Minute Paperの質問
2021/02/11
エンフジャブフラン:
質問。
1.Glanvilleは法廷のルールまた、裁判官にその裁判上で紛争を解決する権力を与えていた法のことですか?
Glanvilleという本には、令状(writ)のひな形(お手本、モデル)がたくさん載っており、国王裁判所の裁判官が使う「マニュアル本」として書かれたと思われます。
2.巡回裁判の裁判官はノーマンの貴族でしたか?王様は誰を任命するのは多かったですか?
以下の2つの理由から、聖職者を任命することが多かったと思われます。
11世紀~12世紀当時は、国王や貴族でも、字を読んだり書いたりするのが得意ではありませんでした。読み書きが最も得意なのは、毎日聖書を読んだり、書き写したりしている聖職者です。
当時は、裁判方法として神判を行うことが認められていました。その場合、聖職者が神判を執り行ったと思われます。
サイハンゾル:
疑問に思うことは、アメリカの法制度(英米法)は判例主義で、一つの事例に対して、州ごとの判断が異なる可能性があるか?また、異なっている場合には、判例をどのように統一して、次の事例に適用するか?
州(state) =それぞれが主権国家 連邦制 Federal System
連邦法 → 連邦最高裁判所 United States Supreme Court
Court of Appeals
判例法が作られていなかった時に、地方のルールを判例法とみることができるか? 例えば、今のアメリカにも、民法に関しては州ごとに決めらるようになっており、アメリカの50州の判例が違っている(統一されていない)ため、アメリカを判例主義を持っていると言えるか?というの質問がある。
ヘルレンチメグ:
英米法は実質的救済を図ることを目的にし、内容を主にする(法の支配)といわれているが、その具体的な手続き(救済を図るための)はどうですか。
ノロブスレン:
最近、モンゴルの法学部生がアメリカなどへ進学することが多くなった。モンゴルとアメリカの法系が異なるが、大陸法の国で勉強したが、英米法の国で進学したら、法系の違いにより、学んだことを実現しないことがあるんじゃないかと思う。先生はこの点でどう思いますか。
Restatemant: 判例法のルールを条文の形にしたもの(学説)
バヤルツェツェグ
モンゴルでは、裁判官は自分の信念に基づいて事件を決定する。その一方、判例法主義の国々では、裁判官は、判例によって事件を決定するために彼ら自身の信念を使うことができないようだ。 もしそうなら、裁判官は単に以前の裁判所の決定を求める義務だけがあるようだ。 裁判官にはどのような権限があるか? 特に自身の信念を使うことはどうか?
裁判官像(裁判官の役割)
a. 法に厳格に縛られている → 裁判官が法を作ることはできない
裁判官=「法律を適用する機械」
b. 法律で細かいことを全部決めておくのは不可能 → 裁判官が法を創造することを認める
・「良心」(=道徳)
・原理(principle)→ルール(rule)
判例法: 「同じような事件は同じように扱う、違う事件は違うように扱う。」
a.先例に従う follow
b.先例を変更する overrule
c.先例と区別する distinguish
主要な事実が同じか、違うか?
先例:l+m+n → 原告〇
新しい事件:m+n+p → 原告〇
→ 原告●
ダムディンドラム:
質問→アメリカで最高裁判官がどうやって選ばれるか。
・連邦の裁判官・・・大統領が任命+上院で承認
・終身制
ビャンバマー:
アメリカ法の民法の場合は、判例のほうが多い。一方、刑法の場合は、判例もある上、刑法典もある。こういう風な法律も判例もある場合は、法律を先にみるか、判例を先にみるか。先生が、答えは、判例であるといった。しかし、判例を先にみれば、法律を作る必要性が何だろうか?
法律(法典)は、何がルールなのか、わかりやすく、整理された形で書かれている。
判例法は、何がルールなのか、必ずしも分りやすいとは言えない(裁判所の出した判決に書いてあることのすべてが、判例法になるわけではない。)。
2021/02/18
ルハグワジャルガル:
陪審の評決プロセスについてもっと詳しく知りたい。
1) 12人の陪審員がどのように評決を下していたか。過半数で決めていたか。
・伝統的には、12名の全員一致
・過半数の評決を認めているところも例外的にある。
・陪審の最小人数は、6名(アメリカ最高裁の判決がある)
2) それに、裁判全体に対し、陪審の決定がどのような影響があったか。
アメリカ
・刑事事件: 有罪か無罪かを決める。+死刑にするかどうか。
・民事事件: 原告の請求を認めるかどうか+損害賠償の額(→裁判官が減額することができる。)
3) そして、陪審員に選ばれても、評決を拒んだら、どのような責任が問われていたか。
・Twelve Angry Men (映画)
・いったん評議が始まると、結論を出すまで帰れない!
・全員一致が原則だが、「評決不成立」もありうる。
A: 陪審制度の歴史
陪審=「コミュニティの正義(communal justice)」を裁判に反映させる。
昔: 証人(witness)
・裁判官から聞かれたことだけに答える。自分の知っていることを答える。
・偽証罪(perjury) ←Attaint(24名の陪審員によって陪審裁判をやり直す)
・裁判官から独立していない
今: 独立した(independent)事実認定者(factfinder)
・陪審が無罪の評決 → 「被告人は無罪」
裁判官が陪審裁判をやり直させることはできない。
検察官が上訴することもできない。
ビャンバマー:
刑事陪審において、陪審員に求められているのは、有罪・無罪の判断のみである。それ対して、例えば、犯行の背景事情や、犯意の形成過程、犯行の動機・目的、犯行の具体的状況等が詳細に認定されることはないし、陪審員がいかなる事実を証拠により認定したのかという判断過程も示されないかもしれない。それについて、先生はどう思うか?
A: ①陪審は、一般市民で、法律の専門家ではない、②12名の全員一致によって判断する → 理由は不要
バヤルツェツェグ:
被告の弁護(serjeant at law)について何か面白いことはありましたか? たとえば、有罪を決定するために熱鉄が使用されましたようなことはありますか?
イングランド: 法廷での弁論(主張+立証)→プロの法律家の仕事・・・現在のbarrister
solicitor・・・顧客との相談、書類を作る
アメリカ: 全員がattorney at law、barristerとsolicitorの区別がない。
弁護士に代表される関係(アドボカシー関係)はどのようにして生まれたのですか?
職能組合(Guild)
見習い(Master and Apprenticeship)
法律扶助(Legal Aid)
エンフジャブフラン:
英米法に紛争を解決するとき、前にあった有効な判例が矛盾することがあった場合、どうなりますか?裁判官は自分の信念で解決し、先例を区別するということですか?
アメリカ: 控訴裁判所の判例が矛盾している → 最高裁が上訴を受理して解決する(法の統一):法と良心に従って解決
ノロブスレン:
最近、モンゴルで全ての事件を最高裁判所までいけなくなるようにした(最高裁は法律の解釈に関して重要な事件だけ扱うようになった)。この理由は人々がただ相手へ支払う代金を延期するために第二審、第三審までいっているからだ。また、最高裁の事件の数が多すぎ、事件の解決までほぼ2-3年かかっている。この点で、日本はどうなっているか。
・日本:上告受理申立制度(裁量上訴、民事訴訟法318条1項)が導入された。
アメリカ:writ of certiorari=裁量上訴 ・・・ Rule of Four 4/9
・日本:第一審の平均審理期間(H31) 9.1月
p. 4
・第一審受理~控訴審終局まで 平均25.8月
p. 7
・上告審・・・平均2.9月
2021/02/18
ルハグワジャルガル:
大陸法と英米法を比べると、英米法の方が自力救済(自救行為)を認める範囲が広いと聞いたことがあるが、本当か。
A: 正当防衛の成立範囲が広い。アメリカの州法では、自らの生命の危険が切迫していなくても、不法侵入者に対して銃(deadly weapon)を使用することが認められることが多い。
所有権留保のされた自動車について、代金が未払いであれば、債権者がそれを自力で取り戻すことができる。
日本は、逆に自救行為を認めるのに消極的であると評価できる。。
1)ドイツ民法229条、859条2項・3項のような明文の規定がない。(日本では民法・刑法とも正当防衛・緊急避難の規定しかない。)
2)「占有自救」(相手により不法に奪われた物をその場または追跡して取り戻す、ドイツ民法では明文により認められている)について、通説によれば相手方に占有訴権(200条)が発生し、また、不法行為(709条)が成立するという。
3)「所有権留保のされた自動車の代金未払いを理由とする債権者による取り戻し」について、判例(最高裁平成元・7・7刑集43-7-607)は窃盗罪が成立するとする。アメリカでは原則として適法、ただし債務者が車の中にいるにもかかわらず強引にトラックで引き上げた事例について違法として損害賠償を認めた事例がある。 MBank El Paso v. Sanchez 836 S.W.2d 151 (Tex. 1992)
2021/02/19
ヘルレンチメグ:
HiGH Court という裁判所が第一審と第二審の紛争を両方も取り扱うといったが、特に、第二審で取り扱う紛争の類型を教えてくれませんか。
高等法院(High Court)は、民事事件および家事事件について、原則として上訴管轄権(第二審)を持ち、例外的に重要な事件について第一審管轄権を持ちます。
高等法院が第一審管轄権を持つのは、①訴額が25,000ポンドを超える場合、②人の生命または身体の損害額が50,000ポンド以上の場合、③名誉毀損の事件です。
参考:Jaqueline Martin, The English Legal System 105, 117-118 (6th ed. 2010).
2021/02/25
ルハグワジャルガル:
現在の裁判所についての紹介において、イギリスには非常にたくさんの種類の裁判所があったと理解した。たぶん裁判所の事件管轄の関する紛争が起こりやすいと思っていたが、この点についてはどうですか。
中世から近代にかけて、イギリスにはコモン・ロー裁判所が3つ、エクイティー裁判所が1つ存在し、それらの管轄権は競合することがよくありました。そこで、1873年最高法院法(Supreme Court of Judicature Act 1873)により、これら4つの裁判所を1つの高等法院(High Court)にまとめたのです。
それぞれの裁判所の管轄については、以下のページを見てください。
エンフジャブフラン:
1. 英米法の国々では法律家は多くの主な判例を勉強すると思うが、平均にどのぐらい(数)の判例を覚えていますか?
アメリカのロースクールの学生のために書かれたものを読むと、1年生のときに1週間に少なくとも24件の判例の要約を作らなければならないと書かれています。そうすると1か月で96件、1年間では約800件という計算になります。
Jaqueline Martin, The English Legal System (6th ed. 2020)に引用されている判例の数は約200件、Claude D. Rohwer & Gordon D. Shaber,Contracts in a Nutshell (4th ed. 1997)に引用されているのは21件、Edward J. Kionka, Torts (3d ed. 1999)は約140件、Arnold H. Koewy (2d ed. 1987)は約660件でした。
2. 判例をすぐ検索できるモンゴルからもアクセスできるサイトがありますか?
3. イギリスの法学部の学生はどうやって勉強しますか?教科書の中に「Mortgageに関する重要で面白くて知るべき判例」と言って紹介されていますか?
法学部の学生は、基本的にケースブックを読んで勉強します。
説明してある教科書もあります。法学部の学生が、試験の前に知識を整理するための本もいろいろ出ています。
サイハンゾル:
なぜ、コモン・ロー裁判所とエクイティ裁判所を統一して、一つの「最高裁」にしましたか?その理由は何でしたか?そこで、1616年のジェーム1世紀の判決がきっかけになったか?
「最高裁(Supreme Court)」ではなくて、「高等法院(High Court)」です。中世から近代にかけて、イギリスにはコモン・ロー裁判所が3つ、エクイティー裁判所が1つ存在し、それらの管轄権が競合し、複雑であったことが一番の理由です。
ノロブスレン:
エクイティはコモンローの限界によって、生まれたものであるが、エクイティには何らかの限界がないでしょうか。
エクイティも現在は判例法になっているので、原則としては先例に従わなければなりません。しかし、エクイティはもともと救済法として生まれたものなので、「エクイティは救済なき権利侵害を許さず(Equity will not suffer a wrong without remedy.)」との法諺が示しているように、新しい救済方法を作り出す柔軟性を持っています。
ダムディンドラム:
Equityは過失の不法行為にどのような関連があるか。
過失に基づく不法行為(ネグリジェンス negligence)はコモン・ロー上の不法行為の一類型で、エクイティによって生み出されたものではありません。