翻訳時のメモ
もって回ったようなくどい言い回しが多すぎる。
同じことを2回目に言うときは別の表現で表すという文学的書き方であるため、言葉の違いによる翻訳上の困難があった
翻訳に苦労した部分
(解剖学における)大脳辺縁系の
limbic connection
limbic regulation
本文中では感情のコントロールという言葉を使わずに、あえて辺縁系の機能という言葉が使われている場所がある。
脳の解剖学に詳しくない人には分かりづらいのだろうが、「感情のつながり」「感情の規制」などとすると意志の力でコントロールできるかのように思われる可能性があるので、あえて解剖用語を使っている模様。
emotional knowledge
emotional mind
それぞれ感情的知識、感情的心などと訳すのが忠実だが、「感情的な心」などとした場合、「感情に振り回されるような心の弱さ」というニュアンスがあるため、「感情と心」などと訳した部分がある
attractor
アトラクターとそのまま訳したが、誘うもの、引き入れるもの、魅惑するものという意味 reptilian brain
爬虫類脳 とした。日本語では脳幹と呼ばれる部位群であり、中脳・延髄などを含む原始的な部分だが、一般読者にわかりやすくするため、爬虫類と共通して持つ脳の部分、という表現になっているようである。 複数の著者の共著であるため、科学・心理・医学など複数の広い視野から感情を見つめたものになっているが、このように多くの分野を横断可能な翻訳者があまりいないことが、翻訳を遅らせた原因の1つでもあると思う。
筆者の愛
筆者達が精神分析や心の仕組みの理解を強調するのも、筆者達自身の愛ゆえにであり、それは精神科領域、セラピー業界の縮小を防ぐという無意識、意識されない意図がある可能性を忘れずに読む必要はある。 結論として、とにかく信用できるセラピストのセラピーを長期間受けなさいという主張が宣伝的で、科学的と捉えられない部分があるため、あまり翻訳されなかったのか。