Trump v. United States, 603 U.S. 593, 144 S.Ct. 2312 (2024)
USLW研究会 2025年7月26日
担当:中村 良隆
大統領の包括的かつ排他的な憲法上の権限にあてはまる行為は、刑事訴追からの絶対的免責を受け、その他の公的行為(official acts)[←公務/職務行為]は少なくとも推定的免責を受けると判示された事例。
《事実の概要》
2023年8月1日に、連邦大陪審はドナルド・J・トランプを2020年11月の選挙後の行為について、4件の訴因で起訴した。
起訴状によれば、選挙に負けた後、トランプは選挙の不正という虚偽の申立てを虚偽であることを知りながら(knowingly)拡散することにより、選挙結果の集計および認証を妨げ、選挙結果を覆そうという共謀を行った。
トランプは5つの主な手段で目的を遂げようとした。第1に、トランプとその共謀者は、「州の立法者と選挙管理委員が対立候補であるジョー・バイデンの大統領選挙人の得票を、トランプの得票に変えさせるため、選挙の不正があったという虚偽の申立てを虚偽であることを知りながら行った。」第2に、「7つの州を対象として、虚偽の大統領選挙人リストを作成し、これらの虚偽の選挙人に誤った認証結果を副大統領および他の公務員に伝えさせ、1月6日の認証手続において数えさせるように仕向けた。」第3に、連邦司法省を利用しようとした。
「でっち上げの選挙違反の捜査を行わせ、司法省は選挙の結果に影響を及ぼすかもしれない重大な懸念を示しているという虚偽の内容の書簡を対象となる州に送付した。」第4に、副大統領が1月6日の認証手続における儀礼的役割を使って、不正に選挙結果を変更する」よう説得しようとした。そして、それが失敗に終わると、1月6日の朝に集まった支持者に対して選挙の不正の主張を虚偽と知りながら繰り返し、副大統領には選挙結果を変える権限がありそうするかもしれないと偽りを述べ、支持者を連邦議会議事堂に向かわせて認証手続を妨害するように仕向けた。」第5に、大規模の怒れる群衆が連邦議会議事堂を暴力的に(violently)襲撃して手続を停止させた際に、トランプとその共謀者は、「選挙の不正という虚偽の主張を行い連邦議会議員たちにさらに認証を遅らせようと説得するための働きかけを倍加させることにより、混乱につけ込んだ。」
申し立てられた行為に基づき、起訴状はトランプを①合衆国法典第18編371条に違反して合衆国を欺こうとする共謀罪、②1512条(k)項に違反して公的手続を妨害しようとする共謀罪、③1512条(c)(2)項に違反する公的行為の妨害の既遂および未遂、④241条に違反する、権利を侵害する共謀罪により訴追した。
トランプは大統領免責に基づき、起訴状の却下を申し立てた。彼の見解によれば、起草状に申し立てられた行為は、①「連邦の選挙の執行について公的な表明を行い、」②司法省の上級の公務員と「選挙の不正の捜査および同省のリーダーの選任について」連絡を取り、③「州の公務員と連邦選挙の執行およびそれに関する公的義務の行使について連絡を取り、」④「副大統領および連邦議会議員と選挙の認証に関する公的義務の行使について連絡を取り、」⑤「トランプ大統領により提唱された方法で副大統領が公的権限を行使するよう説得する試みを進めるために、他の者が条件付きの選挙人リストを作成するよう授権または指示した。」トランプは起訴状の申立てすべてが彼の公的義務の中核にあてはまるものであると論じている。そして、大胆でためらいのない行為を伴う大統領の特に繊細な職務を引き受けることができるように、大統領は公的責任の外周内で行われた行為に対する刑事訴追からの絶対的免責を有すると主張している。
District Courtは「前大統領はその職に就いていた間に犯されたいかなる行為についても絶対的な連邦刑事免責を有しない」と判示して、却下の申立てを斥けた。同裁判所は、職責を果たすのに萎縮効果が生じることがないように、大統領は民事事件において損害賠償責任を免除されていることを認めた。 See Nixon v. Fitzgerald, 457 U. S. 731, 749–756 (1982). しかし、「連邦刑事訴追においては強力な手続的保障があることに鑑み、任期後の濫訴のおそれは、刑事の文脈においてははるかに少ない」と述べた。
D. C. Circuit Courtは原判決を確認した。 91 F. 4th 1173 (2024) (per curiam). Marbury v. Madison判決を引用して、同裁判所は、裁量行為と羈束(ministerial)行為を区別した。「裁量行為は政治的に吟味することができるだけであるが、ある公務員が立法部により行為するよう命じられている羈束行為を含む「事件を審理する権限を司法部は有する。」この区別から、「Marburyとそれに続く判例(progeny)において説き明かされた権力分立論は、司法部が公的行為に対する前大統領の連邦刑事訴追を監督することを必然的に認めている。なぜなら訴追がなされたという事実は前大統領が連邦議会制定法に違背して行為したと申し立てられていることを意味するからである。」と結論づけた。同裁判所の見解では、トランプの行為が「一般的に適用可能な刑事法に違反したと申し立てられている」ことは、これらの行為が「彼の合法的な裁量内に適正に収まらなかった」ことを意味する。それゆえ同裁判所は、トランプは「起訴状の訴因から制度的な免責」を得られないと結論づけた。District Court同様、D. C. Circuit Courtも起訴状に述べられた行為が公的行為を含むかどうかということについて判断するのを拒否した。
合衆国最高裁判所は、次の問題を審理するためサーシオレーライを認容した。「前大統領は任期中の公的行為を含むと申し立てられている行為に対する刑事訴追を免れる大統領免責を享受することができるか、もしできるとすればいかなる範囲においてか。」
《判旨・法廷意見》
原判決破棄・差戻し(6対3)
1. ロバーツ首席裁判官の法廷意見
本件は、我が国の歴史上、前大統領が大統領在任中の行為を理由に刑事訴追された初めての事例である。このような訴追が認められるか否か、またどのような状況下で認められるかを審理するには、合衆国憲法に基づく大統領権限の範囲を慎重に評価する必要がある。
両当事者は、前大統領が在職中に犯した公的でない行為について刑事訴追を受ける可能性があることを争ってはいない。また、起訴状に記載されている行為の一部には、トランプが非公式な立場で行った行為も含まれていることにも同意している。しかしながら、前大統領が公的行為を理由として訴追されうるかどうかについて両当事者の意見は一致していない。トランプは、大統領が彼の公的責任の外縁内に収まる行為については民事損害賠償責任を絶対的に免責されるのと同様に、そのような行為については刑事訴追を絶対的に免責されなければならないと主張している。政府側は、起訴状の申立てにはいくつかの公的行為が含まれていることに同意しているが、前大統領はいかなる行為についても、その行為がどのようなものであるかにかかわらず、刑事訴追からの免責を受けることはないという立場をとっている。
我々は、権力分立という憲法構造の下で、大統領の権限の性質により、前大統領は任期中の公的行為に対する刑事訴追から一定の免責を有することが必要であると結論づける。少なくとも、大統領による中核的な憲法上の権限の行使に関しては、この免責は絶対的でなければならない。残りの公的行為についても、大統領は免責を受ける権利を有する。しかしながら、本件手続の現段階においては、この免責が絶対的でなければならないか、それとも推定的免責で十分であるのかを判断する必要はなく、判断しないでおく。
A (大統領の排他的権限内の行為については絶対的免責を受ける) 合衆国憲法第2編は、「アメリカ合衆国大統領」に「執行権」を与えている。§1, cl.1. 大統領の職務(duties)は「他に類を見ないほど重大で広範な」ものである。Trump v. Vance, 591 U.S. 786, 800.
大統領が行為する権限は必然的に「連邦議会の行為または憲法それ自体のいずれかに由来する」。Youngstown Sheet & Tube Co. v. Sawyer, 343 U.S. 579, 585. 後者の場合、大統領の権限は「包括的かつ排他的」となることがある。Id., at 638 (Jackson, J., concurring). 大統領がこのような権限を行使する場合、連邦議会は同一の主題について行動することはできず、裁判所は「大統領の裁量を制御する権限を有しない。」Marbury, 1 Cranch, at 166.
この種の権限として、合衆国憲法は、例えば恩赦権(Art. II, §2, cl. 1)や連邦公務員の罷免権を大統領に与えている。
したがって、連邦議会制定法―大統領を対象とした特定のものであれ、一般的に適用可能なものであれ)は、大統領の排他的憲法権限内にある行為を犯罪としてはならない。裁判所は、そのような大統領の行為を捜査する刑事訴追の裁判を行うことも許されない。したがって、我々は、憲法上の権限の排他的範囲内の行為について、大統領は刑事訴追から絶対的に免責されると結論づける。
しかし、大統領の公的行為のすべてが「包括的かつ排他的」権限にあてはまるわけではない。大統領の排他的憲法権限の範囲内の行為に対する刑事訴追からの絶対的免責を正当化する理由は、彼の権限が連邦議会にも共有されている分野における行為には及ばない。この文脈における大統領の免責を判断するにあたって、我々は主に、起草者による権力分立の中での大統領職の構想、民事分野における大統領免責の先例、そして大統領が検察による文書提出要求に抵抗した刑事事件に目を向ける。
大統領は憲法の枠組みにおいて独特の地位を占めており、起草者は「憲法上不可欠な単一の個人の手に、他の部門においては憲法が多数に分割している究極の権限を与えることによって、精力的で力強く、決定的で迅速な法の執行を促そうとした。」Clinton v. Jones, 520 U. S. 681, 712 (1997) (Breyer, J., concurring in judgment).
従って彼らは、大統領に「最大限の裁量と配慮を要する監督および政策上の責任」を与えた。Fitzgerald, 457 U. S., at 750. 大統領を「公務の遂行を過度に慎重にさせる」かもしれない手続によって大統領の精力が他に逸らされた場合に生じる「政府を効率的に機能させることに対する特有のリスク」を認識して、我々は、「権力分立という憲法上の伝統に根ざし、我々の歴史に支えられた」大統領の免責および特権を認めてきた。
例えば、Nixon v. Fitzgeraldにおいて我々は、「彼の特別な公職に機能的に義務づけられる事柄」として、公的行為に基づく損害賠償責任から絶対的免責を受ける権利を有する」と認めた。「我々の主要な懸念」は、「特定の公的決定から生じる損害賠償訴訟の可能性についての不必要な心配によって、意思決定過程において大統領の注意が逸らされること」を避けることであった。Clinton, 520 U. S., at 694, n. 19.
対照的に、検察官が大統領に証拠の提出を求めたとき、我々は一貫して大統領の絶対的免責の主張を拒否してきた。例えば、アーロン・バー前副大統領が叛逆罪に問われた公判において、マーシャル首席裁判官は、大統領は罰則付召喚状の対象とならないとするトーマス・ジェファーソン大統領の主張を斥けた。しかしながらマーシャルは、「軽度の理由により公衆の目にさらすべきではない」特定の「公文書」の提出を差し控える「特権」の存在を認めた。United States v. Burr, 25 F. Cas. 187, 192 (No. 14,694) (CC Va. 1807)
同様に、ニクソン大統領に対し、彼の補佐官や顧問との会話に関する特定の録音テープや文書の提出を求める罰則付召喚状が出された際、当裁判所は、「刑事訴追において正義を実現するという司法部の憲法上の義務」があることから、彼の「絶対的特権」の主張を斥けた。United States v. Nixon, 418 U. S. 683, 703, 707 (1974). しかし、我々は同時に、「大統領の意思決定における率直で客観的、そして時には率直で厳しい意見に対する公共の利益」と、「政府高官ならびにその多様な職務の遂行において彼らに助言および補助を行う者との間のコミュニケーション」を保護する必要性を認識しており、「推定特権」によって大統領のコミュニケーションが保護されると判示した。我々は、この特権は「大統領の権限の効率的な行使に関連する」と説明し、それゆえ「政府の運用にとって根本的であり、憲法の下での権力分立に分かち難く根ざしたものである」とみた。
2 (その他の公的行為については推定的免責を受ける) 大統領を公的行為によって訴追することは、単に彼の所持する証拠を提出させるよりも、執行部の権限および機能への侵害のおそれがはるかに大きいことは疑いない。その危険性は、最高裁判所が民事損害賠償責任からの絶対的大統領免責を認めさせたもの、すなわち、大統領が独立した執行部に求められる「大胆かつためらいのない行動」を取ることを萎縮させられるということよりもさらに大きい。 Fitzgerald, 457 U. S., at 745. 大統領が刑事訴追にさらされることは民事損害賠償訴訟より少ないかもしれないが、公判、判決、および収監のおそれは、民事賠償を支払う可能性よりもはるかに大きな抑止力となり、より大統領の意思決定を歪める見込みがあるのは明らかである。
大統領が「訴追の可能性」を懸念しつつ決定を下す場合、その職務を恐れず公正に執行することにためらいが生じるかもしれず(McDonnell v. United States, 579 U.S. 550, 575)、そこから「政府を効率的に機能させることに対する特有のリスク」が生じる。Fitzgerald, 457 U. S., at 751.
連邦刑事法は、「個人に対する害悪(wrong)[←不正/不正行為?]」だけでなく、「公衆全体に対する害悪」を是正しようとしているので、「公正かつ効果的な法執行に対する公共の利益」も存在している。Vance, 591 U. S., at 808.
これらの相反する考慮事項を考慮に入れ、我々は、先例で明示された権力分立の原則に基づき、大統領の公的責任の外縁内にある行為については、少なくとも刑事訴追からの推定的免責が必要であると結論づける。執行部の独立部と効果的な機能を確保し、大統領が過度の警戒をすることなく彼の憲法上の義務を遂行できるようにするためにこのような免責が必要である。少なくとも、当該行為に刑事法による禁止を適用しても「執行部の権限および機能を侵害する危険」が生じないことを政府側が立証できない限り、大統領は公的行為に対する訴追から免責されなければならない。Fitzgerald, 457 U. S.,
at 754.
大統領の公的でない行為については、免責は存在しない。大統領の意思決定が、当該行為から生じる将来の訴訟のおそれによって歪められないようにするために、公的行為については大統領免責が必要であるが、この懸念は公的でない行為についての免責を支持するものではない。Clinton, 520 U. S., at 694, and n. 19. 権力分立は、大統領の公的でない行為に基づく訴追を妨げない。
III (本件への基準のあてはめ:公的行為かどうか) 前大統領が特定の訴追から免責される権利を有するかどうかを判断するための第一歩は、公的行為と公的でない行為を区別することである。本件において、一般的に、または申し立てられた行為に関して、この区別を行った裁判所はこれまで存在しない。したがって、最高裁判所は、「最終審であって、第一審ではない」ことに留意する義務がある。Zivotofsky v. Clinton, 566 U.S. 189, 201.
本件における決定的争点は、大統領の公的な行為と公的でない行為をどのように区別するか、そして、広範な行為を網羅する起訴状の広範かつ詳細な申し立てに関してどのようにするかである。我々は、これらの問題について指針を示す。トランプと司法長官代行との協議に関するものなど、特定の申立ては、その者により保持されている公職に対する大統領の公的な関係に照らして、容易に分類できる。トランプと副大統領、州の官吏、特定の私人とのやり取り、および一般公衆への発言に関するものなど、他の申立ては、より困難な問題を提起する。
大統領が「憲法上および制定法上の権限」に従って行動する場合、大統領は職務を遂行するための公的行為を行っている。Fitzgerald, 456 U. S., at 757. それゆえ、ある行為に免責が及ぶかどうかを判断することは、大統領がその行為をする権限を査定することから始まる。しかし、合衆国憲法および連邦法に基づく大統領の「裁量的責任」の広さは、彼の無数の「機能」のどれが特定の行為を包含していたかを判断するのを困難にすることがよくある。これらの理由から、我々の認めた免責は、大統領の公的責任の「外縁」にまで及び、「明示的または明瞭に彼の権限を超えていない」限りにおいてその行為に及ぶ。Blassingame v. Trump, 87 F. 4th 1, 13 (CADC).
裁判所は、公的行為と公的でない行為を分別するのに、大統領の動機を問題にしてはならない。そのような問いかけは、公的行為であるのが最も明白な場合でさえも、目的が不適当であるというだけの申立てに基づいて、司法判断にさらすことになる。Fitzgerald, 457 U. S., at 756. また、裁判所は、ある行為が一般的に適用可能な法律に違反していると申し立てられているという理由だけで、その行為を公的でないとみなすことも許されない。さもなければ、大統領は「ある行為が違法であったというあらゆる申立て」に基づいて裁判にかけられることになり、免責から意図された効果を取り去ることになる。Ibid.
上述の諸原則を念頭に置いて、我々は起訴状で申し立てられた行為を検討する。
起訴状は、2020年大統領選挙の正統な選挙結果を覆すための共謀の一部として、トランプとその共謀者たちは司法省の権限を利用して、特定の州に対し、正統な選挙人をトランプの虚偽の選挙人リストに入れ替えるよう説得しようとしたと主張している。起訴状によれば、トランプは司法長官代行や司法省、ホワイトハウスの高官らと会談し、不正選挙疑惑の捜査、およびそのような不正について司法省から当該州への書簡を送付することについて協議した。さらに、司法長官代行がトランプの要求に抵抗した後、トランプは代行を辞めさせると繰返し脅迫したとも主張している。
政府側は、司法省に関する起訴状の申立てがトランプの公的権限の行使を含むものであるかを争ってはいない。実際、当該申立てはトランプの「包括的かつ排他的」権限に明らかに関係があるものである。執行部は、選挙違反の申し立てを含めて、どの犯罪を捜査し訴追するかを決定する「排他的権限および絶対的裁量」を有している。Nixon, 418 U. S., at 693. また、大統領は「執行部の管理」を行っているので、司法長官のような「最も重要な部下を、その最も重要な職務から解任する無制約の権限」が必要である。Fitzgerald, 457 U. S., at 750.
要求された捜査は偽装または不適切な目的のために提案されたものであったという起訴状の申立ては、司法省とその官吏の捜査・起訴機能に対する大統領の排他的権限を剥奪するものではない。大統領は憲法上の排他的権限内の行為によって訴追されないため、トランプは司法省の官吏との協議を含む申し立てられた行為による訴追から絶対的に免責される。
起訴状は次に、トランプとその共謀者たちが「1月6日の認証手続における副大統領の儀礼的役割を利用して選挙結果を不正に変更するよう、副大統領に働きかけようとした」と主張している。特に、起訴状は、複数の会話において、トランプが副大統領に対し、各州の正統な選挙人票を拒絶するか、見直しのため州議会に差し戻すよう圧力をかけたと主張している。
大統領と副大統領が公的責任について協議する際はいつでも、公的行為を行っている。1月6日に行われる認証手続(そこで連邦議会議員が大統領選挙人の票を数える)を主宰することは、副大統領の憲法上および法律上の義務である。Art. II, §1, cl. 3; Amdt. 12; 3 U. S. C. §15. 起訴状の申立ては、トランプが副大統領に対し、認証手続における役割に関連して特定の行動を取るよう圧力をかけようとしたというものであり、それゆえ公務行為を含むものであり、トランプは少なくとも当該行為による刑事訴追から推定的に免責される。
次の問題は、本件状況において免責の推定が覆されるか否かである。免責の推定を覆すのは政府の責任である。ゆえに、我々は、トランプが副大統領による認証手続の監督に影響を与えようとしたとされる行為についての訴追が、執行部の権限および機能を侵害する危険性を生じさせるかどうかを査定させるため、District Ct.に差し戻す。
起訴状の残りの申立ては、トランプと執行部の外の人々、すなわち州の官吏、私人、および一般公衆とのやり取りに関するものである。
特に、起訴状は、トランプとその共謀者たちが、一部の州の官吏に対し、不正選挙(election fraud)によって各州の一般投票の集計が汚染されたため、対立候補に投じられた選挙人票をトランプへの選挙人票に変更する必要があると説得しようとしたと主張している。トランプがこれらの官吏を説得して州の手続を変更させることに失敗した後、彼と共謀者たちは、認証手続を妨害するために虚偽の大統領選挙人リストを提出する計画を立案し、実行に移したとされている。
トランプの見解では、申立てられた行為は連邦選挙の無瑕疵性(integrity)と適正な運営を確保するために行われたものであるので、公的行為としての資格があるという。
しかしながら、政府の見方によれば、これらの申立ては、「私人の行為者からなる私的な計画(scheme)」以上のものを何ら含まない。また、トランプは大統領がそのような行動をとることを可能にする 権限のもっともらしい根拠を指摘することができないでいる。
誰の描写が、そしてどの行為に関して正しいのかを判断するには、起訴状における広範かつ相互に関連する申立てについて、事実に特化した分析をする必要がある。したがって、我々は、トランプのこの分野における行為が公的か公的でないかを第一審において判断させるため、District Ct.に差し戻す。
最後に、起訴状には、1月6日の出来事そのものに関連するトランプの行為に関する様々な申立ても含まれている。申し立てられた行為は、主にツイートや演説といった形で行われたトランプのコミュニケーションである。大統領は「一般市民(fellow citizen)に語りかけ、また一般市民に代わって発言する特別な権限」を有している(Trump v. Hawaii, 585 U.S. 667, 701)。したがって、大統領の公のコミュニケーションのほとんどは、彼の公的責任の外縁内に収まる可能性が高い。しかしながら、大統領が非公式な立場で発言する状況もありうる。例えば、公職の立候補者や党首として発言する場合もある。その場合、「内容、形式、文脈」の客観的な分析は、必然的に審査の役に立つ(Snyder v. Phelps, 562 U.S. 443, 453)。起訴状で申し立てられたコミュニケーションが公的行為に該当するかどうかは、それぞれの内容と文脈によって決まる可能性がある。こうした事実に基づく分析は、まずDistrict Ct.が行うのが最善である。したがって我々は、まずこの行為が公的か公的でないかを第一審において判断させるため、District Ct.に差し戻す。
C (免責される行為は他の裁判でも証拠能力を否定されるべきである) 免責の本質は、「裁判所において自己の行為について責任を問われない権利」である。Mitchell, 472 U. S., at 525. ゆえに、大統領は、訴追から免責される行為に基づいて起訴されることはない。差戻しにおいて、Distict Ct. は起訴状の残りの申立てを注意深く分析し、それらについても大統領が訴追を免れるべき行為を含むかどうかを判断しなければならない。また、当事者およびDistict Ct. は、そのような行為がなくても、起訴状の訴因を裏付ける十分な申し立てがあることを確認する必要がある。大統領またはその顧問によるそのような行為を調査する証言や私的な記録は、公判で証拠として認められてはならない。大統領が免責される公的行為が、たとえ公的でない行為のみに基づく訴因について、彼の有罪判決を確実なものにするために証拠調べの対象になるのであれば、免責の「意図された効果」が損なわれてしまうからである。
トランプは、我々が認める限定的なものよりもはるかに広範な免責を主張し、弾劾判決条項により大統領の刑事訴追に先立って弾劾および上院での有罪判決が必要であるため、起訴は却下されなければならないと主張している。
しかし、同条項の文言は、弾劾も有罪判決も受けていない大統領が訴追されるか否か、またどのような行為で訴追されるかについては規定していない。See Art. I, §3, cl. 7.
歴史的証拠も同様に、トランプの立場をほとんど支持しない。トランプが依拠するザ・フェデラリストは、現職大統領に対する抑制に関するものであり、弾劾判決条項が前大統領を訴追から免責するかどうかについては支持も考慮もしていない。
弾劾という政治的プロセスを刑事法執行に必要な手順に変えるというのは、合衆国憲法の文言や連邦政府の構造においてほとんど裏付けがない。
政府側も同様に広範な見解をとっており、大統領はいかなる行為についても刑事訴追からの免責を享受することはないと主張している。
その見解によれば、公判の過程で適用されてきた異議申立ては、憲法第2編の利益を保護するのに十分であり、そのような異議申立てに関するdistrict ct.の判決の見直しは公判終了後まで延期されるべきである。
しかし、権力分立の原則に沿って、大統領が特定の行為について責任を問われる可能性があるかどうかという問題は、訴訟手続の当初に検討されなければならない。たとえ大統領が最終的に特定の公的行為について責任が認められなかったとしても、訴訟手続が長期化する可能性があるというだけで、大統領は「公務の遂行において過度に慎重」になるかもしれないからである。Fitzgerald, 457 U. S., at 752, n. 32. 合衆国憲法は「政府を効率的に機能させること」に対するこのような妨害を容認しない。Id., at 751.
反対意見について言えば、その破滅的口調は、今日法廷意見が実際になしたこと―大統領と司法長官の間の公式協議には免責が及ぶと結論づけ、それから「第一審において」トランプの残りの申し立てられた行為が免責されるかどうか、またどの程度免責されるかを判断するために下級裁判所に差し戻した―と全く不釣り合いである。
大統領免責はいかなる憲法上の文言によっても支持されていないというのは、当裁判所が何十年も前に「説得的でない」として斥けたものである。合衆国憲法に「大統領免責条項」がないのは確かであるが、「権力分立条項」もないのであって、NixonおよびFitzeraldのような先例は、明示的な条項がなくてもこの法理が大統領に一定の特権および免責を与えていることを長く承認してきた。
主要反対意見は、「前大統領が刑事訴追の対象となる可能性があることを明確に想定している」と主張する。しかし、この条項は、前大統領が権力分立の原則に沿って、特に公的行為を理由に訴追されうるかどうかについては示していない。当裁判所が以前に記しているように、大統領免責の問題に関する関連する歴史的証拠は「断片的な性質」を有するものであり、そのいずれも、大統領が公的行為を理由に起訴されうるかどうかを示していない。
意味のある文言上または歴史的裏付けを示せないまま、主要反対意見は「前大統領が公的行為について刑事法の答責性がある」という「確立された理解」が存在するという。しかし、これまでいかなる大統領も刑事訴追に直面したことはないし、いかなる裁判所も訴追からの大統領免責の問題に直面したことはないので、この主題について我が国の慣行が確立したのは沈黙である。
反対意見は、法廷意見が大統領を法の上に立たせたと非難するが、他の誰もと同じように大統領は公的でない行為について訴追の対象となり、他の誰もと違って、大統領は政府の部門であり、合衆国憲法は彼に広範な権限および義務を与えているので、これらの権限を大統領が力強く行使できるようにすることは、大統領を法の上に立たせるものではなく、そこから法が引き出される、合衆国憲法の基本的構造を維持したに過ぎない。
反対意見は、後継の大統領が前任者を自由に訴追できるようになり、次は自分の番かもしれないという恐れから、大胆かつ恐れずに職務を遂行することができず、執行部が自らを食い尽くすという見通しを見落としている。
最後に、主要反対意見は、法廷意見が起訴状で申し立てられたいかなる行為も私的なものと指定していないのは問題だというが、法廷意見は、本件を処理するために何が必要かを判断し、「結論を左右する問題(threshold question)について破棄した」(Zivotofsky, 566 U. S., at 201)後に訴訟当事者および下級裁判所から指針を得るために差し戻すという長年の実績のある慣行に従っているだけである。Vidal v. Elster, 602 U. S. 286, 328 (2024) (SOTOMAYOR, J., concurring in judgment).
本件は、継続的な重要性を持つ問題を提起している。すなわち、前大統領は、在任中に行った公的行為を理由に、いつ訴追されることが許されるのか、ということである。この疑問に答えるにあたり、政治部門や一般公衆とは異なり、我々は、現在の緊急事態ばかりに、あるいはそれに主に固執することはできない。
本件における我々の判断は、揺るぎない権力分立の原則から導かれたものである。大統領は、公的でない行為については何らの免責を得られず、また、大統領の行為が何でも公的なものになるわけではない。大統領は法の上に立つ存在ではない。しかし、我々の権力分立制度の下で、大統領は中核的な憲法上の権限を行使したことによって訴追されてはならず、公的行為についての訴追から少なくとも推定的免責を受ける権利を有する。この免責は、政治、政策または政党に関わらず、大統領執務室のすべての主に等しく適用される。
2.トーマス裁判官の補足意見
別の点でも今回の訴追が憲法の構造に違反する疑いがあるために補足意見を書く。大統領または省庁の長官が公務員を任命する前に、その公職が「法律により設置される」ことが必要である。司法長官が特別顧問(特別検察官)を任命した際に、そのような公職を明確に創設した連邦議会制定法を特定することなく、一般的な性質を持ついくつかの制定法を挙げただけであり、United States v. Nixon (1974)もこれらの条文の文言の分析まではしていない。たとえ特別顧問が有効な公職であるとしても、それが上級公務員であれば大統領による任命と上院による承認が必要であるし、下級公務員であれば司法長官に「省庁(部局)の長官」として「連邦議会が法律で与える」ことが必要である。連邦議会が特定の公職が存在すべきであるとの合意に達していないのに、執行部が一方的にある公職を創設して誰かを任命することはできない。
3.バレット裁判官の(一部同意)意見
執行特権により認められる限度を超えて、「合衆国憲法は、保護される行為を大統領の刑事訴追の証拠として提出することも制約している」と述べる法廷意見の第III-C部には同意しない。この点では反対意見に同意する。合衆国憲法は、大統領が有責と判断され得る行為を取り巻く状況に対して陪審員の目をつぶらせることまで強いるものではない。収賄罪の訴追を考慮してみれば、連邦議会制定法がいかなる公務員についても「公的行為のために、またはそれを理由として」賄賂を要求したり収受することを禁止しており、合衆国憲法はもちろん、大統領が賄賂を要求したり収受することを授権していないので、彼がそうした場合には政府は彼を訴追しうる。
法廷意見は、一定の訴追からの大統領の憲法上の保護を「免責(immunity)」と表現するが、この用語は、2つの命題を示すのには足りない。①大統領はある刑事法の合憲性を起訴状に申し立てられた公的行為に適用される限りにおいて争うことができ、②公判裁判所の決定に対して中間的審査(interlocutory review)をしてもらうことができるということである。
適正に捉えるならば、訴追からの大統領の憲法上の保護は狭いものである。法廷意見は、いかなる公的行為について大統領を訴追することも合衆国憲法が禁じているという可能性を残し、下級裁判所に第一審でこの問題に答えるよう指示している。私は今この問題に答えるべきであると考える。大統領は彼の「包括的かつ排他的な」権限およびそれに密接に関連する行為にあてはまる行為について刑事責任を問われることはないが、合衆国憲法は、執行権の行使ならば何でも大統領の自由裁量であるとしてはいない。Youngstown Sheet & Tube Co. v. Sawyer, 343 U. S. 579, 637 (1952) (Jackson, J., concurring). 連邦議会は多くの政府の機能について競合する権限を有しており、時には大統領の公的行為を規制するためにこの権限を用いることがある。憲法第2編はそのような事件を訴追する妨げにはならない。
それゆえ私は、ほとんどの公的行為、すなわち大統領の中核的執行権限の外にある行為に対する刑事訴追の有効性を2段階で審査すべきであると考える。
最初の問題は、関連する刑事制定法が大統領の公的行為に及ぶかどうかである。
もしその制定法が申し立てられた公的行為に及ぶのであれば、検察は当該状況においてそれを適用することが「執行部の権限および機能を侵害する危険」を生じさせない場合のみ先に進むことができる。差戻し審で、下級裁判所はこの基準を大統領の公的行為を含む様々な申し立てに適用しなければならない。これらの申し立てのいくつかは、第2編の権限の範囲について未解決の問題を提起する。例えば、起訴状では大統領が「アリゾナ州下院議長に州議会を開会するよう依頼した」と申し立てている。大統領は州議会やその指導者に対する権限を有しないので、アリゾナ州下院議長に働きかけた際に犯した犯罪で彼を訴追することが、どのように執行権を憲法に違反して侵害するものとなるのか見定めるのは難しい。
4.ソトマイヨール裁判官の反対意見(ケイガン裁判官およびジャクソン裁判官が同意)
前大統領に刑事免責を認める今日の判決は、大統領制を変容させるものである。それは我々の憲法と政府の仕組みにとって基盤となる、何人も法の上に立たないという原則を嘲笑うものである。
法廷意見は、前大統領が連邦刑事訴追からの免責を享受すべきであると考え、文言にも歴史にも反し、正当化できない免責を発明し、大統領を法の上に立たせている。
多数意見は、刑事責任から大統領を完全に免れさせる3つの手立てを講じている。第1に、大統領の「中核的な憲法上の権限」の行使について絶対免責を創り出した。第2に、公的行為すべてについて拡張された免責を創り出し、いかなる目的でのいかなる公的権限の行使も、最も腐敗したものですら、訴追を免れるとした。第3に、大統領が免責される行為に関わる証拠は彼に対するいかなる刑事訴追においても用いることができないと宣言している。
多数意見は、「合衆国憲法の下で大統領の権限の範囲について注意深く査定すること」を求めているが、憲法の文言が含まれていない。
合衆国憲法の文言には前大統領に刑事訴追からの免責を認める条文は存在しない。「この点について憲法が沈黙していることは決定的ではない」ものの(United States v. Nixon, 418 U. S. 683, 706, n. 16 (1974).)、少なくとも3つの理由から意味がある。
第1に、起草者は訴追からの免責を与える方法を明らかに知っていたということである。
第2に、当時の州憲法のいくつかでは現職の知事に明示的な刑事免責を与えていたが、起草者は大統領を免責するための同様の文言を合衆国憲法に入れなかったということである。
第3に、合衆国憲法は実際には前大統領が何らかの形で刑事責任を負うことを予定している。弾劾判決条項(Art. I, §3, cl. 7)は、上院により弾劾され有罪判決を受けた公務員が、「それにとどまらず(nevertheless)、法に従い、正式起訴、公判、判決、および処罰を受ける」と規定している。同条項は明らかに、前大統領が弾劾判決に至ったのと同一の行為についての刑事訴追に服することを予定している。これにはその定義から公的行為であることが含意される「収賄」(Art. II, §4)のような行為が含まれる。
多数意見は、当裁判所は「大統領の免責および特権は権力分立という憲法上の伝統に根ざし、我々の歴史により支えられてきたと認識してきた」と指摘するが、我々の歴史には、多数意見の全く新奇な免責を支えるものは何もない。
フェデラリスト第69編などの歴史的証拠は、当初からこの国における前提は、いかなる者も刑事法を無視してはならないということであり続けてきたことを補強する。それが便利な場合だけ、当裁判所[多数意見?]にとって歴史が問題となるように見える。New York State Rifle & Pistol Assn., Inc. v. Bruen, 597 U. S. 1 (2022); Dobbs, 597 U. S. 215.
前大統領が公的行為について刑事法の答責性があるということは、大統領と司法省の双方に共有されてきた、確立された理解である。ウォーターゲート事件で、侵入盗のFBIによる捜査を妨害するためにニクソン大統領が公的権限を濫用したことがウォーターゲート・テープにより判明した後、フォード大統領はニクソンに恩赦を与えた。フォードによる恩赦とニクソンによる受け入れは両方ともそのような理解に依拠していた。
それに続く特別検察官による捜査も、トランプの2回目の弾劾裁判における弁護人も、政府が前大統領を刑事訴追しうることを前提としていた。
IV A (絶対的免責と推定的免責、公的行為と公的でない行為との区別は無意味) 多数意見は、「政府側が、その行為に刑事法による禁止を適用することが執行部の権限および機能を侵害する危険が全くないことを立証しない限り、大統領は公的行為についての訴追から免責されるべきである」と説明しているが、多数意見の目には、そのような危険が全くないということは想像しがたく、それを基準にすべきではない。連邦議会の憲法上の権限内にある目的を促進するための優越的な必要性により執行部への侵害は正当化されるのは確かである。他の侵害も、刑事訴追において正義をなすという司法部の憲法上の義務により正当化しうる。しかしながら、多数意見によれば、執行部に対するいかなる侵害も過剰である。推定的免責ですらこれほど包括的であるのなら、多数意見による絶対的免責と推定的免責の区別はほとんど意味がない。
多数意見は、前大統領は「公的でない行為」については依然として訴追され得ると保証している。
実際には、多数意見の「公的」および「公的でない」行為の分かれ目は、「公的でない」と考えられる行為をほとんど無に狭めてしまっている。大統領が「明示的または明瞭に彼の権限を超えない」方法で行為する限りはいつでも公的行為を行っており、「公的行為と公的でない行為を分別するのに、大統領の動機を問題にしてはならない」というのでは、いかなる目的でのいかなる公的権限の行使も、最も腐敗した目的が客観的な証拠により示された場合であっても、公的であり免責されるということになってしまう。
B (Fitzgeraldの衡量テストは多数意見の結論を支持しない) 法廷意見は、箙(えびら)にある唯一の矢として、Nixon v. Fitzgerald (1983)の衡量テスト(balancing test)を援用するが、このテストですらそれに反するものである。
原告がニクソン大統領に違法に公職から解雇されたことによる損害賠償を請求したFitzgeraldにおいて、当裁判所は、大統領に対する特定の類型の訴訟を審理できるかを判断するためには、裁判所は「追求される利益の憲法上の重さと執行部の権限および機能への侵害の危険とを対比してそのバランスをとらなければならない」と述べ、私的な民事訴訟における公衆の利益(public interest)は比較的弱いので、前大統領はそのような訴訟から免責されると判示した。
前大統領の連邦刑事訴追の文脈において、執行部の機能に対する危険ははるかに少なく、刑事訴追に対する公衆の利益ははるかに重いものであるので、本件でFitzgeraldの衡量を適用すれば、正反対の結果となるはずである。その代わりに、法廷意見は民事と刑事の免責の違いを省き、ニクソンが不法解雇の訴訟において享受したのと同じ免責をトランプにも認めてしまった。これは明らかに間違っている。
多数意見は、公的行為について前大統領を刑事訴追することによって生じる「執行部の権限および機能に対する侵害の危険」は、民事損害賠償責任からの絶対的免責を認めさせたもの「―それにより大統領が大胆でためらいのない行動をとることを萎縮させられる―」に「類似しており、むしろそれよりも大きい」と述べている。もし大統領のどんな行動でも彼を個人的に私的な濫訴にさらすのであれば、大統領の意思決定に危害を及ぼす可能性は非常に現実的なものとなる。しかし、刑事責任の多くの側面が、民事訴訟のおそれよりも大統領の行為を萎縮させられにくいものにしている。
第1に、刑事責任のおそれは、はるかに小さい。
第2に、連邦刑事訴追は、民事訴訟に見られない「堅固な手続的保障」を義務づけている。
第3に、執行部による長期にわたる解釈のおかげで、これまでどの現職の大統領も任期の後に刑事責任を問われるおそれがあると思料し、それにもかかわらずその職務を大胆にこなしてきた。
同時に、前大統領の刑事訴追における公衆の利益は、私的な個人の民事訴訟における公衆の利益をはるかに上回る。
前大統領の連邦刑事訴追の問題は、Fitzgeraldでは欠けていた対抗する第2編の考慮を含む。すなわち、そのような免責を認めることは、「執行部による刑事法の執行を妨げてしまう。」
C (トランプの主張する免責と多数意見の認めた免責との比較) 多数意見は、「トランプは多数意見が認めた限定的なものよりもはるかに広い免責を主張している。」と主張している。多数意見は、「弾劾判決条項により、大統領の刑事訴追に先立って弾劾および上院による有事判決がなければならない」というトランプの議論だけは斥けたが、それにより多数意見による免責がトランプのものよりも狭くなるわけではない。多数意見によれば、弾劾され上院により有罪判決を受けるほどひどく不快な権力の濫用ですら「少なくとも推定的」刑事免責を与えられるからである。
V (本件で「憲法上の排他的権限内の行為」は問題とならない) 多数意見は、「大統領の憲法上の排他的権限の範囲内での行為」については絶対的免責を認めている。しかし、いかなる意味においても、本件は、大統領の「憲法上の排他的権限の範囲」内での行為によって決まるものではない。
トランプは、合衆国憲法が執行権の揺るぎない中核に位置づけている行為を行ったことにより起訴されたわけではない。例えば、大統領の恩赦権、拒否権、任命権、さらには罷免権を違法に行使したために起訴されたわけではない。そうではなく、トランプは大統領選挙を覆すための不正行為(fraud)の共謀罪で起訴されたのである。
多数意見による中核的免責の概念は、「包括的かつ排他的」という類型を認識できないほど拡張し、広範な行為に対する訴追の可能性を排除してしまう。
VI (免責される行為について証拠能力を否定すべきではない) 多数意見はさらに劇的で前例のない一歩を踏み出している。大統領が免責される行為は、たとえ職務中に犯された完全に私的な犯罪であっても、記録から削除されなければならないと述べている。
前大統領が公的行為について刑事責任を問われない場合であっても、それらの行為は依然として公的でない行為の刑事訴追において知識または意図を証明する証拠能力があるというべきである。
VII (結論:大統領の刑事免責は、彼を法の上に立たせるもの) この刑事免責の法理が理論上問題であるのと同じくらい、多数意見による本件起訴への適用はおそらくさらに問題である。
第1に、多数意見は、司法省と副大統領を含むすべての行為を公的行為であると宣言している一方で、トランプの弁護人が認めているにもかかわらず、起訴状で申し立てられたいかなる行為も私的なものとすることを拒否している。
第2に、多数意見は、特定の行為が免責となると指定する一方、何らかの行為を起訴しうるものであると認めることを拒否している。
本件訴追の命運がどうなるかということを超えて展望すると、今日の判決の長期的な結果は際立っている。合衆国大統領は、この国で、そしておそらく世界で最も強力な人物である。彼が公的権限をどのように使おうとも、多数意見の理由づけによれば、彼はいまや刑事訴追を免れることになる。海軍特殊部隊の精鋭に政治的ライバルの暗殺を命じても免責、権力維持のために軍事クーデターを起こしても免責、恩赦と引き換えに賄賂をもらっても免責である。
大統領が法を犯すようにさせ、彼の公職の象徴を個人的利益のために用いさせ、邪悪な目的のために彼の公的権力を用いさせよう。法を犯した責任にいつか直面することになると知っているからこそ、我々が思っているほど彼は大胆不敵にはならないのである。これが多数意見の今日のメッセージである。
このような悪夢のシナリオは決して起こらないとしても、そして私は決して起こらないことを祈っているが、損害はすでに与えられてしまった。大統領と彼が奉仕すべき人民との関係は不可逆的に変更されてしまった。公的行為をどのように使おうとも、今や大統領は法の上に君臨する国王なのである。
多数意見は一途に大統領の大胆さと効率性の必要性に固執し、説明責任と抑制の必要性を無視している。我々の民主主義を危惧して、私は反対する。
5.ジャクソン裁判官の反対意見
ソトマヨール裁判官による力強い反対意見に一言一句同意するが、合衆国大統領の答責性(accountability)のパラダイムを変えるために、多数意見が何をしたのかということの理論的な要点を説明するために別に意見を書く。
誰も法の上には立たず、被告人は有罪が証明されるまでは無罪であり、刑事被告人は政府の職員であるか通常の市民であるかを問わず、その特定の状況に応じた法律上および事実上の防御を行うことができるという答責性のパラダイムの下で我々の政府は長きにわたり機能してきた。
伝統的な個人の答責性のモデルから逸脱して、多数意見は全く異なるものを作り上げた。それは、我々の政府で最も強力な役人だけに適用される免責―刑事法からの免除―を創り出した、大統領の答責性のモデルである。
多数意見によれば、前大統領が免責されるかどうかは、その犯罪行為が3つの類型のうちどれに分類されるかによって決まる。
第1に、大統領の「中核的な憲法上の権限」に関するいかなる犯罪行為―彼の「包括的かつ排他的な憲法上の権限」内に収まるもの―については、大統領は刑事訴追から絶対的免責を得る権利を有する。
第2に、その他すべての大統領の職責の外縁に収まる行為については、大統領は「少なくとも刑事訴追から推定的免責」を得る権利を有する。
第3に、問題となる犯罪行為が「公的でない行為」にあたる場合、免責は認められない。
大統領の犯罪行為の性質に関する多数意見による多層的かつ多面的な限界点の解析は、いくつかの決定的な点で個人責任モデルとは異なる。
大統領がいつ、どのような状況の下で自らの犯罪行為について責任を問われることになるのかを事前に知ることはほぼ不可能となる。免責の問題に対する答えは常に「場合によりけりである」ということになる。
多数意見は、一般的に適用可能な刑事法が、我々の社会の誰でも適用されるわけではないということを基本的前提として受け入れてしまっている。多数意見によれば、合衆国の他のすべての市民は刑事法の禁止する制約の範囲内で仕事をし、生活を送らなければならないが、大統領はそうすることを強いられない。大統領は彼の行為の性質に応じて、時には法の命じるところから免れなければならない。
これらのモデルは、刑事司法制度の参加者に異なる役割を割り当て、最終的には大統領と法の支配との間に異なった関係を生み出してしまう。多数意見の免責体制の下では、大統領は、誰も言い訳の余地がないと考える状況の下であっても、職務の過程で犯罪を犯すことができる。単に法律が彼に適用されないことになるのである。
このパラダイム変更から生じる結果について2つの観点を強調したい。第1に、法廷意見は、我々の政府の3部門の権限のバランスを一方的に変更し、法の支配に関連して司法部と執行部の力を強くし、連邦議会の力を弱くした。第2に、法廷意見による新たな大統領の答責性のモデルは、権力を濫用する将来の大統領に対する抑止力としての法による制約を掘り崩し、我々全員に損害を与えている。
IV (結論:大統領の絶対的権力と裁判所による抑止) 多数意見による新たな答責性のパラダイムが大統領の任期中の犯罪行為についての刑罰を免れさせる限りにおいて、大統領のための絶対的権力の種がまかれたと言える。そして、絶対的権力が絶対的に腐敗することは疑いない。
法の支配が義務づけるように、この国のどの市民も等しく法に服するという犯罪行為の答責性のモデルを多数意見が無感覚に捨て去ることには私は耐えられない。この核心的原理が、我が国が専制に陥ることを長く防いできたのである。しかし、多数意見は今、きわめて強力な類型に属する市民、すなわち連邦議会が確立した境界を無視する意思を持つ将来の大統領のために法というガードレールを外すことを選択した。
要するに、アメリカは伝統的に、大統領を規律するのに法に依拠してきた。しかしながら、今日から、アメリカ人は彼らの代表者が個別的および集団的安全を促進するために制定した刑事法が、いつ(そのようなことがあるとして)大統領の行為または反応に対する防止帯として機能するのかを判断するのに裁判所を頼らなければならない。かつて自律的であった法の支配は、今や裁判官の支配となり、裁判所は、大統領の犯した犯罪のうち、どれが不問に付され、どれが容認できないとして正されなければならないかを宣言するのである。
私の同僚の過半数は、新たな大統領の答責性のパラダイムという不確定の基準を事件ごとに適用することで、大統領が国王になることを防ぐという当裁判所の能力に信頼を置いているようだが、私は彼らが間違っていることを恐れている。最高裁が現在前提としているリスク(および権限)は容認できず、不当であり、かつ明らかに根本的な憲法規範に反するものであるので、私は反対する。
《解説》
1. はじめに:「トランプ一味」による「壊憲」(「法の支配」の破壊と「人の支配」への移行?)
・ピーター・ベイカー、スーザン・クラッカー『ぶち壊し屋:トランプがいたホワイトハウス 2017-2021』9-10頁(白水社、2024年)(原題は”The Divider”、分断する者)
「憲法の根本的な思想の多くに無知でそれらを支持せず、進んで損なおうとすらする政治リーダーをアメリカが擁していたという、この国の歴史上でも想像しがたい一時期・・・トランプは大統領に 就任した日から退任する日まで、大統領の専横を抑止するために設けられたアメリカの制度上のルールの多くを曲げたり破ったりし続けた。だから大統領選で敗北しても、有権者らの意志に反して権力にしがみつこうとし、 それがトランプにとって唯一かつ必然的な選択肢だったのだ。・・・トランプとトランプ主義は共和党を虜にし、過激化させた。任期中に二度弾劾裁判にかけられ二度無罪となったトランプ大統領はアメリカ建国以来、平和的な政権移行を妨害しようとしたただ一人の大統領であり、ホワイトハウスを去ってからは次期大統領選での返り咲きをめざしている。もし成功すれば史上わずか二人目となる。『トランプは大統領選で敗北していなかった』という大嘘を信じたトランプ支持者 は何千万人もいて、今なお信じている。しかも共和党の幹部らはトランプを拒否するどころか、いまだに名誉的トップとして、そして「次期大統領」として崇めているのだ。トランプ時代は過ぎ去ってはいない。 アメリカの現在であり、ひょっとすると未来ですらあるかもしれないのだ。」
・CNNニュース「米国のトランプ大統領が20日、米プロフットボールリーグ(NFL)のワシントン・コマンダーズに対し、チーム名を変更前の「レッドスキンズ」に戻すよう要求した。要求に応じなければ同チームのスタジアム契約を制限すると脅している。」
・トランプは就任初日の2025年1月20日に2024年の連邦議会襲撃事件で有罪とされた約1600人に恩赦を与え、重罪で長期刑を受けた受刑者14人については、減刑のうえ釈放を命じた。
➝ トランプは同事件の首謀者、「愛国無罪」?子分をかばうマフィアの親分?
・BBCニュース「ドナルド・トランプ米大統領の指示のもと連邦政府の複数機関を廃止するなど、さまざまな変化を実施している大富豪イーロン・マスク氏は22日、連邦政府職員に対して、「前の週にしたこと五つ」を箇条書きにしてメールするよう指示し、従わなければ解雇すると告げた。」
➝ トランプの「寵臣」が「命令と服従の習慣」を構築しようとする試み?!
・トランプは、2023年3月から8月にかけて4つの刑事事件で起訴された。[西田2025]
①不倫関係にあったと主張する女性に支払った「口止め料」を巡り親族企業の業務記録を改ざんした事件(東部ニューヨーク州のマンハッタン地区検察官)
➝ ニューヨーク州地裁は34件の重罪で有罪としつつ、2025年1月10日、禁錮や罰金などの刑罰を科さない「無条件の放免」という、異例の量刑を言い渡した。
②1期目退任時に大量の機密文書を許可を得ずに自宅に持ち出し、司法省の捜査を妨害した事件(ジャック・スミス特別検察官)
③20年大統領選の結果を覆そうとし、手続きを妨害した事件(同)
➝ 同様に、2024年11月25日に連邦地裁は起訴の取り下げを認めた。
④20年大統領選の南部ジョージア州での結果を覆そうと州当局に干渉した事件(ジョージア州フルトン郡検察官)
2. 先例の分析
(1) United States v. Nixon, 418 US 683 (1974)
・事実: ウォーターゲート事件を捜査していた特別検察官が、ニクソンにより大統領執務室で徳オンされたテープの提出を求めたが、ニクソンは「執行特権(executive privilege)」を主張して大統領は罰則付召喚令状を免れると主張した。
・判示: 権力分立の原理も、高官レベルの通信の機密保持の一般的な必要性も、絶対的かつ無条件の大統領特権を支持しない。軍事または外交分野における限定的な大統領特権の存在を認めたが、「公正な司法の運営における適正手続きの基本的要請」を優先させた。大統領は罰則付召喚令状に従い、テープと文書を提出しなければならない。
・[高畑2004・81-82頁]「連邦最高裁は、この判決ではじめて大統領特権の存在を認め、しかもそれが権力分立に根ざしたものであることを明記した。しかしながら、連邦最高裁は、大統領が主張した刑事手続に対する執行府の機密保持特権は推定的なもので絶対的なものではない、と判示した。この判決で連邦最高裁がその絶対性を示唆したのは、国防上、外交上あるいは国家安全上必要な機密保持特権だけであった。」
(2) Nixon v. Fitzgerald, 457 US 731 (1982)
・事実: 合衆国空軍の文民分析官が、連邦議会委員会で、輸送機製造の非効率性とコストがかかり過ぎることにつき証言したところ、ニクソン大統領により1年後に解雇された。原告はニクソンに対する損害賠償請求訴訟を提起した。
・判示: 大統領はその公的行為に基づく損害賠償責任から絶対的に免責される権利を有する。この包括的な免責は「権力分立という憲法上の伝統に根ざし、我が国の歴史に支えられた、大統領特有の職位(office)」によるものである。
(3) Clinton v. Jones, 520 US 681 (1997)
・事実: クリントンがアーカンソー州知事であったときに、州政府の職員がクリントンから性的な関係を持つよう要求されたが断ったため、州の上司から嫌がらせを受け、大統領就任後に損害賠償請求訴訟を提起した。
・判示: [高畑2004・79頁]「大統領の職務とは関係がなく、また就任以前に発生した事件においては、大統領に民事免責を認めることはできない。ある部門の権限行使について他の部門が監督することは[権力分立]原則に含まれるものであるから、大統領の行為が合法であるかの審査は正当な司法権の行使である。」大統領の任期満了までの裁判延期も認められない。
3. 法廷意見と反対意見の比較検討
・大統領の免責に関して、(a)絶対的免責、(b)限定的免責、(c)免責を認めないという3つの立場が存在するが[富井2018・32頁]、刑事免責について法廷意見は基本的に(a)、政府側および反対意見は(c)の立場をとっている。
・権力分立について、形式主義(憲法の文言に基づく各機関への権限配分を重視する立場)、反対意見は機能主義(他の機関の核心部分を侵害しない限り権限の共有を許容する立場)があり、「本判決は、三権の権限配分を基に執行府の専権事項を尊重する姿勢を打ち出したことから、形式主義に立脚したといえる。・・・憲法上の権限の核にあたる部分を強く保護していることから、その意味では機能主義に近い側面も有している。」[大林2025・10-11頁]
・最高裁は、将来のすべての状況をカバーするような意見を書くべきであって、そのときの特定の状況に即した意見を書くことはできない。[Barr 2024]
4.本判決の評価
(1) 本判決を支持する立場:
・前大統領を攻撃するために刑事司法制度を用いることは、この国の生活の1年を浪費するだけでなく、連邦検察権の誤用を止めるために最高裁が介入することを強いることになる。[Dehaunty & Yoo 2024, p. 6]
・将来の政権は、過熱または政治的動機に基づく訴追の可能性を恐れなくてよくなるので、トランプだけでなく、バイデンにとってもよい判決である。「帝王のような大統領制」というレトリックは誇張され過ぎている。我が国が常に直面している危険は、大統領が罪を免れることではなく、むしろ将来の政権が政敵を捜査するということである。[Parlatore 2024]
(2) 本判決を批判する立場
・免責とは、訴追に対する抗弁ではなく、「法律によって課せられる義務と責任からの『免除』である。「国王は不正をなしえず」というのは我が共和国が誕生したときに断固として拒否された概念である。刑事訴追のおそれがなければフォード大統領がニクソンに恩赦を与える必要もなかったはずだ。本判決は大統領は法の上にないという235年にわたる連邦政府の前提を覆すものである。[Barker 2025]
(3) 本判決に対する反応
・バイデン大統領は2024年7月1日に、トランプが権力を維持するために暴力を容認したことは、アメリカ国民が[大統領選で]判定しなければならないと述べた。
・連邦議会下院および上院で本判決を覆すための憲法改正案がジョー・バイデンや民主党議員により提出されている。
5.結論
(1) 裁判官、他の公務員などと比較すると、刑事免責を認めない原判決の立場(刑事法に違反するのは明らかに裁量を超える ➝ 刑事免責なし)に合理性があるのではないか。
table:免責の比較
民事免責 刑事免責
一般の公務員 限定的免責(「確立された法律または憲法上の権利」を侵害した場合には責任を負う。) なし
裁判官 絶対免責(ただし、例外あり) なし
日本の天皇 絶対免責(判例) 私的行為についても絶対免責(通説)
(2) 大統領は明示的な権限がなくとも政治的な働きかけを行うことが可能である。
➝①州への書簡の送付、②アメフト・チームの改名の脅し(一般人なら脅迫罪)、③収賄罪、④司法妨害についてどのように考えるか?
(3) 最高裁判所裁判官によるトランプへの迎合と中立性の偽装(歴史の選択的援用と先例の明示的・黙示的組み換え)
(4) 政治的両極化、先鋭化と法文化の変容
・特別な人を認めないというのがアメリカの法伝統ではないのか?
・トランプ支持者は、アメフト改名の件も容認するのか?アメリカの将来への危惧
・日本はどのように変わっていくか(参院選でトランプを模倣し、「外国人排斥」を掲げる政党が躍進)?
参考文献:
・Robert Delahunty & John Yoo, The Presidential Immunity Decision, 34 Harv. Journal of L. & Pub. Policy: Per Curiam 1 (2024)
・Scott S. Barker, Trump v. United States: The Remaking of the Presidency, May/June 2025 Colorado Lawyer 28.
・Miranda Nazzaro, Bill Barr scoffs at ‘horror stories’ about Supreme Court immunity ruling, The Hill, July 1, 2024.
・Joe Biden: My plan to reform the Supreme Court and ensure no president is above the law, Wahington Post, Jul. 29, 2024.
・Mary Clare Jalonick, In an attempt to reverse the Supreme Court’s immunity decision, Schumer introduces the No Kings Act, AP, Aug. 2, 2024
・高畑英一郎「アメリカ大統領の免責特権の範囲」日本法学69巻3号71頁(2004年)
・富井幸雄「アメリカ大統領の法的責任と弾劾:執行権の長のアカウンタビリティ」法学新報125巻7・8号27頁(2018年)
・大林啓吾「大統領の行為が刑事免責を受けるかどうかが争われた事例:トランプ対合衆国判決」判例時報2622号9頁(2025年)
・西田進一郎「トランプ氏が抱えた四つの刑事裁判 残る南部州は不透明」毎日新聞2025年1月11日