都心から通える森林のサブスク!? “山のシェア”という新発想! 5つの魅力をご紹介
2022/08/01
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メイン画像:メインとなる「KIKORI FIELD」は森林作業道をハイキングトレイルとして利用できる。会員専用の「森のラウンジ」(写真)も。
本物のアウトドアを体験人が集うことで山を活かす
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甲州古道に面する雑木林を活用した「SENGEN FIELD」。近くにハイキングコースもある。
通常のキャンプ場と大きく違うのは、4ケ所のうち3つが水場や電気などのインフラがない点。トイレも「風の縄文トイレ」と呼ばれる、微生物の力で自然に還すユニークな方法を採用。不便を創意工夫で楽しむ、本物のアウトドアが体験できる。 https://gyazo.com/f9d64d11ff0cc6d4601bbdde31e9ac38
唯一、電気、水道、水洗トイレ、シャワーを完備した「MOKKI BASE CAMP」。
もうひとつの特徴は、東京チェンソーズが整備を行う、FSC®認証の森に滞在できること。フィールドの1つは彼らの仕事場でもあり、林業の現場とFSC®認証の森を実際に目にできるのも国内では貴重だ。 https://gyazo.com/e91344d2e5dd362463708935f9e8890f
北秋川の源流に位置する「FUJIKURA FIELD」。プライベートリバー感覚で川遊びが楽しめる。
利用は会員限定、年会費を払えば事前予約でいつでもフィールドが使える。さらに一年を通して会員プログラム(無料※一部有料)が設けられ、親子で参加できるイベントのほか、アウトドアや山仕事の技術が学べる。森の間伐材を利用して薪割りや焚き火、ブッシュクラフトが楽しめるのも魅力的だ。
東京チェンソーズの代表取締役でモッキノモリの共同代表の青木亮輔さんはこう語る。「人が集うことで、山がどんどん良くなる仕組みをつくりたかった」。
採算の取れない森林をサブスク(定額制)のアウトドアフィールドで活用し、森林サービス産業としての新しい価値を見出す。 MOKKI NO MORIのいいトコロ!
風の縄文トイレ
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土中の環境整備などを手掛ける「大地の再生」と制作した屋外のトイレ。臭いがまったく気にならない!
火事対策が大事
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「アウトドアでいちばん気を付けたいのが火事」と青木さん。フィールドごとに防災用具が用意される。
キコリワークショップ
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モッキノモリの会員向けの年間イベントで開催されるキコリワークショップ。冬はキノコのほだ木づくりなど。
ブッシュクラフトも
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灌木が多い「SENGEN FIELD」はブッシュクラフトを楽しみたいソロキャンパーにおすすめ。
通える距離
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都心から1時間強の地の利を活かし、映画や美術館に足を運ぶ感覚で定期的に通える。
DATA
MOKKI NO MORI(モッキノモリ)MOKKIは北欧で「自然に帰る小屋」の意味。
東京都西多摩郡檜原村本宿697
会員費:
●シングル会員:110,000円/年(税込)
●ファミリー会員:132,000円/年(税込)
山をシェアするという発想はどこから?
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「MOKKI NO MORI」は、林業家が整備した森の会員制アウトドア森林フィールド。新しい森林サービス“山のシェア”とは一体? 檜原村移住組でモッキノモリ共同代表の3人に、話をうかがった。
サブスクの森林サービス産業!?
檜原村移住組3人のスペシャリスト= MOKKI NO MORI の共同代表!
デザインディレクター 清田直博さん
福岡県生まれ。クリエイティブの現場で経験を積む傍ら、ファーマーズマーケットの運営に関わるなかで農業に興味を持ち、2016年に檜原村に移住。山間地で持続可能な農業の在り方を探るため、仲間と「檜原村新農業組合」を組織。農業体験やワークショップ、商品開発を行っている。
自然体験イベンター 渡部(わたなべ)由佳さん
自然体験イベントを企画するOSOTOの代表取締役社長兼カメラマン。行政書士として監査法人の法務コンサルタントを経て、現職に。「我が子にさせたい自然体験とは?」をテーマにプログラムを手がける。親子向けイベント「地球の学校」のほか、リスク管理のコンサル経験を活かし、危機管理のマニュアル作りを担当。
林業家 青木亮輔さん
東京チェンソーズの代表取締役。東京農業大学林学科卒後、1年間の会社勤めの後、「地下足袋を履いた仕事がしたい」と、林業の世界へ。檜原村木材産業協同組合代表理事。檜原村林業研究グループ「やまびこ会」役員、TOKYO WOOD普及協会専務理事など、さまざまな分野で活躍する。
山・森をシェアする仕組みづくり
――プロジェクトのきっかけは何ですか?
渡部 畑を共有するシェア畑が流行っているけど、シェア森やシェア山はない。それならそういう仕組みを作ろうというのが発端。
青木 国内に「山をシェアする」という施設がほとんどなく、立ち上げ時は、仕組みづくりがいちばん大変でした。
渡部 最初は山を区画して年間の賃貸契約をする計画でしたが、いざ蓋をあけたら急斜面だらけで区画できない(笑)。
青木 檜原村は急峻な山がほとんど。逆に言えば、檜原村で作れるなら全国どこでもできると思います。
渡部 そもそも私は、ここでコミュニティづくりをしたくて。地元でもない、会社でもない、週末に帰る集落みたいのもの、いわゆるサードプレイスです。いっその事、区画しなければ交流が生まれやすいのではと思い、区画せずにみんなで山全体をシェアする会員制にしようと。
――会員の方はどんな方が多いですか?
渡部 40〜50代のファミリーです。アウトドア初心者の方も多いですよ。私のママ友の会員さんは、家族と週末を過ごすことを目的で入会しました。
青木 当初は玄人しか来ないと思っていた(笑)。間口が狭まらないように、清田さんにバランスよくデザインしてもらって。
清田 当初から「キャンプ場」ではなく「会員制のアウトドア森林フィールド」にしようと決めていたよね。
意外とクールな利用者 森に通うことで、自分ごとに
――たしかに「風の縄文トイレ」や「年会費一括払い」は会員さんの覚悟が必要です。
渡部 だからこそ「私たちは1年間ここに通う」と腹を決め、冬でも来てくれる。年会費という設定でよかったです。
青木 “金曜に山に入って日曜に帰る”利用を想定しましたが、実際には連泊組が少なく、焚き火して3時間ほどで帰るデイキャンパーが多い。その方が楽だとか。
渡部 想定外でしたね。会員さんは私たちが考えているよりも使い方がクール。
――デイキャンだと初心者でも気軽で、通えば通うほどお得になる。コンセプトの「人が入ることでどんどん山が美しくなる」につながりますね。
青木 一般の人が定期的に森に通える仕組みを作ることが、森林サービス産業の大切な点だと思います。単発のイベントより、こうした山のサブスクの方が事業として成り立ちます。
渡部 林業のイベントはたくさんあるけど、森や山を“自分ごと”として感じてもらうには、継続的に通わないと分からない。
青木 現代人は山のつきあい方が分からない人が多い。ルールを明確化した山や森で過ごす人が増えれば、山がみんなの共有財産だった時代に戻れると思うな。
渡部 そもそも「山のシェア」は新しいというよりも、戦前の日本に戻る感覚だよね。
清田 シェフが農場を訪ねるように、ものづくりをしている人が森や山に足を運べる、学びの場にもなってほしい。
青木 オープンして半年、企業の福利厚生としての問い合せや山主さんからのオファーも来ています。
清田 山のシェアをやってみたい全国の事業体の方も、気軽にご相談してほしいですね!
取材・文:後藤あや子
写真:村岡栄治
▶ 長く続けていく森林活用のヒケツ
「森に通う」仕組みづくりをする。人が継続して山林に入ることで山を身近に感じ、美しく保つことができる。便利にしすぎない場所づくりも大事。