Memo:ドイツとスイスとイギリスとアメリカの企業
ドイツとスイス、イギリス、アメリカの化学企業は、それぞれ表向きは戦争関係にありながらも、裏ではお互いに便宜を図り合ってともに利益をあげていた。
イギリス企業がドイツ企業に合成ガソリンを供給したおかげで、ドイツ軍は無事にロンドンを爆撃できた。
IGファルベン(ドイツ企業)とスタンダード石油(アメリカ企業)は合成ゴムで協定を結ぶ。 アメリカ企業が石油をドイツ企業に提供して戦争を助けた。
イギリス政府が反キャンペーンとして「スタンダード石油がナチスを援助している、国賊だ」とキャンペーンを展開。スタンダード石油は追いこまれたが、米国政府はスタンダード石油を守るために、あるていどでバッシングを引かせた。
ナチ政府とスイス銀行は蜜月にあり、終戦ぎりぎりまでスイス銀行はドイツ政府を援助した。
もちろんスイスは表向きは永世中立国となっているが、スイス銀行はナチがユダヤ人から強奪した金塊を大量に預かっていた。
表向きのイデオロギー対立と、裏向きの経済的な癒着。この構造は『重力の虹』の基礎のひとつとなっている。
「戦時にあれだけ大量の死者数が出ることは、いくつもの意味で便利であって、ひとつには壮大な見世物を提供して、<戦争>の現実の動きから人びとの目を逸してくれる。…最大の利点は、大量死が一般人への、そこらの人たちへの刺激になって、まだ生きてそれらを貪れるうちに<パイ>のひと切れをつかみ取ろうという行動に走らせるところ。市場の祝祭、これが戦争のほんとうの姿なのだ。」
参考:フォルカー・コープ『ナチス・ドイツ、IGファルベン、そしてスイス銀行』創土社、2010年。