『Works Report 2025|シン・健康確保』
シン・健康確保 - workers-health_2.pdf
https://www.works-i.com/research/report/item/workers-health_2.pdf
Highlights & Notes
新しい時代の「シン・健康確保」では、いわゆる「平均的労働者」を基準とした一律的な健康 管理の時代は終わりを迎え、個々のニーズに応じたテイラーメイド型の健康確保が求められる 時代が到来する。「シン・健康確保」は、人が制度に合わせるのではなく、人が制度を選択する 時代であり、そこでは、 が健康を守り、人生を支えるために必要な視点である。
健康とは何か」という問いに対して、よく引用されるのが W HO憲章における「肉体的、精神 的及び社会的に完全に良好な状態」という定義である。しかし、この理想的な状態を現 実に 全ての人が実現するのは難しい。健康であることの重要性を否定する者はいないが、健康で あることを目的化してしまうと、働くことが不自由になってしまう恐れがある。
く人は、「健康は単なる目的ではなく、自己実現や幸福を追求するための基盤」という意 識を持つべきである。さらに、仕事のやりがいや仕事へのコミットメントといったワークエンゲー ジメントも、健康に包含される。そう考えると、健康とは多義的な概念であり、そのうちどの側面 を重視するかは、個人の価値観やライフステージによって異なってくるものである。そのため、 健康支援は個々のニーズに合わせ、多様性と柔軟性を持つことが求められることとなる。 働く人にとっての健康とは、「病気ではない」(狭義の健康)という状態だけを意味するもの ではなく、悩みを抱えながらも可能性を広げ、主体的に生きられるという意味(広義の健康)を 併せ持つものである
労働者の健康管理の在り方について、「今後は労働者本人へ主体が移り、企業は啓発などを通じたサ ポート役に回るのではないか」と予想する。産業医も企業に紐づくのではなく、労働者が個人で利用 する形になれば、フリーランスの働き手なども等しくアクセスできるとしている。
ウェアラブルデバイスなどの進歩に伴い、従業員が言わば「24時間健康診断を受けている」といった状 態が実現する可能性もある。それによって過労やメンタルヘルスの異常を早期検知し、直接労働者に介 入できるようになれば、労働時間を管理し上限を設けるという法規制の在り方も変わるかもしれない。 「こうした場合、従業員の健康管理責任を企業に課すのではなく、従業員自らが健康をマネジメントし 企業がそれを支援する形へと、産業保健制度の枠組みを変えることも検討すべきでしょう
企業規模や雇用形態による健康格差の解消を進めるためには、従来の「職域」と「地域」を 分ける考え方から脱皮する必要があり、働く人個人を起点として考え、職 域と地域の連携を 図ること、関連するステークホルダーを結集した対応を行うことが必要となる。
- ジョブエンベデッドネスに通じる考え方
長い職 業人生にわたって望む働き方やキャリアを実現するためには、健康であることが 不 可欠である。この考え方を健康確保への取り組みに組み込んでいかなければ、健康確保の ためのどのような対応も効果を発揮しない。働く人が積極的に健康確保行動を取るような方 策が必要であり、そのためには、個人が大切にする価値観(誘意性)とそれを達成するための 具体的な手段(道具性)を明確にすることが重要である。
- 誘意性と道具性
企業の責任において「労働者」を保護するという法制を前提とすると、雇用されている「労働 者」と、そうではない「非労働者」とで、法制度の適用に差が生じる。さらに、「労働者」の間でも 企業の行う健 康確保の支援に差があることなどから、「労働者」を優先課 題とすることの必 要性は認識するが、労働力の 供給が減少していく中で、働く人の基 礎となる健 康を、「労働 者」と「非労働者」で分けて考えることは、納得感がなく、妥当ではない。 健康確保の対象を「『雇用契約』を結んでいる人」と「そうではない人」で分けず、「『働く』契 約を結んでいる人」全てとするような発想の転換が必要である。
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#2025/06/10
https://www.works-i.com/research/report/workers_health.html