外国法の基礎（2022）：アメリカ法の基礎と概説①～③

中村　良隆

授業の予定

9月20日：　アメリカ法の基礎と概説①：　英米法と大陸法、英米法の特徴、アメリカ法の特徴、「法の支配」、違憲審査制

9月27日：　アメリカ法の基礎と概説②：　合衆国憲法の制定、連邦制、権利章典と人権規定の「組み入れ」、Duncan v. Louisiana, 391 U.S. 145 (1968)

10月4日：　アメリカ法の基礎と概説③：　「一人一票原則(one person, one vote)」または「投票の抑圧（voter suppression）」について　

第1回目の授業（9月20日）までにやってきてほしいこと

・英米法と大陸法の違いについて比較した表を、わかる範囲で埋めてきてください。

・英文の資料"The Common Law versus Civil Law Traditions"の１ページ目を読んできてください（できる範囲で）。

その他

・もし受講者数が少なければ、第1回目の授業時に、受講者のみなさんが特に興味・関心のある法律分野などを教えてほしいと思います。

2022/09/20

１．英米法　Common Law／Anglo-American Law

大陸法　Civil Law／Continental Law

table:<英米法と大陸法>

事項 英米法 大陸法

法源（法の本質） 判例法 制定法（法典）

法典があるか イギリス：憲法典・民法典・刑法典のいずれもない。

アメリカ：憲法典・刑法典は、合衆国と50州全てにある。

推論の方法 帰納法 演繹法

裁判とは何か？ 判例：第一次的法源 判例は法源ではない。

法律（制定法）を事実にあてはめた結果。

政府と法のモデル 法の支配　Rule of Law 法治主義（法治国家）

悪法も法であるか？ 根本法に反する悪法は法ではない。 議会で作られたのであれば、悪法も法である。

いつごろできたものか？ 中世（11世紀～13世紀） 近代（17世紀～19世紀）

裁判官とは何か？

裁判官の役割

違憲審査権 付随的違憲審査制 抽象的違憲審査制

刑事裁判のモデル 当事者論争主義(adversary/adversarial) 糾問主義(inquisitorial)

一般市民の司法参加 陪審制(jury trial) 参審制

２．英米法の特徴

田中和夫（1971）　①「法の支配」、②判例法主義、③陪審裁判、④コモンローとエクイティ

田中英夫（1980）　①歴史的継続性、②歴史的淵源の多様性（コモンローとエクイティ）、③判例法主義、④各論的考察の重視、⑤救済の強調、⑥私人による法の実現、⑦法曹一元、⑧陪審制

３．アメリカ法の特徴

田中英夫（1980）　①連邦制、②違憲立法審査制、③大統領制、④アメリカ型民主主義、⑤法学教育、⑥法形成における学説の地位

４．「法の支配」

１）「人の支配」

王（主権者、しゅけんしゃ）Sovereign

臣民（しんみん）Subject

２）「法治主義・法治国家」Rechtstaat

国民

３）「法の支配」（Rule of Law）= Supremacy of Law

↓

議会（政府）

選挙↑↓法律（議会制定法）Statute

国民

独立宣言　Declaration of Independence (1776年7月4日)

13の植民地が、それぞれ主権国家として独立

連合規約　Articles of Confederation　(1777)

多国間条約

13のStatesをまとめる大陸会議(Congress)に課税権や軍隊がない。

↓

アメリカ合衆国憲法(U.S. Constitution) (1787)

■ レポートについて

字数は2,000字程度（A4版横書き2枚）、提出日は11月8日（火）です。

次のテーマのうち、１つを選んでください。

①人の支配、法治主義および法の支配について、比較して論じなさい。特に、それぞれのモデルについてどのような問題や限界があるかについて言及すること。

②アメリカ合衆国憲法の特徴について、日本国憲法と比較しつつ論じなさい。

③英米法（またはアメリカ法）における法曹一元と、日本における法曹の在り方について、比較して論じなさい。