ミーム
ドーキンスRichard Dawkins(1941― )によって、遺伝子geneの対概念として命名された概念。『利己的な遺伝子』The Selfish Gene(原著初版1976/翻訳版1991・紀伊國屋書店)で提唱された。遺伝子は体をつくるが、ミームmemeは文化をつくる。そして遺伝子と同じように淘汰 (とうた) によって次の世代へと引き継がれていく。ドーキンスは生物学における物理法則に匹敵するような普遍的法則として、「全ての生物は自己複製を行う実体の生存率の差に基づいて進化する」という原理を提唱している。ミームというのはドーキンスの造語であるが、この自己複製あるいは模倣の単位をさすギリシア語「mimeme」を「gene」と対になるように縮めたとしている。
ミームは比喩 (ひゆ) ではなく遺伝子と同じく実体である。実際の生物進化においても教育(文化の伝承)が体と同様に重要である例がいくつか示されている。たとえば、一部の鳥類の鳴き声、動物による狩りなどは遺伝子に書かれた情報ではなく、親から子への教育の結果であることが示されている。また、人間のもつ文化、とくに言語とそれによって語り継がれる物語、宗教などもミームである。