書評『子どもが「学び合う」オンライン授業!』
全体を通して、子どものためにできること、やったほうが良いことという視線で記述されています。なので、オンラインで利用できない子どもがいて不平等なのでオンライン授業は実現できないという意見に対しても、「子どものため」視線からの反論が行われるなど、できない理由を探すのではなく、できる方法を考えるという方向で記述されています。
副題に「Zoomでできる」などとつけた方が良いぐらいに、Zoomの推奨される初期設定からオンライン授業の方法まで、詳しく書かれています。また、その説明に関しても、行う実践に必要な機能が必要な場所で説明されているので、よりわかりやすくなっていると感じました。有料プランの支払い方法についても、学校で清算できる方法が説明されていたりと、痒い所に手が届く内容になっています。
基本的にスクリーンショットをたくさん使った説明なのでわかりやすいと思います。ただ、文中での「右下のなになにというボタン」などの表記の部分は、そのボタンやアイコンの図なども含めて書いてあげることで、もっとわかりやすくなるのではないかなと思いました。
Zoom以外のツールとしては、子どもたちが一緒にまとめや進捗の記録などができるように、Googleドキュメントとスプレッドシートの共同編集機能が利用されています。
児童および生徒用の詳しいマニュアルも、編著者である西川先生の研究室のページ で公開されているため、すぐに実践に利用できると思います。唯一残念に思うのは、この資料がPDFで公開されている点で、学校の事情に合わせて改変するのが難しいことがあげられます。 メインのテーマである「学び合う」に関してはわかりやすい概略説明になっているので、詳しく知りたい場合は本文で参考文献として挙げられている他の本も読んだ方が良いように感じました。
オンライン授業を使うことで「学び合う」実践がある意味加速されるというのは面白いなと思いました。また、実際に授業の進度も加速されるというのは本当に驚きました。
最初の章で、現状でオンライン授業を行うことに関しての、通達文章などによる理論武装もされていて、校長などの管理者に対しての説明などにも役に立つと思います。
とりあえず、オンライン授業を始めたいが、どのようなツールが使えるのかやどのような実践が可能なのかを知るための最初の一歩としてはこの本はお勧めです。
さらに、従来型の学校の管理者に対する説得の材料としても、十分役に立つと思います。