リアルスケール社会シミュレーションによる社会貢献
https://gyazo.com/5680becd184be9ee57ea5a7b1b882126
実社会のシミュレーションを実現するため,サイバー空間での社会データの構築に取り組んでいます.
特に,実社会のデータ化の課題として,個人情報保護が求められますが,公開されている統計データに基づく
世帯構成員情報の合成に取り組んでおり,すでにJHPCNという国内のスーパーコンピュータを用いた
共同利用・共同研究拠点の研究課題として,1億2千万人のデータの合成に成功しています.
これらの世帯構成員情報を用いたシミュレーションがすでに実施されており,
投票シミュレーションや心停止事故発生時のAEDの需要分析,
新型コロナウイルスの感染対策に活用されています.
合成人口データは,研究者向けに無償で提供を開始しています.
以下のホームページから利用申請をすることができます.
合成人口データに,属性別行動データを組み合わせることで,
個々人の属性に応じた行動モデルを実現し,それぞれの社会構成における
行動の結果をシミュレートすることができます.
https://gyazo.com/ffeeec5990e2a0fe832845316c1987db
現在,Google Street Viewなどで,実世界の建造物の情報の移転が行われていますが,
そこに居住する人々の情報はなかなか利用することができません.
合成人口データは,個人情報保護の観点から利用が難しい世帯構成員情報を
模擬的に合成し,統計的特徴を同一にする社会構成で何が起きる可能性があるかを
シミュレートすることができるものです.
https://gyazo.com/f49b97bf7412e9f153129be3f453f13e
合成人口データは,実統計の統計表の各統計値に合わせる形で,
架空の人口個票を調整することにより合成されます.
都道府県単位,市区町村単位,小地域(町丁目)単位の統計を用いて
架空の人口個票に基づく合成人口統計と実統計の際を最小化することで,
合成されます.
https://gyazo.com/be1f1b0fe27fc69ca8c10f192adfa229
社会シミュレーションの用い方として注意すべきことは,予測を主な目的にしないということです.
気象シミュレーションなどの物理的なシミュレーションでは,観測精度を高めることで,予測精度を高めることが可能です.しかし,社会シミュレーションでは人間の行動が関係してくるため,人間の行動が変われば,シミュレーションの結果が変わることになります.
https://gyazo.com/5a4069ffcbfa9d981b89205c6c5b8e58
自然科学を対象とするシステムでは予測が主な目的になりますが,
人間を含めたシステムでは,人間がとりうる行動をシナリオとして表現し,
それぞれのシナリオで行動した場合にどのような結果になるかを比較可能な形で
提示することが目的となります.特にそれぞれのシナリオの差異に着目することが
重要です.
実社会への適用,また人間を含めたシステムを考慮するときに,
社会シミュレーションの用い方に関する議論は重要になってきます.