スナック・シャネル事件
スナック・シャネル事件
旧不正競争防止法一条一項二号に規定する「混同ヲ生ゼシムル行為」とは、他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と右他人とを同一営業主体として誤信させる行為のみならず、両者間に いわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表 示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為(以下「広義の混同惹起行為」という。)をも包含し、混同を生じさせる行為というためには 両者間に競争関係があることを要しないと解すべきことは、当審の判例とするところである(最高裁昭和五七年(オ)第六五八号同五八年一〇月七日第二小法廷判決)。
本件は、新法附則二条により新法二条一項一号、三条一項、四条が適用されるべ きものであるが、新法二条一項一号に規定する「混同を生じさせる行為」は、右判例が旧法一条一項二号の「混同ヲ生ゼシムル行為」について判示するのと同様、広義の混同惹起行為をも包含するものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、被上告人の営業の内容は、その種類、規模等におい て現にシャネル・グループの営む営業とは異なるものの、「シャネル」の表示の周知性が極めて高いこと、シャネル・グループの属するファッション関連業界の企業 においてもその経営が多角化する傾向にあること等、本件事実関係の下においては、 被上告営業表示の使用により、一般の消費者が、被上告人とシャネル・グループの 企業との間に緊密な営業上の関係又は同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信するおそれがあるものということができる。したがって、被上告 人が上告人の営業表示である「シャネル」と類似する被上告人営業表示を使用する行為は、新法二条一項一号に規定する「混同を生じさせる行為」に当たり、上告人の営業上の利益を侵害するものというべきである。
スナックシャネル事件