知的財産法の学び方
大前提として、法律の基礎知識が必要です。 議論のもととなる条文には常にあたって、確認してください。
教材
1)「知っておきたい特許法―特許法から著作権法まで 工業所有権法研究グループ」
・・知的財産権法の全体像を短期間で把握することができます。
なお、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(令和3年12月24日政令第344号)についてはまだ反映されていないようです。
改正法情報
2)2024年度 知的財産権制度入門テキスト(特許庁)
3)不正競争防止法の概要(経産省)
概要テキスト
逐条解説 不正競争防止法(令和6年4月1日施行版)
4)著作権テキスト(令和6年)
著作権テキスト(令和3年)
個別の条文の趣旨等詳細を学ぶためにはこれが一番です。
7)判例や文献調査のためのツール等
特許庁・基準・便覧・ガイドライン(特許・意匠・商標等の審査基準等・・特許庁の産業財産権法の解釈基準がわかります)・・特許庁の解釈基準ということです。
8)学びの手順
まず、
8ー1)で知的財産法の全体像を理解した上で、特許法に定められた発明の保護方法の各手続き、制度を学びます。
8ー2)特許法の制度全体を理解した後に、意匠や商標の保護制度を学びます。特許法が「発明」を保護対象として法律が組み立てられているのに対し、意匠法や商標法も、基本的には手続きが似ているものの、保護対象が「意匠」・「商標」となっているため、保護対象の性質に応じた変更点があります。その変更点を意識すると、理解しやすくなります。実用新案法は、いわゆる発明の中でも小発明といわれる「実用新案」を保護対象とし、無審査主義としたため、それに応じた制度となっています。
(定義)第二条 この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
とされています。
上記2)の産業財産権法(特許・実用新案・意匠・商標法)での保護対象とならなり知的財産については、不正競争防止法や著作権法、種苗法、 半導体集積回路の回路配置に関する法律、地理的表示法 (特定農林水産物等の名称の保護に関する法律)などで保護されます。その中でも、不正競争防止法や著作権法は、産業財産権法と異なり、登録制度をとっていません。不正競争防止法は、個別の不法行為類型を法律で定め、それに該当する行為を不法行為と認定し、規制するものです。著作権や不正競争法上の利益については、他人が独自に創作したものには及ばない「相対的独占権」といわれています。 8ー4)従って、学びの順としては、産業財産権法を最初にして特許・実用新案・意匠・商標法から不正競争防止法・著作権法へという流れで学ぶことが第1に挙げられますが、その逆もありえます。特許の場合は、対象となる発明が技術をベースとしているため、理解しにくいということもあります。それに対し、著作権法は、「表現」を保護対象とするので、その限りでは理解しやすいとは思います。ただ、著作権法は、産業財産権法とは異なる法体系を持つため、まったく別個のものとして学習することになりましょう。成蹊大学の授業でも、産業財産権法と著作権法は別個の講座となっています。
8ー5)ただ、いずれの知的財産法も、その解釈方法においては同じであり、民法の解釈方法をベースに条文たよりに事実関係を把握して、法を適用していきます。その基礎的なことは、民法の授業で学んだと思いますが、民法の授業を担当されている塩澤一洋教授が新入生にあてたメッセージが、とても重要ですので、みなさんも初心に返って、一読してください。
問われるのは、事実関係から法律問題を読み取る力、条文をたよりに、どう解釈するか、それを法的三段論法を用いて表現する力です。