「経験機械」についての疑問
discordに投稿したものの転記
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ある論文を読んでいたら、ロバート・ノージックの「経験機械」という思考実験について以下のような記述がありました。
こうしたストア派の議論を,現代の快楽説批判の代表的議論の一つ,ロバー ト・ノージックによる「経験機械(experience machine)」の思考実験にもとづく議論と比較してみよう.「経験機械」とは,実際には脳に電極を付けられタンクの中で漂っているだけの人に,好ましい経験をすべて与えるものとして仮想された機械のことである.ノージックは,ほとんどの人がこの「経験機械」につながれたいとは欲しないように思われると前提した上で,その理由を次のように説明している──「まず我々は、あれこれの事柄を行いたいと思うのであって,それらをしているという経験だけが欲しいのではない.......つながれようとはしない第二の理由は,我々が特定の形で存在し,特定の形の人格でありたいと思うからである.......機械内につながれるのは,一種の自殺である.......我々が望んでいるのはたぶん,現実に触れながら自分自身を生きる(能動的述語)ことなのである (Perhaps what we desire is to live (an active verb) ourselves, in contact with reality)」.
「」の引用部の出典は(Robert Nozick, Anarchy, State, and Utopia, New York, 1974 Nozick 1974, 43(ロバート・ノージック,嶋津格訳 『アナーキー・国家・ユートピア』 木鐸社,1995,68-69,訳文 は一部改変);cf. Robert Nozick, ‘Happiness’, in The Examined Life: Philosophical Meditations, New York, 1989, 99-117.) 上の文章中の「我々は、あれこれの事柄を行いたいと思うのであって,それらをしているという経験だけが欲しいのではない」ということの論拠としてノージックは何を挙げているのか、あるいは「あれこれの事柄を(実際に)行う」ということと、「それらをしているという経験だけが与えられる」ということをノージックはどのように区別しているのか、もしご存知の方がいたら教えていただけるとありがたいです。 これについて少し思ったことを書きますと
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この引用ではノージックが「ほとんどの人がこの「経験機械」につながれたいとは欲しないように思われると前提した」と書かれていますが、単純に「そうだろうか?」、つまり「経験機械」につながれたいという人もまあまあいるのではないか?、という気がします。
この「経験機械」では「脳に電極を付けられタンクの中で漂っているだけ……」のようなだいぶグロテスクな描写がされているので、そこに対する抵抗感はあるかもしれませんが、それはこの思考実験の本質ではないと思われるので、もっとファンタジー的な「ドラえもんの秘密道具」とか「夢」とかでもよいと思われます。
とすると、仮にこの「現実世界」を永遠に離れることになるとしても、好ましい経験が与えられる世界を選ぶ人もいるのではないか、という気はします。たとえば、(あまり詳しくは知らないのですが)なろう小説の「異世界転生」みたいな世界に(本気で)憧れる人は「経験機械」につながれることを選ぶのではないでしょうか。
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引用の「まず我々は、あれこれの事柄を行いたいと思うのであって,それらをしているという経験だけが欲しいのではない.」という箇所。たとえば、「何かのスポーツで世界一になる」とか「恋人と話す」みたいな一部の経験に関しては、確かに「経験機械」によって与えられる世界では意味がなく、「現実世界」でなければダメなのかもしれません(「特定の他者」と強く関わる経験は「現実世界」でなければダメだとすれば、単純に考えると、家族に愛着を持つ人は「経験機械」を選ばないのだろうか?)。が、そうではなく「それらをしているという経験だけ」で満足するような経験も多くあるように思います。(上で質問したように、そもそも両者がどのように区別されているのかわからないので難しいですが)
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上の引用部では「ほとんどの人がこの「経験機械」につながれたいとは欲しないように思われると前提した」と書かれていますが、言わんとするところは、「「経験機械」につながれたいと欲しない人が少なからずいる」ということなのだろうか?とも思いました。つまり、「経験機械」につながれれば、好ましい経験がえられる「にも関わらず」、少なくない人がそれを選ばないで「現実世界」を選ぶ、その理由は……のような筋運びであれば自分の違和感は多少解消される気がします。
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ramen.iconこの論文に上と同様の疑問が述べられていた(気がする)。色々と参考になりそう