オズワルドの思い出
5歳頃だったと思う。祖父に連れられて森に遊びに行った。昔は遊ぶといえば女の子たちと家の中で本を読んだりままごとをしたりというのが中心だったので、初めて見るものばかりで、ひどく興奮していた。祖父はそんな自分を見て、足も手もある、どこへでも行けるぞと笑った。 祖父と自我が芽生えてから会ったのはその時が初めてだったが、自分を抱きあげて、こりゃ別嬪な子だなと豪快に笑った。それまで壊れ物でも扱うかのように父も母も容易に抱いたりしなかったのだが、祖父はそんなことお構いなしになんでもやらせたし、それがひどく心地よかった。それまで、ままごとの人形のように、主体的な願望を持たなかった私は、部屋の中で静かに座っていることが一番両親を喜ばせるのだとどこか諦めていた私は、その祖父の言葉を聞いた瞬間、波に洗われでもしたかのように、瞬いた刹那、見える世界がたちまち変わっていったのだ。