プロバイダ責任制限法について調べてみた (rush/20/04/23)
今日はサービスをローンチしようとしている友達が居て、利用規約について一緒に調べました。
その中で、掲示板系のサービスを運営する時には必須となるプロバイダ責任制限法について調べたので今日はこれを纏めます。
※注意:私は法学徒ではありませんし、調べた内容はできるだけ正しく書いているつもりですがその正しさについて一切責任は取れないので注意してください。
プロバイダ責任制限法って何
正式な名前は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」で、
掲示板等のサービスの運営者(以下ここでは運営者とします、プロバイダ等とも略されます。)の責任について記した法律です。
以下の2つのことについて定めています。
運営者の責任の制限 そのサービスを使って、誰かの権利が侵害された時の、運営者の免責となるための要件などが定められています。(要は、サービス運営者が許されるための条件)
権利侵害をした発信者等の、情報開示 権利を侵害された人が、侵害した人の個人情報を開示する際について纏められています。(要は、どういう時に情報開示していいのか)
賠償責任の制限
まず最初の、運営者はいつ削除すべきで、いつ削除すべきでは無いのかという点について考えます。
そもそも、
削除をしなければ、権利の侵害を看過しているとして責任を問われる
不当な削除をすれば、表現の自由等の侵害にあたり、責任を問われる
という板挟みが辛い、というのがこの法律の制定理由の根本にあります。
そしてこの法律の第三条を見てみますと、以下のように記されています。
第三条 特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。
要約すると「以下の例外を除いて、削除しなかった場合に賠償の責めに任じない」という内容です。
そして、その責任の問われる例外は以下の通りです。
一 当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
二 当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。
要は、「権利の侵害を知っていた」または「権利の侵害を知ることが出来ると認められるに足る理由がある」場合には、賠償責任を負う可能性があるということです。
つまり、この場合は送信を防止する措置を講ずる必要があります。
(要は、権利の侵害が確信出来るなら防止 = Banしないといけない)
https://gyazo.com/f287fdf35ceb88a3c762d0863c8b7ec9
そして、これと同時に、削除していい場合(削除しても賠償の責めに任じない場合)も次項に記されています。
2 特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。
これはさっきとは反対に、「以下の例外を除いて、削除した場合に、必要な限度であれば賠償の責めに任じない」という内容です。
一 当該特定電気通信役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
二 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、当該権利を侵害したとする情報(以下この号及び第四条において「侵害情報」という。)、侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由(以下この号において「侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対し侵害情報の送信を防止する措置(以下この号において「送信防止措置」という。)を講ずるよう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供者が、当該侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過しても当該発信者から当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。
これは要は、「権利の侵害が明らかだとする理由がある場合」または「侵害されてるって言われてるから削除してもいい?って聞いて7日間、『同意しない!』って言われなかった時」です。
お伺いを立てて、7日間返信が無かったら削除しても何も言われない(免責される)わけですね。
総務省の運用ガイドラインに分かりやすくまとまっています。
https://gyazo.com/e10ab303289bc2120d52a57440e989a7
ちなみに、公職選挙法と絡んで、掲示された情報が公職の候補者(選挙とか)に関わるとまた話が変わります。
これについては法律本文を読んでください。
ちゃんとは読んでいませんが、雰囲気では
立候補者や立候補者の団体(政党とか)から削除(防止)要請が来た時には、同意するかどうかの返信は、7日間ではなく2日間待つだけで削除出来る。(素早く削除出来るようにしたい?)
名誉が侵害されているという申立を受けて、その侵害の疑いがある情報を発信した人のメアドが正しく公表されていない場合、削除出来る。
といった感じです。(これは雰囲気なので、ご自身に該当する場合はちゃんと条文読んでね)
発信者の個人情報開示
次は発信者の個人情報の開示に関する部分です。さっきまでは削除をしていいかどうかに関する部分でしたね。
第四条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
要は、侵害されたのが明らかで、その損害賠償のためとかにその発信者情報が必要な場合には開示の請求が出来るというわけですね。
そして、開示の請求を受けた運営者はどうするのでしょうか。
以下のように定められています。
2 開示関係役務提供者は、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。
要は、発信者に聞け!っていうことですね
この後、同意しなかった場合 / 返信しなかった場合にどうするべきか、法律には書かれていません。
ですのでこのあたりは周辺の省令やガイドラインを参考にする必要がありそうです(ここまでは掘れませんでした、いつか調べたいでし~~~)
そして、この時の免責についても言及されています。
4 開示関係役務提供者は、第一項の規定による開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該開示関係役務提供者が当該開示の請求に係る侵害情報の発信者である場合は、この限りでない。
故意または重過失がない限り、開示の請求に応じなくても責任を負わされることは無いようです。
今回は、プロバイダ責任法について少し調べて、法律文を備忘録的に解釈してみました。
時間があったらこれに関する55PくらいのPDF形式のガイドラインを読んでみて、また纏めてみようと思います。
そういえばつい先日にそのガイドラインの改訂の意見募集結果が公表されていました、ホットな話題となればやる気が少し上がりますね、明日の記事の内容が決まったかなー?
20/04/24追記
省令・周辺の特別法・ガイドラインについて加えて調べました。