シラバス
テーマ・概要 知的財産権法
「アップルを作ったころ、知的財産を生み出せば成功できるとわかったんだ」とは、 かのスティーブ・ジョブズの言葉である(ウォルター・アイザックソン著「Steve Jobs」講談社(第30章p173))。この言葉通り、ステーブ・ジョブズ率いるアップルは21世紀を代表する企業となった。企業にとって、その成長・発展・維持をするために知的財産は極めて重要である。知的財産の保護奨励には、特許法をはじめとする工業所有権制度(産業財産権制度)が整備され、適切に運用される必要がある。そして、これらの理解は社会で軽座活動をする者にとって、必要不可欠となっている。しかし、保護対象となる発明、考案、意匠、商標、営業秘密等が、無体物であるが故に、法制度の理解は、なかなか実感が伴わない。
本講座では、長らく弁理士として産業財産権に携わってきた講師が、その実務経験に基づき、わかりやすい事例を紹介しつつ、特許法、実用新案法、意匠法、商標法及び不正競争防止法等に基づく知的財産の保護のあり方、紛争対応のあり方を、実感をもって理解できるように解説する。前期は、特許法を中心に説明するが、後期は意匠法、商標法及び不正競争防止法を中心に説明する。
到達目標
事例が示す具体的事実関係から、知的財産の保護の可能性の判断、紛争解決のための判断方法と、法的思考能力を身につける。具体的には知的財産法の基礎的知識を、実感できる形で習得する。社会に出たときに、起業するとき、あるいは、企業の技術戦略、知財法務に携わったとき、あるいは,知的財産権に関する紛争に直面したとき、適切な対応ができる程度の力を身に付けることができる。更に将来、弁理士資格・弁護士資格等を習得したい者にとっては、その基礎を習得することができる。
授業の計画
知的財産法 前期第1回
前期第1回 ガイダンス・オリエンテーション
模倣と創造と知的財産法制度について・・なぜ、人の活動,特に経済活動の中で観念される知的財産を保護しなければならない理由を、模倣と創造の関係という視点から、考察する。知識創造における模倣の役割を考え、知的財産権制度の歴史を通じて、法制度の必要性などを学ぶ。
webに掲載してある授業資料やテキストの該当箇所を事前に読んでおく。 60分〜90分
知的財産法 前期第2回
前期第2回 知財制度の全体観
(知的財産権法の保護対象と制度概要)模倣と創造の関係を学び、知的財産権法制度のあり方を考える。
・・知的財産は、人の活動により生まれたものである。人間以外の自然界の活動の成果自体は、発見の対象ではあるがそれ自体は人の活動の成果とはいえず、知的財産ではない。人の活動には、精神活動・創作活動、経済活動・文化活動などがあり、それらの成果として、創作の視点から、発明、考案、意匠、著作物、さらには、経済活動の視点から、営業上の価値情報や、業務上の信用がある。それらをどのように保護しているのかを学ぶ。 知財制度の必要性を考えてくる。民法の所有権で知的財産を守るとしたらどうなるか?
知的財産法 前期第3回
前期第3回 知的財産法の保護対象
知的財産法が保護すべき対象はどんなものがあるのかを事例をみつつ考える。
知的財産法 前期第4回
前期第4回 保護対象と法体系
特許・実用新案・意匠・商標法の各保護対象を比較し、保護対象の違いが法体系にどのように影響しているかを学ぶ 。
なお、この回までは、知的財産法全般についての講義とする。次回より、前期は特許法を中心に講義を行う。
知的財産法 前期第5回
前期第5回 発明の特許要件
産業上利用可能性・新規性・進歩性を中心に
知的財産法 前期第6回
前期第6回 発明の完成から出願まで・・・発明の完成とはどういうことか、誰が発明者となるのか、など、発明が完成してから出願までの間に生じる法的問題を検討する
知的財産法 前期第7回
前期第7回 特許を受ける権利と職務発明
知的財産法 前期第8回
前期第8回 特許出願とその手続き:特許明細書の記載要件、一発明一出願、 先願主義など、出願から権利消滅までに関することを学ぶ。
知的財産法 前期第9回
前期第9回 特許出願の審査手続き:特に審査結果に対する対応について
出願審査請求・早期審査・優先審査拒・絶理由通知・意見書・補正書不服申し立て制度について学ぶ
知的財産法 前期第10回
前期第10回 発明の保護と利用:特許法は、発明にどのような権利を付与して保護しているのか、補償金請求権・特許権の効力・効力の制限・実施権・消尽論・侵害に対する救済手段などを学ぶ。
知的財産法 前期第11回
前期第11回 特許権侵害(その1)
特許権の侵害とは何か、その判断基準と判断方法を学ぶ。
知的財産法 前期第12回
前期第12回 特許権侵害(その2)クレーム解釈論(特許請求の範囲・・権利の及ぶ範囲の解釈)
侵害の判断のための解釈論として、例えば均等論などを学ぶ 。
知的財産法 前期第13回
前期第13回 総括・・前期で学んだことの確認と補足
知的財産法 前期第14回
前期第14回 前期到達度確認テスト
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知的財産法 後期第1回
後期第1回 意匠法・商標法・不正競争防止法の概要、特に、特許法との差異を踏まえ、知的財産権法の全体像から考察する。
知的財産法 後期第2回
後期第2回 意匠法の保護対象と登録要件
知的財産法 後期第3回
後期第3回 商標法の保護対象と登録要件
知的財産法 後期第4回
後期第4回 意匠の登録要件(続き)・・意匠の類否判断
知的財産法 後期第5回
後期第5回 商標の登録要件(続き)・・商標の類否判断
知的財産法 後期第6回
後期第6回 商標の登録要件(続き)
知的財産法 後期第7回
後期第7回 意匠の出願形式・・意匠法上の特殊な制度
知的財産法 後期第8回
後期第8回 商標の出願形式・・商標法上の特殊な制度
知的財産法 後期第9回
後期第9回 不正競争防止法・・不正競争行為の類型と信用の保護(周知表示混同惹起行為・著名表示冒用行為)、商品形態の保護
知的財産法 後期第10回
後期第10回 意匠権の侵害
知的財産法 後期第11回
後期第11回 商標権の侵害
知的財産法 後期第12回
後期第12回 不正競争防止法による保護
知的財産法 後期第13回
後期第13回 知財法総括と事業における知財戦略 企業の経営戦略・事業戦略を考える上で、どのような知財をどのように使うのかを考え、それに関連する知的財産権法は何かを考える。
知的財産法 後期第14回
後期第14回 到達度確認テスト
授業の方法
授業は、法的思考法に基づき「考える」ことを重視する。そのため、毎回事例問題を出し、それについての発言を求める形でインタラクティブに授業を進める。毎回、新しいことを学ぶが、与えられた資料や情報に基づき、どのように問題解決をすべきかを各自で考える。そして、考えた結果を発言してもらう機会を作る。最後に、理解度を確認するため、小演習授業内で演習をしてもらい、CoursePowerのレポートで提出してもらう。
成績評価の方法
成績評価は、毎回提出してもらう小レポートよるオピニオン、小演習の回答内容等の評価と到達度確認テストの結果に基づく。自身の考えを発言した人、質問を積極的にした人には、その発言を評価対象として加点する。その他授業への貢献の程度を勘案した総合評価とする。
成績評価の基準
成蹊大学の成績評価基準(学則第39条)に準拠する。
必要な予備知識/先修科目/関連科目
必要な予備知識:一般法の基礎(特に、民法、民訴)
関連科目:著作権法、民事訴訟法(訴訟における攻撃防御方法)
テキスト
1)IP-Lecture 知的財産法講義 遠山勉 https://scrapbox.io/IP-Lecture/
2)『知っておきたい特許法(21訂)』工業所有権法研究グループ(株式会社朝陽会) 事前に読んでおくと、講義が理解しやすい
3)知的財産権法文集(授業で使います)
4IP-Law 知的財産法条文ネットワーク https://scrapbox.io/4IP-Law/
e-Gov法令検索で閲覧可 http://elaws.e-gov.go.jp/
4)工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕(特許庁HPで無償配布)(無料)
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/hourei/kakokai/cikujyoukaisetu.htm
参考書
1)『知的財産権法概論』(第3版)紋谷暢男、有斐閣
2)標準「特許法」(第6版)高林龍 有斐閣
3)特許判例百選 第4版 (別冊ジュリスト209号) 中山信弘他 有斐閣
4)新商標教室:弁理士小谷 武 LABO
5)意匠法コンメンタール(第2版)寒河江孝充他 LexisNexis
6)商標・意匠・不正競争判例百選-別冊ジュリスト No.188 大渕 哲也他 有斐閣
さらに深く学びたい方
標準「特許法」(第7版)高林龍 有斐閣
新商標教室:弁理士小谷 武 LABO