外国法の基礎(2024):アメリカ法の基礎と概説
外国法の基礎:アメリカ法の基礎と概説①~③ (2024年度秋期)
中村 良隆
■ 授業の予定
・主にアメリカ合衆国憲法について取り上げることを予定しています。
9月24日: アメリカ法の基礎と概説①: 英米法と大陸法、英米法の特徴、アメリカ法の特徴、「法の支配」、 違憲審査制
10月1日: アメリカ法の基礎と概説②: 合衆国憲法の制定、連邦制、権利章典と人権規定の「組み入れ」、
Duncan v. Louisiana, 391 U.S. 145 (1968)
10月8日: アメリカ法の基礎と概説③: 「一人一票原則(one person, one vote)」および選挙をめぐる問題について
■授業のレジュメおよび資料
・以下の Google Drive に授業で使用する資料をアップロードしておきます。
https://drive.google.com/drive/folders/1dz17NFnQALiUUlk2j9ZKjmPBxtv2mEce?usp=drive_link
・また、Cosense(旧 Scrabbox)をレジュメ・板書として使用します。
https://scrapbox.io/Anglo-American-Law/
上記のリンクにアクセスするためには Google アカウント(Google のメールアドレス)が必要です。
■ 第1回目の授業(9月24日)までにやってきてほしいこと
(1) 英米法と大陸法の違いについて比較した表を、わかる範囲で埋めてきてください。
(2) さらに余裕がある人は、英文の資料"The Common Law versus Civil Law Traditions"の1ページ目を読んできてください。
■ 第2回目の授業(10月1日)までにやってきてほしいこと
(1) アメリカ合衆国憲法の条文にどんなことが書かれているか、目を通してきてください。日本国憲法の構成
は、「第1章 天皇、第2章 戦争の放棄、第3章 国民の権利及び義務、・・・」となっていますが、アメリカ合
衆国憲法の構成はどうなっているでしょうか?
(2) さらに余裕がある人は、判例 Duncan v. Louisiana, 391 U.S. 145 (1968)の日本語および英語の資料を
読んでみましょう。
■ 第3回目の授業(10月8日)までにやってきてほしいこと
(1) 判例 Reynolds v. Sims, 377 U.S. 533 (1964)についての資料(『アメリカ法判例百選』)を読んできてくだ
さい。
(2) さらに余裕がある人は、アメリカの選挙をめぐる問題についての資料(「ロバーツ・コートにおける投票権
の保障」)を読んできてください。
■ その他
・第1回目の授業時に、受講者のみなさんが特に興味・関心のある法律分野などを教えてほしいと思います。受講者数が少なければ口頭で話してもらい、多ければ紙に書いてもらいます。
・毎回の授業後、ミニット・ペーパーを書いて提出してもらいます。ミニット・ペーパーは平常点として評価します。
ミニット・ペーパーに書くべきことは、①今日の授業で学んだことのうち、最も興味深かったこと(中心的な、役に立つ、意味のある、驚いた、あるいは問題だと思われること)、②一番心に残ったこと・気になったこと、
③授業を聴いて思い浮かんだ疑問・質問などです。これらの全部を書く必要はありません。分量は、長くても A4版半分くらいで結構です。
2024/09/24
table:<英米法と大陸法>
事項 英米法 大陸法
法源(法の本質) 判例法主義 制定法主義
(法典)
法典があるか イギリス:ない
アメリカ:憲法典・刑法典がある。
推論の方法 帰納法 演繹法
裁判とは何か?
政府と法のモデル 法の支配 法治主義
悪法も法であるか? × 〇
いつごろできたものか? 中世(11世紀~15世紀) 近代(19世紀)
裁判官とは何か? 法律家(弁護士)の中の長老 法を執行する官吏
裁判官の役割 社会の中で生ける法を発見する 法律を適用する機械
違憲審査権 付随的審査制 抽象的審査制
刑事裁判のモデル 当事者論争主義(adversary) 糾問主義(inquisitorial)
一般市民の司法参加 陪審制 参審制
2.英米法の特徴
田中和夫(1971) ①「法の支配」、②判例法主義、③陪審裁判、④コモンローとエクイティ
田中英夫(1980) ①歴史的継続性、②歴史的淵源の多様性(コモンローとエクイティ)、③判例法主義、④各論的考察の重視、⑤救済の強調、⑥私人による法の実現、⑦法曹一元、⑧陪審制
3.アメリカ法の特徴
田中英夫(1980) ①連邦制、②違憲立法審査制、③大統領制、④アメリカ型民主主義、⑤法学教育、⑥法形成における学説の地位
4.「法の支配」
2024/10/01
1.アメリカ合衆国憲法の制定
独立記念日(7月4日)・・・独立宣言 Declaration of Independence (1776年7月4日)
13の植民地がそれぞれ、State(邦=くに)として独立。
連合規約(Articles of Confederation) (1777)・・・多国間条約
問題点:①軍隊がない、②課税権がない、③通商規制権がない。
アメリカ合衆国憲法(U.S. Constitution) (1787)
2.連邦制
連邦と州はそれぞれ主権国家(二重の主権、dual sovereignty)
州政府・・・包括的規制権(police power)を持つ
連邦政府・・・「制限された政府(limited government)」、合衆国政府に書かれていることしかできない(例、第1編8節 連邦議会の権限)、モンテスキューの説いた「連合共和国(confederate republic)」がそのルーツ。
3.合衆国憲法の改正条項:権利章典と南北戦争修正
権利章典(Bill of Rights) (1791)・・・第1修正から第10修正まで、第1回連邦議会で発議された。
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2024/10/08
南北戦争修正(Civil War Amendments)・・・第13修正から第15修正まで
4.Duncan v. Louisiana (1968)を読む
アメリカの選挙区割と「一人一票原則」について
レポート課題:
次のテーマのうち、どちらか1つを選んでください。
①英米法と大陸法の特徴について、比較して論じなさい。
②アメリカ合衆国憲法の特徴について、日本国憲法と比較して論じなさい。
(ただし、全部の論点を網羅的に取り上げる必要はなく、連邦制、憲法の制定過程、陪審制、選挙制度など特定の問題に絞ってもよい。)
提出期限: 第1回目 11月26日(火)正午
提 出 先: ポータルサイト
分 量: Wordで作成し,各回2,800字以上3,000字以内で,A4横書き3枚にまとめること(書式は自由だが,参考文献を明記すること[上記字数に含む],また,表紙を付け,そこに選択した先生のお名前,選択したテーマ,学籍番号,氏名を明記すること)
注意: インターネットなどで検索した文章を、そのままコピー&ペーストしたり、あたかも自分が書いた文章であるかのようにレポートに組み込む(「切り貼り」)のは不可です。他の人の書いた文章を引用する場合には、「」でくくるなど、引用箇所がわかるようにし、その出典を明記してください。
例:陪審制度について、「多数のアメリカ人は、自分が陪審になるのは負担だと感ずるものの、この制度を意義あるものだと考えている[。]」(樋口範雄「はじめてのアメリカ法(補訂版)」175頁(有斐閣、2013年))