エリオット:vmPFC付近の髄膜腫症例
病前
頭の切れるビジネスマン
病気
切除する際に、ダメージを受けた前頭葉組織も切除
両側の眼窩部、内側部、右側の前頭葉白質の損傷
病後
朝起きて仕事に出る準備をするのにも
今の仕事を一旦中断して他の仕事に向かうことができない かと思うと、気まぐれに中断して、その時興味を覚えたことに集中しだす 書類を読んで分類しているときに、突然特定の書類を注意深く知的に読み始め、丸一日を潰す
分類方法に悩んで午後を丸々潰すことも
自らに降りかかった悲劇を、他人事のような超然とした態度で語っていた 努力して感情・動揺を抑制しているのではなく、穏やかでリラックスしている様子
何事にも同じニュートラルな雰囲気;悲しみ、イライラ、怒り、喜びなどを見せない
まれにそういう感情を見せることがあった、しかし瞬時にもとに戻る
彼は少しも言葉を濁すことなく、病気をする前とくらべて自分の感情は変わってしまった、と私に言った。
刺激の知的内容、それがかつて自分に与えた感情については知っているが、感じない
無感情の問題を自覚しているが、それに対して不安や焦りのような情動が起きない?
運動や知性・記憶などは変わらず
一貫性のある言動、ニュースや経済情勢の把握
ユーモアを交えた言動
クール
一般的な前頭葉機能に異常なし
前頭葉を損傷した患者の多くは異常を示す
1つのルールに固執することはない
倫理的ジレンマ、経済的課題などの意思決定課題では、常識的な意思決定をした
意思決定における常識的な知識はある
妥当な解決策を考える課題で平均的な成績
行動の結果に配慮する傾向の強さを見る課題で優れた成績
出来事の結果を予測する課題で平均的な成績
実験室課題では正常なのに、それがカバーしているであろう日常生活場面では異常な意思決定をする
日常生活では
選択肢を考え出すだけでなく、その中から実際に選択して行動を起こす必要がある
自分の選択に対して相手からの反応があり、状況が変化してまた次の選択を迫られる
ある検査が終わろうとしているときだった。その検査で彼はじつにたくさんの行動オプションを考え出し、そのすべてが妥当かつ実行可能だった。自分の豊富なイマジネーションに満足するかのように、エリオットは微笑んだ。が、こう付け加えた。
「そうはいっても、やっぱり私は何をしたらいいかわかってないんだよ」