フィリピン語を半年学んだ所感
久しく何も書いていなかったので手早く書けそうな話題から書いてみることにします。
自分はフィリピン語を習うのは習った外国語のなか3つ目で(英語・中国語に次ぐ)それらとの軽い比較を交えながら、この言語がどういうものか語っていきたいと思います。
フィリピン語とは
フィリピン語はオーストロネシア語族に属します。いわゆる島国語と呼ばれるもので、フィリピン語の他にマレー語やインドネシア語などが含まれます。また台湾原語とも単語などの類似性を持っていると言われますが、台湾原語と琉球語との関連性はないといわれ、そのため日琉祖語、強いては日本語との関係性は認められていないようです。(与那国島言語境界説)
文字に関しては現在アルファベットを使用しています(アバカダ)
発音に関してはローマ字読みで基本通じるのですが、ng母音など独自の発音を持ちます。
フィリピン語とタガログ語について
これに関してはとてもよく聞かれるのではっきりと答えておきます。フィリピンは島国ということもあり、国内に数百もの方言、あるいは独自言語を持っています。タガログ語はその一つです。独立後公用語として英語とフィリピン語が制定されましたが、フィリピン語はタガログ語をベースにしています。というか両者はほぼ同じと言ってもいいでしょう。両者の違いは何なのかというと、言うなれば属性の違いです。フィリピン語は日本語で言うところの標準語的な意味合いを持ちます。アナウンサーや公文書で用いられる言葉、という意味合いです。対してタガログ語は東京方言、あるいは東京語というような意味合いを持ちます。タガログ語が元々話されていた地域は首都マニラ周辺であり、タガログ語話者は主にその付近に分布しています。しかし実際のところセブ島方言であるビサヤ語などはタガログ語よりも話者数が多かったりするので、必ずしもタガログ語が支配的なわけではないのです。私はフィリピン語を学んでいますが、それはフィリピンの標準語を学んでいるという意味であり、その標準語はマニラ方言であるタガログ語をベースにしている、ということになります。
フィリピン語の基本構造
フィリピン語の基本構造はNEWS+PODで表されます。NEWSは文字通り新情報を表します。PODはPoint of Departureの略で、話題の出発点を表します。NEWS+POD構造を例文で見てみましょう。
Mag-aral siya ng tagalog.
彼女はタガログ語を勉強する。
ここでNEWSに当たるのがMag-aral(勉強する)という動詞です。PODはsiya(彼女)です。ng tagalogは英語的には目的語ということになるのでしょうが、フィリピン語的には補助説明的なものに含まれるためNEWSやPODのどちらにも含まれません。
フィリピン語は英語のように文構造をSVOと言った区分で分けたりはしません。それよりもどこがPODでNEWSは何なのかが文構造を規定するのです。
Ang形とNg形とSa形
英語にはI,My,Me,Mineと言ったふうに人称代名詞においてそれが主格なのか所有格なのか目的格なのかによって変化が生じますが、フィリピン語の場合それが全ての名詞に影響します。それらを分けるためにあるのがAng形、Ng形、Sa形という分類です。
Ang形はPODを表し、多くの場合において文の主語を表します。Ang形を使った例文を見てみましょう。
Matangkad ang guro doon.
そこにいる教師は背が高い。
ここではguroが教師の意味ですがこの名詞がPODになるのでそれを明示するためにAng形の印である angが名詞の前に付いていることがわかります。
Ng形は目的語や所有格を表す時に用いられます。例文をそれぞれ挙げます。
Kumain tayo ng mangga.
マンゴーを食べましょう。
いきなりの勧誘表現ですがそこの解説はさておき、マンゴーを表すmanggaに目的語を表すngがついています。tayoは私たちを表す人称代名詞で、これ自体がang形なのでangを別途つける必要はないのです。
Maganda ang ate mo.
あなたの姉は美しい。
ここではng形の人称代名詞であるmoがateの所有格になっています。
Sa形は「〜のもの」を表す時に使います。またリンカー(後述)を用いて所有格にも用いられます。例文をそれぞれ挙げます。
Sa akin ang libro ito.
ここにある本は私のものです。
Libro ito ang sa akin.
私のものはここにある本です。
akinがsa形の人称代名詞であり、Saを前につけることで私のものを表しています。また後者のようにSa akin自体がang形として使われることもあります(ややこしい)。
Aking doktor si Mariya.
マリアは私の医者です。
「私の医者」はdoktor koという風にNg形でも書けますが、Sa形にリンカー(後述)を入れてAking doktorと書くこともできます。siはAng形の人名冠詞です。
人称代名詞の一覧
Ang形 Ng形 Sa形
私 Ako Ko Akin
私たち(あなたを含まない) Kami Namin Amin
私たち(あなたを含む) Tayo Natin Atin
※一人称複数における話者を含むか含まないかの区別は英語にはなく、中国語の我们と咱们の違いとほぼ似てますね。
あなた Ikaw(ka) Mo iyo
あなたたち Kayo Ninyo inyo
彼/彼女 Siya Niya Kaniya
彼ら sila Nila Kanila
リンカーによる修飾
フィリピン語の大きな特徴はリンカーで単語同士を繋ぐことです。名詞だけでなく形容詞や動詞もリンカーによる修飾を受けます。また強調表現などにも使われます。これにより、形容詞が名詞だけではなく動詞を修飾したりと幅広い独自の用法が可能になるのです。
リンカーはngかnaの形を取ります。リンカーの前の単語が母音で終わる場合はng、nで終わる場合はg、子音で終わる場合はnaを付けます。
Mabait na guro ang nanay ko.
私の母は親切な教師です。
親切なを表す形容詞mabaitと教師を表す名詞guroをリンカーのnaで繋げています。
Magandang maganda ang ate mo.
あなたの姉はとても美しい。
とても美しいという強調表現を美しいを表す形容詞magandaを2回繰り返しリンカーで結ぶことによって表しています。
masarap na kumain siya ng saging.
彼女は美味しそうにバナナを食べた。
ここでは美味しいという意味を表す形容詞masarapと食べるという動詞kumainがリンカーで結ばれ、美味しそうに食べるという意味になります。
ざっと書きましたが、フィリピン語はこんな感じの言語です。新情報が先に出るのが新鮮で未だに慣れませんが、それ以外は意外と単純だったりします。あまり英語とかの文法用語に拘りすぎて厳格な区別をしようとすると詰みそうになりますが、基本的にはNEWS+PODだけざっくり覚えてang形とかの使い分けを雑に覚えたら割となんでも書けます(ホントか?笑)動詞の種類とか活用とかを今やってるのですがかな〜り面倒なのでまた覚えたら書きます。