『千穂ちゃんごめん!』
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ISBN:B08GZ2CWGJ
著者は高校卒業後の1968年4月警察官を拝命し、その後33年間刑事畑を歩んで来た。 晩年に大腸がんを患い、刑事警察改革のために生かされているとの思いを持つようになった。 一捜査員の立場で、更には10年後に特捜班長として関わったのが、《スイミングクラブ女性コーチ殺人事件》。 発生から15年後に時効を迎え迷宮入りとなった殺人事件は、警察の都合のみを優先した捜査が行われるなど数々の問題点が隠されており、定年退職を迎えた著者は、自らの体験に基づく捜査の裏に隠された真実を公表し警察界に一石を投じる決心をした。 本作品の主題となっているのは、1992年10月1日未明、金沢市内のスイミングクラブ女性インストラクター、安實千穂(20歳)が、同クラブ職員駐車場に停められた本人所有の車の中で遺体となって発見され、3日後に被害者の自宅近くの果樹園が、殺害現場であることが明らかになった殺人事件である。 女性コーチ殺人事件捜査本部での捜査指揮の杜撰さや、一般的な捜査指揮の問題点などについて切り込むと共に、初期捜査の段階で、心ない捜査幹部の見込み捜査によって、「あの男が犯人に間違いない」と捜査員に指示した言葉が、人々の心の奥深くに噂として残されたまま迷宮入りになっていることについて、「噂は間違っている」とのメッセージを届けたいとの筆者の強い思いがある。 事件発生から10年後に、特捜班長として事件に再会した著者は、《尻拭い捜査》と称する捜査ミスを暴き出す捜査手法に全力を注ぎ、刑事最後の仕事との思いで事件解決に取り組み、これまで分からないと言われていた凶器を、被害者の着ていたオーバーオールの左肩つりベルトと特定して、最初の捜査段階でアリバイありとして除外されていたある人物を容疑者として特定した。 しかしその後の人事異動で、著者はもとより後事を託した特捜係長も異動させられてしまい、継続捜査の必要性を訴える2人の刑事の声を無視して、事件は警察組織の手によって迷宮へと突き進んで行った。 刑事部門から犯罪捜査に一切口出しの出来ない留置管理部門へ配置換えさせられた著者は、後輩の手によって事件が検挙されることを期待しながら、蚊帳の外から捜査を見守っていたのであるが、発生から10年目に著者の手によって暴かれた捜査ミスを、認めることを嫌う組織が真実を秘したまま事件を終結させようとしていることを知り、愕然とすると共に憤りを感じることとなる。 著者は退職辞令を受けた3日後に、刑事として力が及ばなかったことに対する謝罪と捜査状況説明のために、被害者遺族である安實家へ訪問した。その際の著者および遺族の心中を語ると共に、警察組織が事件捜査について反省の出来ない組織になっていることを、具体的事例を上げながら訴える。