外国法の基礎(2023):アメリカ法の基礎と概説
16:35~18:05
■ 授業の予定
・主にアメリカ合衆国憲法について取り上げることを予定しています。
9月19日: アメリカ法の基礎と概説①: 英米法と大陸法、英米法の特徴、アメリカ法の特徴、「法の支配」、違憲審査制
9月26日: アメリカ法の基礎と概説②: 合衆国憲法の制定、連邦制、権利章典と人権規定の「組み入れ」、Duncan v. Louisiana, 391 U.S. 145 (1968)
10月3日: アメリカ法の基礎と概説③: 「一人一票原則(one person, one vote)」および選挙をめぐる問題について
■ 第1回目の授業(9月19日)までにやってきてほしいこと
(1) 英米法と大陸法の違いについて比較した表を、わかる範囲で埋めてきてください。
(2) さらに余裕がある人は、英文の資料"The Common Law versus Civil Law Traditions"の1ページ目を読んできてください。
■ 第2回目の授業(9月26日)までにやってきてほしいこと
(1) アメリカ合衆国憲法の条文にどんなことが書かれているか、目を通してきてください。日本国憲法の構成は、「第1章 天皇、第2章 戦争の放棄、第3章 国民の権利及び義務、・・・」となっていますが、アメリカ合衆国憲法の構成はどうなっているでしょうか?
(2) さらに余裕がある人は、判例Duncan v. Louisiana, 391 U.S. 145 (1968)の日本語および英語の資料を読んでみましょう。
■ 第3回目の授業(10月3日)までにやってきてほしいこと
(1) 第2回目の授業についてのミニット・ペーパーをメールで送ってください。
(2) 判例Reynolds v. Sims, 377 U.S. 533 (1964)についての資料(『アメリカ法判例百選』)を読んできてください。
(3) さらに余裕がある人は、アメリカの選挙をめぐる問題についての資料(「ロバーツ・コートにおける投票権の保障」)を読んできてください。
■ その他
・第1回目の授業時に、受講者のみなさんが特に興味・関心のある法律分野などを教えてほしいと思います。受講者数が少なければ口頭で話してもらい、多ければ紙に書いてもらいます。
・毎回の授業後、ミニット・ペーパーを書いて提出してもらいます。ミニット・ペーパーは平常点として評価します。 
ミニット・ペーパーに書くべきことは、①今日の授業で学んだことのうち、最も興味深かったこと(中心的な、役に立つ、意味のある、驚いた、あるいは問題だと思われること)、②一番心に残ったこと・気になったこと、③授業を聴いて思い浮かんだ疑問・質問などです。これらの全部を書く必要はありません。分量は、長くてもA4版半分くらいで結構です。
2023/09/19
table:<英米法と大陸法>
事項 英米法 大陸法
法源(法の本質) 判例法主義 制定法主義(議会制定法、法典)
法典があるか アメリカ・・・憲法典、刑法典はあるが、民法典はない
イギリス・・・憲法典も、刑法典も、民法典もない
推論の方法
裁判とは何か 第1次的法源 法律(制定法)を具体的事件に適用したもの
政府と法のモデル 法の支配(Rule of Law) 法治主義(法治国家)
悪法も法であるか? 根本法に反する悪法は法ではない。 議会で作られたのであれば、悪法も法である。
いつごろできたものか? 中世(11世紀~13世紀) 近代(17世紀~19世紀)
裁判官の役割 社会の中で「生ける法」を宣言する 法律を適用する機械
違憲審査権 付随的違憲審査制 抽象的違憲審査制
刑事裁判のモデル 当事者論争主義(adversary/adversarial) 糾問主義(inquisitorial)
一般市民の司法参加 陪審制(jury trial) 参審制
2.英米法の特徴
田中和夫(1971) ①「法の支配」、②判例法主義、③陪審裁判、④コモンローとエクイティ
田中英夫(1980) ①歴史的継続性、②歴史的淵源の多様性(コモンローとエクイティ)、③判例法主義、④各論的考察の重視(例:不法行為法 Torts)、⑤救済の強調、⑥私人による法の実現、⑦法曹一元、⑧陪審制
3.アメリカ法の特徴
田中英夫(1980) ①連邦制、②違憲立法審査制、③大統領制、④アメリカ型民主主義、⑤法学教育、⑥法形成における学説の地位
4.「法の支配」
1)「人の支配」
王(主権者、しゅけんしゃ)Sovereign
↓ 命令(めいれい) ↑ 服従(ふくじゅう)
臣民(しんみん)Subject
2)「法治主義・法治国家」Rechtstaat
議会(国会)
選挙↑↓法律(議会制定法)Statute
国民
3)「法の支配」(Rule of Law)= Supremacy of Law
根本法(fundamental law)・・・成文憲法 ←立憲主義(Constitutionalism)(Constitutionalism)
↓
議会(政府)
選挙↑↓法律(議会制定法)Statute
国民
2023/09/26
1.アメリカ合衆国憲法の制定
独立宣言 Declaration of Independence (1776年7月4日)
13の植民地が、それぞれ主権国家として独立
連合規約 Articles of Confederation (1777)
多国間条約
13のStatesをまとめる大陸会議(Congress)に課税権や軍隊がない。
↓
アメリカ合衆国憲法(U.S. Constitution) (1787)
2.連邦制
3.合衆国憲法の改正条項:権利章典と南北戦争修正
2023/10/03
00. 前回の質問とコメント → アメリカ法の基礎と概説:質問とコメント2023
0.連邦制の図の確認
「制限された政府」
連邦議会の権限・・・第1章第8節
1.第14修正のデュープロセス条項
①組み入れ理論 incorporation
②実体的デュープロセス理論 substantive due process
2.Duncan v. Louisiana (1968)を読む
3.一人一票原則
Reynolds v. Sims (1964)
(1) 司法判断適合性
(2) 基準
(3) 救済
現在の選挙区割(ノースカロライナ州)
https://www.dukechronicle.com/article/2022/03/north-carolina-state-congressional-maps-redistrict-gerrymander-gop-republican-democrat-roy-cooper-legislative
4.その他の選挙の問題・・・選挙と人種
レポート課題:
アメリカ合衆国憲法の特徴について、日本国憲法と比較して論じなさい。
(ただし、全部の論点を網羅的に取り上げる必要はなく、一人一票など特定の問題に絞ってもよい。)