静寂
もうあなたはいないということを思い出すたびに、あなたさえいれば、こんなふうに必死に、生きていれば更新されていくような些細な思い出を脳裏に留めておこうとはしなかっただろうと思う。もうこの世にあなたはいない。いつもそれは思い出される。それは当然の事実ではなく、あったものがなくなってしまったという喪失が間に挟まる。
どんな話をして、どんな風に笑ったか、きっと日常のささやかすぎるありふれた毎日に埋没した瞬間が、泡のように弾けて無数に消えていっただろう。あなたはもういない。あなたのいた痕跡だけがある。あなたの残した足跡や、あなたの残した言葉のかけらだけが私の中に残っている、それすら、日々の波にさらわれて少しずつ形を失っていく。砂のような微細さで記憶に降り積もる。