2020年知的財産法II第6回の演習
2020年の演習
株式会社ツカモトでの話(前回はここ)
発明を巡る攻防
パック用シートの完成後、本田と鈴木は、独自にパック用シートの研究を重ねた。
本田と鈴木が開発したのは、パック用シートに用いる保湿剤であり、塚本らが開発したパック用シートAに塗布して使うものであった。
この新保湿剤についても製品化する予定であったが、製造コストの関係で塚本らの反対に合い、従来の旧保湿剤で販売することになった。
本田と鈴木は、これを不服に思い。会社を退職し、新保湿剤を使ったパック用シートBを新会社H&Sで販売することとした。
もちろん、新保湿剤と、パック用シートBについてそれぞれ特許出願したことは言うまでもない。
塚本部長らは、慌ててパック用シートAについて株式会社ツカモト名義で特許出願をしたが、この出願は、新会社H&Sのパック用シートBの特許出願より、1週間遅れてしまっていた。
出願から1年6ヶ月後両者の出願が公開されると、(株)ツカモトの塚本部長は驚いた。
(株)H&Sのパック用シートBの特許出願は、その請求項1の内容が(株)ツカモトのパック用シートAの特許出願の請求項1の内容と同一だったからだ。
(株)ツカモトの特許出願
【請求項1】 美容用具として,不織布の引っ張り方向とする縦方向に鼻筋の方向を揃えて打ち抜いたフェイスマスク型パック用シートに,鼻翼の付け根から鼻尖を経て,もう片方の鼻翼付け根部分に,さらに眼の付け根に至り,もう片側の眼の付け根までを結ぶ線に囲まれるほぼ台形の領域に,縦方向もしくはやや斜め方向に「ハ」字状に走るミシン目状の切り込み線を複数列配したことを特徴とするパック用シート。
(株)H&Sの特許出願
(株)H&Sの特許出願1
【請求項1】 (株)ツカモトの特許出願の請求項1記載の構造とほぼ同一であった。
【請求項2】 薬剤AとBを混合してなる保湿剤を内側面に塗布した、請求項1に記載のパック用シート。
(株)H&Sの特許出願2
【請求項1】 薬剤AとBを混合してなる保湿剤。
https://gyazo.com/5da5876779dd7d562151db5bc9410cc3
問1 (株)ツカモトは、このままでは、パック用シートAの販売ができなくなるのではないかと危惧している。(株)H&Sに対し、特許法上どのような対応をすることができるか?
問2 (株)H&Sの保湿剤が特許登録された時、(株)ツカモトは、(株)H&Sの新保湿剤をもはや、製造・販売できないか?