第6回演習の解答までの思考方法
第6回演習の解答までの思考方法
法的三段論法を意識する。
大前提: 法律の条文(特定の要件事実があれば所定の法的効果が生まれる) 設問で大前提は特許法35条と第34条
小前提: 認定した事実関係の中の特定の事実が要件事実に該当(事実の認定と法解釈) 結 論: 事実関係が条文に定めた要件事実に該当するかの判断 法的効果の有無 本問では、
問1 (株)ツカモトは、このままでは、パック用シートAの販売ができなくなるのではないかと危惧している。(株)H&Sに対し、特許法上どのような対応をすることができるか?
問2 (株)H&Sの保湿剤が特許登録された時、(株)ツカモトは、(株)H&Sの新保湿剤をもはや、製造・販売できないか?
とのことなので、
1)塚本らが開発したパック用シートA
2)本田と鈴木が開発した新保湿剤
について、権利関係がどうあるべきかを検証する必要があることがわかる。
事実関係を条文に当てはめて考えにあたり、35条は職務発明についての規定であるから、これら、1)2)の発明が職務発明なのか否かを考える必要がある。
ついで、職務発明であるなら、その特許を受ける権利が誰に承継されるのかを、条文から判断する。35条3項の条件を満たせば、職務発明の特許を受ける権利は、原始的に使用者に帰属する。そうでなければ、発明者に帰属する。
職務発明の特許を受ける権利が原始的に使用者に帰属する場合、発明者の下にはもはや特許を受ける権利は存在しない。よって、当該発明者から職務発明の特許を受ける権利を譲り受けたと主張する者が特許出願したとしても34条1項による対抗はできず、その者の出願は冒認出願となってしまう。(なお、冒認出願であるか否かは特許庁側では不知なので、そのまま特許されてしまうことが多い)
一方、35条3項の条件を満たさず、職務発明の特許を受ける権利が、発明者に帰属したままである場合、特許を受ける権利が契約により使用者に譲渡されたとしても、その後、当該発明者から職務発明の特許を受ける権利を譲り受けたと主張する者が先に特許出願すると34条1項により、第3者である使用者に対し対抗要件を満たし、その者の出願が有効な出願となる。
多くの受講生は、
1)の塚本らの発明→本田&鈴木らの会社が出願=他人の発明を盗んだから冒認と判断し、
2)の本田&鈴木の発明→自分たちの発明を自分たちの作った会社で出願したから正当という思考だったのではないでしょうか?
1)の判断は冒認という結果論としては正解ですが、1)も2)の判断も法律を前提とした判断ではないですね。上記のように法的三段論法を踏まえて、順を追って判断すれば、自ずと答えが出て来ます。