ニブのしなりやすさを決める要因
ニブ全体のしなりやすさを決める要因についての記事を、twitter でその著者から教えていただいた。スティールかゴールドかといった素材以外の要因として、以下が挙げられている。今のところ、要はニブの長さと厚さ、そして幅の3つで決まる、と理解している。 ニブ全体のしなりやすさを決める要素として、ニブの長さ、とくに breather hole (ニブ中心にある小さい穴) から先の長さ、厚さ、幅が重要である。ニブのしなりやすさと、これら3つの関係はヤング率 Young's modulus の関係が、たぶんある程度当てはまる (その1)。 幅に注目すると、breather hole から先の形状が細い、つまりニブ先端から半分か2/3くらいの尖っている部分が鋭いとしなりやすく、鈍いとしなりにくくなる (その2)。 Breather hole の位置でニブの両側に切り込みを入れると、しなりやすくなる (その3の後半)。Breather hole の形も、しなりやすさに影響する。 (その3の前半は、ニブのしなりやすさそのものの話題から離れ、筆圧をペン先スリットを開かせる力に変えるニブの湾曲部分の効果について説明している) Breather hole の両側に切り込みを入れるとしなりやすくなる理由として、軸に固定されている部分の湾曲の効果 (この湾曲が、ニブのしなりを抑えている) を無くす機能をもつことに加え、ニブの厚みを減らす役割もあると書かれている (その3の図4)。切り込みがニブを薄くする効果をもつ理由は、まだよく分からない。湾曲して下に曲がった部分を、ニブの厚さと捉えているのかなと予想している。加えて、この切り込みを入れた部分は、幅も狭くなるため、しなりやすくなるとも考えている。 この記事の要点は、ニブの形状によって、同じ筆圧でもニブ全体のしなりという反応を変えることができるという点だと思う。これは、現在の flex nib を見ると、理解しやすい。
Ahab など Noodler's Ink 製の flex nib は、スリット部分を長くしている (つまり、幅の狭い部分を長くしている)。Aurora 88 や Optima の flex nib は、breather hole から先を長く細くしている。Edison Pen や Franklin-Christoph の flex nib は、Aurora のやり方に加え、breather hole 横に切り込みを入れている。 これに関係して、Pelikan の主要な製品のニブについても、いろいろ教わった。まず Classic シリーズの M200 は、スティールニブだがしなりやすい形状につくられている。この Classic シリーズのスティールニブのしなりやすさは、日本以外の多くの Pelikan ユーザーも指摘している。おそらくニブを薄くすることと、breather hole から先を細くすることで、しなりやすさが生まれているのではないか。 一方で、Souberan シリーズの M400 などのゴールドニブはしなりにくい形状をしている。Souberan シリーズでは、型によってしなりやすさが違っている可能性もある。たとえば、M1000 は M400 などよりもしなりやすいというお話しもあった。
Plikan がなぜ、このようなニブデザインを選んだのか、興味のあるところ。Pelikan の製品名のつけ方、その特徴については、Pelikan 101 が分かりやすい。 *
今までニブのしなりやすさについて、硬いあるいはやわらかいという言葉を使ってきた。しかし、Young's modulus の説明を読んで、 「しなり」や「たわみ」、「撓り (おおり?)」といった言葉の方が、より誤解を呼びにくいかなと考えた。 (Revised at 7:00 on September 3, 2018)
(11:04 on September 2, 2018)