『Works Report 2025|マネジメントを編み直す』
マネジメントを編みなおす - reweaving-management.pdf
https://www.works-i.com/research/report/item/reweaving-management.pdf
Highlights & Notes
成熟した組織では構造的な慣性が働くため、同じやり方を繰り返す方が、目前の成果を 生み出すことへの不確実性が下がるため合理的行動になります。しかし、その結果、環 境変化を認知することが難しくなるのです。
経営戦略を構築するには、外部環境で起きている変化を社内の文脈の中で意味を構築 できる能力を組織的に構築することが求められます。
以 上のように、マネジャーの 仕事は、組 織内部の 変化と外部環境の変化という2つの要因により、ま す ます 複 雑化している。多くの 企 業 では 、対 症 療 法 的 に 組 織 内部 の 変化 に注目し、業 務を他 の人 に 割 り 振 る 、業 務 量を 削 減 する とい った 対 応 を 取っている。しかし、外部環境の変化に目を向ける と、企業 組 織において現場に最も近いファーストラ インマネジャーだけが、現在の事業課題を解決し、 新たな事業を生み出すうえでこれまで以上に重要 な役割を担う存在であることがわかる。
組 織 に おける、「機 能 」と「役 割」は似て いるよう に 思 えるが、それ ぞれ が 指 す 内 容 に は 明 確 な 違 いがある。 「機 能 」は 、組 織 全 体 の中 で果 たして い る 構 造 的・制 度 的 な 働 きを指 す。例 え ば 、現 場で の 課 題 を取り込む、情 報 の 流 通を円滑 にする、チ ームの モ チベーションを維 持 するなど、組 織 運営に不 可 欠な要 素として位置 づけられ る。「機 能 」は 、組 織 全 体 の 仕 組みや 戦 略 の 一 部として 設 計され るも の であり、「組 織 の目的 をどう達 成 するか」という 視 点から捉えられ る。 一方、「役 割」とは 、機 能をベースに決 められ 、社 会 的 ま たは 組 織 的 な 期 待 に 結 びつけら れ ること が 多 い。組 織 全 体 の 機 能 が 決 まり、そ れ を前 提 に、それ ぞれ のポジ ションの人 に期 待 され る 行 動 や 責任 の 範 囲を指 す 概 念 であ る。具 体 的 にマネ ジャーを例にと れ ば 、チ ームの目標 達 成をサポー トする、メンバーの育成をおこなう、業 務 の 進 捗を 管 理するなど、マネジャーとして果 たすべき仕事が 挙げられ る。この「役割」は、組 織にとって必要な
経営学における「マネジメント」は、特 定の要素に 分割され 研究され ることが 多く、リーダーシップや 意思決定に焦点を当てる試みは盛んである。一方 で、実務におけるマネジメントは、複 数の要素が 複 雑に絡み合った存 在として認識され 、学 術的な 理 論 が 実 務 に適 用しづらい状況 がある。この ギャッ プ は 、経営学が 標 準 化や再 現性を追求 する一方 で、実務では直感や経験に基づく「職人芸的」なア プローチが求められることから生じる。
「指 揮・命 令」で は 、プ ロダクト 型(管 理 型)がトップダ ウンの 指 示 命 令系 統 であるの に対し、プ ロジェクト 型で はチ ーム同士が 共 通のビジョンや目標を持ち、意 見 交 換 が 活発 に おこな わ れ る 環 境 づくりが 重 要 となる。「調 整 」では、プ ロダクト型(管 理 型)は、上 か ら の 調 整 に なる が 、プ ロ ジェクト 型 で は 、メン バー間 で共 有され た目標 に沿 って 調 整 する。「統 制」についても、プ ロダクト 型(管 理 型 )は 基 準 か ら の 逸 脱を チェックし、安 定した 運 営 を重 視 する が、プ ロジェクト 型では 、権 限を委 譲し、個 人の自 発 性を引き出すことで、より機 動 的な 意 思決 定が おこなえるようにすることが求められ る。
- 構造ではなくプロセスでなんとかしようとすると、こういう抽象の価値基準が必要になる
。2023年4月から、丸 井グループでは一部の部署で「課長のいない組織」=「チーム制」を試験的に導入した ※ 。これ により、課長を組織の長という位置づけから、チームのサポーターとして一人ひとりに寄りそう 体制に変更し、自律自走する組織づくりに挑戦している。
フ ァーストライ ンのマネジャ ーだ か ら こそ重 視さ れ る の は 、現 場 の 課 題を仕 入 れ 、そ の 課 題を 適 切に見立て、事業の見直しに反映することである。 これ により、事 業 戦略を現 実に即したものとし、組 織 の 持 続 的成 長を促すことが で きる。しかし、組 織 運 営 に は 、メンバー が 望 む 多 様 な 働 き方へ の 対応、日々発 生する問題をすみやかに解 決するこ と、担 当部 署で のコン プライ アンスや 労 務 管 理 な ど、必 要では あるが、課 題の 仕入れ に注 力すべき マネジャ ーが 担わ なくてもよい 役 割が 存 在 する。 では、これらの業務は誰が 担うべきなのか。 企 業 の 事 例 を 見て み る と 、こうし た役 割 を「係 活 動」として 整 理し、手を挙 げた 人 が そ の 係を担 う 仕 組 みを導入して い る。例 え ば 、ナ レ ッ ジ 共 有 を 推 進 する 役 割 であ れ ば 「 学 習 係 」 として 運 営 し、関 心 のあるメンバーが主体 的 に参加 で きるよ う に す る 。こ の よ う に 、フ ァ ース ト ラ イ ン の マ ネ ジャ ー が 本 来 の 業 務 に 集 中 で きる よう、組 織 全 体 で 役 割分担を最 適化 する動きが 進 んでいる。 さら に 、こうした係 活 動 が 有 効 に 機 能 するた め に は 、ゆめ み の 事 例 にも見ら れ るように 、専 門 家 の バック アッ プ 体 制 を 整 える こ と が 不 可欠 であ る 。例 え ば 、人 事 部 門 が 教 育 係 を 支 援 し 、メ ン バー が 適 切 な 研 修 プ ログ ラムを活 用 で きる よう にする、ま た は 経 営企 画 部が 業 務 改 善 係 と 連 携 し 、組 織 全 体 の 業 務 改 革を支 援 する とい った体 制 が 考えら れ る。このように 、専 門 家の 知 見を活 か し な が ら 、フ ァ ーストラ イ ン に い るマネジャ ーだ け が 担う べ き で な い 業 務 を 分 散 する こ と で、組 織 の 運営 効 率が向上する。
今後、企 業が 持続的に成長するには、事 業 戦略 と 組 織 戦 略を連 携させ、適 応力のあるマネジメン トの機 能を構 築することが 不可欠 である。機 能の 再 設 計で は 、課や チ ームの 編 成を部 長 が主導す ることが求められ るが、組 織 デザインの 視 点が 十 分でないことも多く、従 来型のマネジメントが 踏 襲 されてしまう。マネジメントの 編み なおしには、組 織 を理 解し、企 業 文化を熟 知し、事 業の方向性を踏 ま え たうえで、最 適な 組 織 デザインを提 案 で きる 人 材 が 求 めら れ る。フ ァーストライ ンの 機 能 は 柔 軟 に見 直され る こ と が 望 まし く、組 織 デ ザイ ン は 極 めて 重 要 なリテ ラシーであ る。このスキル が 不 足していると、企 業 の 適 応力が 損なわれ るケース も少なくない。
マネジメントを 編 み な お すと は 、隙 の な い 組 織 図をつくり各自の 仕事を個 業化させることではな い。各自が 独 立して 業 務を 遂 行 する の で は な く、 連 携しながら課 題を解 決できる仕 組みをつくるこ とが 本質となる。そ のため に は 、トップダ ウン で 決 定 され た 組 織 構 造を 適 用 する の で は な く、現 場 の声 を反 映 し な が ら対 話 的 な プ ロセ スを 通じ て 最 適な形を模 索していくことが 不可欠だ。
つまり、特 定のマネジャ ー のスキル不足 が 問 題なので は なく、そういう状 況 にさせ て いるものは何なのか、異 なる 視 点を持 った 人々と一 緒 に考える必 要があるというこ と だ 。上司、部 下、経 営 者、他 部 署メンバー が見て い る景 色や 大 切 にして い る 視 点 は 、それ ぞれ まったく異 なって い るか もし れ な い。マネジメントが うまく機 能 せ ず、問 題 が 起 き て い る としたら 、そ れ ぞ れ の 異 なる 視 点を 持 ち 寄 り、「そ うさ せ て い る 構 造 」を共 有し、解 決 策を一 緒 に考えることに よってしか、起 こって いる問 題を解 決す ることはで きない のだ。
- 「そうさせている」というのはナラティブっぽい視点
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#2025/08/21
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