一致している。 そして、具体的構成態様においても、
(一) 下部走行体(下部走行フレーム)の後端部上方には、正面視において左 (車体前方)部分が前方に向かって傾斜する略変形五角形のエンジンボックスが搭載されていること。
対比(一致点)
(二) 上部旋回体の、
(1) 車体右側のキャビンは、正面視において下部走行体の略中央の位置にあっ て、横幅が下部走行体の横幅の略二分の一、正面視において長さが下部走行体の全 長の二分の一弱の平面視略横長方形の角張った箱体状で、背面視において右方(前 面)は上端部から前方に傾斜し、下方部で逆くの字形に屈折した形状となって、全 体が右方(前面)下部が前方に突出した横長変形六角形をなしており、周側の上部 には一連の方形状の大きな窓が設けられ、天井部の前方寄りにも方形状の大きな窓 が形成されていること。
対比(一致点)
(2) 車体左側の機器収納ボックスは、正面視において下部走行体の略中央の位 置にあって、高さがキャビンの略三分の一の前後に長い箱体状であること。
(3) キャビンと機器収納ボックスとの間のブームは、 その基端部がキャビンの側方の後方位置でエンジンボックスの前方斜め上の位置で 旋回フレームの基台から突設された正面視略直角三角形状のブーム支持フレームの 上端部に枢着され、収縮・収納状態では前下がりの状態でキャビンの下方側部を横 切り、先端部が下部走行体の先端より若干突出して下部走行体に近接した位置で終 わっており、正面視においてブーム中央部の下方の一部が機器収納ボックスに隠れていること。 以上の点が一致している。
対比(相違点)
(一) 本件意匠では、下部走行体のタイヤフェンダーは、正面視において略台形 状に折曲した板状で、タイヤフェンダーの間は、直方体の箱体状の部材あるいはス テップがあるのに対し、イ号意匠では、タイヤフェンダーは正面視において略円弧 状に曲げられた板状で、タイヤフェンダーの間はサイドフェンダーで覆われている こと。
(二) エンジンボックスに関して、 (1) 本件意匠のエンジンボックスでは、右側面視では縦長方形の角張った形状 で、空気出入口は網状となっているのに対し、イ号意匠では、右側面視では左右対 称に角がゆるやかに突出した六角形状でいずれも角に多少のアールを付し、後部の 空気出入口にはルーバーが嵌込まれていること。 (2) 本件意匠では、エンジンボックスの上面は機器収納ボックスの上面よりや や高くなっているのに対し、イ号意匠では、エンジンボックスの上面は機器収納ボ ックスの上面よりやや低くなっていること。
対比(相違点)
(三) 機器収納ボックスに関して、 (1) 本件意匠では、機器収納ボックスの前後の長さはキャビンのそれと略同じ 長さで正面視において上辺が下辺より右方(後方)に退いた略平行四辺形状である のに対し、イ号意匠では、機器収納ボックス前後の長さはキャビンの長さの二分の 一弱で正面視において上辺が下辺より右方(後方)へ退いた台形状となっており、 その後方にこれと連続するウインチ収納ボックスが続き一体として駆動機器フード を構成していること。 (2) 本件意匠では、機器収納ボックス及びブーム支持フレームの各後端部とエ ンジンボックスとの間には空間が形成されているのに対し、イ号意匠では、駆動機 器フードがブーム支持フレーム下方の後方からキャビンの後方に回り込んでいるの で、エンジンボックスの前面には空間が形成されていないこと。
対比(相違点)
(四) 本件意匠のブーム支持フレームの頂点(最後部)はキャビンの天井部とほ ぼ同じ高さに位置するのに対し、イ号意匠のブーム支持フレームの頂点(最後部) はキャビンの天井部より若干低く、右頂点には滑車が設けられていること。
(五) 本件意匠では、ブーム支持フレーム後端部に平面視において略台形状の分 厚いカウンターウェイトが配設されているのに対し、イ号意匠ではそれに該当する 形状は認められないこと。
(六) 本件意匠では、キャビンの後方略二分の一の部分に若干食い込むようにウ インチがブーム基部の上面に配設され、その分キャビンの幅が狭まっているのに対 し、イ号意匠ではウインチは外部から視認できず、平面視におけるキャビンの幅が 狭まっていないこと。 が認められる。
類否判断
右1に認定した本件意匠とイ号意匠の一致点によれば、イ号意匠は四に認定した本件意匠の要部である構成を具備しているものであり、そのことによって看者に 彼此混同を生じさせる共通の美感を与えるものであり、イ号意匠は本件意匠に類似すると認められる。
本件意匠とイ号意匠との間には、右2に認定したような相違点があるが、いずれも細部についてのものであり、その個々の相違点も、また、それらの相違点全てを 併せ考えても、前記共通の美感を左右するに足りるものではない。