ワモンゴキブリの脳破壊実験
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床を50℃に加温した円形の広場の一部に、常温の床(ゴール)を設け、広場のまわりの壁には視覚的なパターンを配した。ゴキブリを広場に入れると、高温から逃れようとして壁のまわりを走りまわるが、偶然、常温のゴールに入ると、以後、ゴールにとどまる。
この試行を5分間隔で数回繰り返すと、ゴキブリは次第に短い時間でゴールに到達できるようになった。
Aの実験では、縦縞の前にゴールを置き、Bでは縦縞と黒の模様の間にゴールを置いた。どちらの場合もゴキブリは次第に短い時間でゴールに到達するようになった。
しかし、壁の模様とゴールの位置関係を変えると、ゴキブリがゴールに到達する時間が長くなった。
さらにCのようにオレンジとバナナの匂いを壁に塗ったところ、壁の匂いをゴール到達のための手掛かりとして用いることもできた。 一方、壁に何の手掛かりもないと、試行を10回行なっても、ゴール到達時間は減少しなかった。
熱くない部分は視覚的には区別できない。
偶然ゴールに到達するとそこにとどまる。
同じゴキブリで数回繰り返すと、次第に短い時間で到達
9回ほどでほぼ直線的に向かう
壁を回転して模様の位置をずらすと、誤った方向へ向かい到達時間のびる
床は頻繁に交換しフェロモン等の匂いの手がかりは使えないようにした
→壁の模様を手がかりにゴールを発見
→ゴールの周りの景色を記憶する能力がある
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上の実験でゴキブリはゴールの周囲の景色を記憶する能力のあることが分ったので、脳の破壊手術により、脳のどの領域が場所記憶に関与しているかを調べたもの。上図キノコ体の赤い部位を、手術により破壊した。
脳の破壊によって学習に障害があっても、脳の破壊により運動障害や視覚障害などを引き起こしたとも考えられるため、対照実験を導入した。対照実験では、黒い床のゴールに目印として白い紙を置き、直接それを見ながらゴールに到達することを学習させた。ゴールが見える対照実験で、脳手術をしたゴキブリと正常なゴキブリが同じ早さでゴールに到達できた場合には、ゴール到達に必要な視覚や運動機能は正常であるとみなした。また、脳手術をしたゴキブリが、ゴールの見えない実験で、正常なゴキブリよりもゴール到達に長い時間が掛かった場合、そのゴキブリは場所の記憶に障害があると判断した。
微小なアルミニウムの薄片を脳の目標とする場所に慢性的に埋め込み、学習実験終了後、脳の組織切片を作り、どの領域の神経繊維がアルミ片により切断されているかを顕微鏡観察によって確認した。
その結果、左右両方のキノコ体を完全に切断すると、場所記憶に障害が起こることが分った。〈出典:水波 誠氏『昆虫−驚異の微小脳』〉