『きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」田内学』
# きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」【読者が選ぶビジネス書グランプリ2024 総合グランプリ「第1位」受賞作】
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- Title: きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」【読者が選ぶビジネス書グランプリ2024 総合グランプリ「第1位」受賞作】
- Author: 田内 学
- Book URL: https://www.amazon.co.jp/dp/B0CG5PLGFN
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- Last Updated on: 2025年3月5日 水曜日
### Highlights & Notes
僕は、お金がえらいとは思わへんで。道徳の話やなくて、感情を省いて冷静に考えた結論や。
つまり、必ず誰かが働いているってことなんや。自動販売機 にしても、ネット 通販 にしても、今は、労働が見えないことがほとんどやからな。せやけど、お金を払う限りは、誰かに問題解決をお願いしているんや。
お金を払うというのは、自分で解決できない問題を他人にパスしているだけなんや。しかし、僕らはお金を払うことで解決できた気になってしまう。
「ハイパーインフレで失敗する国は、生産力の不足をお金という紙切れで 穴埋めできると 勘違いした国や。しかし、お金が直接パンに化けるわけやない。自然の恵みや働く人たちがおって、生産力があるから作れるんや。ジンバブエの生活が苦しくなったのは、お金が増えすぎたからやない。物が作れない状況にあったからや」
「大事なのは、今言うてくれたように、GDPは『とりあえず』の数字でしかないってことや。本来の目的を忘れたらあかん」
「個人の視点では、パンにありつくためには、お金を貯めることには意味があるで。せやけど、全体で考えると、みんなでお金を貯めても何の解決にもならんのや」
「僕もほんまにそう思うわ。少子化によって働く人の割合が減るってことは、イスが減るということや。その一方で、高齢者は増えるから、 介護 職 の数を今後 20 年で 3 割増やさんとあかんと言われている。仮に、増やせたとしても、他の仕事をする人の数が減る。他の分野で物やサービスが足りなくなるんや」
「僕らは、未来のためにイスを作らんとあかんのや」  ボスのよく使う「僕ら」という言葉に、優斗自身も含まれていると改めて実感した。 他人事 ではなく、自分たちで解決していかないといけない。
「でも、納得じゃない? そういう人だから、社会全体の視点でお金を見られるのよ。逆に、私たちは個人の視点でしか見てないから、その延長で社会全体をとらえちゃうのよね。それで、社会全体でもお金を貯めればいいんだって思っちゃったのよ」
金利の話には、彼女も衝撃を受けたようだ。金融の世界では、財布から財布にお金が移動するという発想は少なく、自分の財布だけを見つめて、お金は増えるものだと考えるらしい。
「アフリカにもこうした蓄積が必要なんすよ。学校に行ける子も病院に行ける子も一部なんすよ。設備も制度も不十分ですし。日本で生活の豊かさの話になると、給料が増えないとか、すぐお金の話になりますけど、違和感あるんすよね」
「生活の豊かさは、 1 人ひとりにとっての価値の話や。価値と値段は、区別せんとあか
「それは値段の話やな。どら焼きを売るお店にとっては、間違いなく 200 円の価値がある。そのお金が手に入るからや。ところが、優斗くんは売る人やなくて食べる人や。君がどら焼きを食べて手に入れたのは幸せや。それが価値や」
「みんなが便利やと思う土地は、みんなが欲しがるから結果的に値段は上がる。せやけど、その逆は成り立たへん。土地の値段だけ上がっても便利にならへんし、値段が下がったからといって、急に不便になるわけやない」
「それは当然の反応やな。家族の中でお金はとらへん。仮にお金をとっても、家族全体のお金は増えへん。家族という集団の幸せのためには、高く売ることよりも、おいしいトンカツを作ることが大事や。これが外側と内側の違いや。土地の場合も同じなんや」
「そうなんや。日本にとって高い値段になってうれしいのは、外側にある外国に売るときだけや。 1800 兆円のものが 2500 兆円で売れたら、 700 兆円多く手に入る。せやけど、そんなことしたら自分たちが住むところがなくなってしまうんや」
未来の幸せにつながる社会の蓄積を増やすこと
「お金を増やすこと自体を目的にすると、ただの奪い合いになる。共有することはでけへん。僕らが確実に共有するのは未来なんや」
「私たちは、少子化で働く人が少なくなる未来を共有しているわけですね。 1 人ひとりがお金を増やすことよりも、少ない人数で効率よく仕事を回せるようにしたり、子どもを育てやすい社会にすることを考えないといけないですね」
投資によってできるのは、あくまでも未来の提案でしかなく、その中からどの未来を選ぶのかは、消費をするみんなの価値観に 委ねられている。
「問題なのは、『社会が悪い』と思うことや。社会という悪の組織のせいにして、自分がその社会を作っていることを忘れていることが、いちばんタチが悪い」
「公務員の給料や公共事業に払われるお金も格差を減らすんや。たとえば、警察官が十分いるから、みんな安心して暮らせる。治安の悪い外国やったら、ボディガードを雇えるお金持ちしか、身の安全を守られへんところもある」  他にも図書館や公園や道路などの公共施設は誰もが等しく利用できるし、公共サービスによって得られる生活の豊かさには格差がないとボスは説明してくれた。
「政府の支出には、消費による投票が行われへん。みんなが使わへん公共施設や公共サービスが残り続ける可能性があるんや」
預金とは、お金を保管してもらうことではなく、お金を銀行に貸すことだそうだ。銀行は預金者からお金を借りていて、そのお金をさらに誰かに貸している。  以前も彼が話していたように、お金は移動するだけで増えも減りもしない。預金の増加は、お金自体の増加ではなく、お金の貸し借りの増加を表している。
優斗の国では、トンカツが輸出品で、輸入しているのは服や電気などの生活 必需品。トンカツがたくさん売れて貿易黒字になれば、この国のお金は貯まっていく。お金が貯まるということは、外国のためにしっかり働いているということだ。将来世代は、そのお金を使って、外国に働いてもらえるとボスは説明してくれた。
「経済がこれほど発展したのは贈与のおかげや。僕らは、お金と商品を交換したり、お金と労働を交換していると思っている。せやけど、実は全部が贈与や。お金に惑わされたおかげで、贈与が交換に見えるようになったんや」
「世界は贈与でできているんや。自分から他人、他人から自分への贈与であり、過去から現在、現在から未来へと続く贈与なんや。その結果、僕らは支え合って生きていけるし、より良い未来を作れる。それを補っているのがお金やと僕は位置づけている」
「よし。次回までに 1 つ宿題や。君らは、 誰のために働くのか。それを考えてきてほしい。これは、誰の幸せを願うのかという質問でもある」
以前、お金というシステムを取り入れたことで社会は広がったと話したが、半分は 噓 や。たしかに、貨幣経済が発展して世界中の人たちと物を売り買いするようになった。支え合う社会が広がった。  しかし、そこには仲間意識のような実感は伴わない。支え合っていると実感できる〝ぼくたち〟の 範囲 は逆にせまくなったように感じる。自分が、世界というだだっ広い社会の一員だと感じることは難しい。僕が子どものころのほうが、〝ぼくたち〟の範囲は広かったと思う。
しかし、今みたいに、不平を言う人はおらんかった。不満をもらしても、解決できるわけやない。自分たちの手足を動かして助け合うしかない。それでもだめなら、がまんするしかなかった。  社会に 手触りがあったとでも言うんやろうか。みんなが助け合っていることが 直に感じられた。
もうからないと会社は存続できないが、もうけること自体を目的にしたら会社は長続きしない。会社が長続きできるのは、社会の役に立っているからや。その結果として、もうけることができる。そういう会社に人もお金も集まる。
〝ぼくたち〟の範囲がせまくて、おばちゃんが外側にいる赤の他人やと思えば、二百円で手に入れたと感じる。つまり、お金がすべてを解決したという感覚になる。しかし、〝ぼくたち〟の範囲が広がって、おばちゃんをその内側にいる仲間やと思えれば、おばちゃんが作ってくれたと感じる。  この〝ぼくたち〟の範囲は、知り合いかどうかではなくて、僕らの意識次第や。お金の奴隷になっている人ほど、この範囲はせまくなって、家族くらいしか入らへん。いや、家族も入らない人もいるやろうな。  そうなると、自分の生活を支えるのは、お金やと思ってしまう。知り合いの店だろうとどこだろうと、働いてくれた人のおかげだなんて思えない。社会を〝ぼくたち〟の外側に感じて、すべてが 他人事 になり、お金を増やすことしか考えなくなるんや。
じゃあどうすれば、意識が変わって〝ぼくたち〟が広がるんやろうか?  僕が思うに、 1 つは目的を共有することやと思う。
災害で世の中のしくみが変わったわけやない。ただ、僕らの意識が変わっただけや。
そして、 愛する人を守ろうと思うと、社会が 他人事 でなくなる。自分だけなら自分の周りのことだけ気にかければいい。ところが、愛する人はいつも自分のそばにいるわけやない。自分と離れて暮らすかもしれないし、自分が先に死ぬかもしれない。そうなると、その人を守るためには、社会が良くなることを願う。〝ぼくたち〟の範囲が広がるんや。
同じ言語を話さない人、異なる宗教を 信仰 する人、出会ったら 憎み合うかもしれない人が協力して作っている。お金を使った経済によって、人々の間に調和と平和が 促進 されていると彼は言っているんや。
「私、思うんだけどね。愛って、常に時差があって届くんじゃないかな」
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#2025/03/05
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田内学
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