無形資産が経済を支配する
投資のダークマター
存在はするが未知の物質 ダークマター
マイクロソフト2006年の時価総額2500億ドル
バランスシートの総資産は700億ドル
そのうち600億ドルは金融資産や現預金
工場や設備といった伝統的な資産は30億ドル、全体の4%
マイクロソフト社の帳簿を精査して時価総額が高い理由を説明しようとした
通常は具体的な製品やプロセスの開発に伴うののや、組織能力への投資、企業がある市場で競争できるような立ち位置をつくり出すような製品プラットフォームの構築またな強化のための投資、となるような資産を童貞
研究開発や製品デザインへの投資で生み出したアイデア、ブランド価値、サプライチェーンや社内構造、研修で構築した人的資本
これら無形資産は投資の特徴をもつ
事前に時間とお金を費やさねばならず、MSが恩恵を受けるような価値を長期にわたって提供
企業バランスシートには表れない
国のバランスシートにも表れない
無形資産の大きな特徴
計測:資本なき資本主義
無形資産は全体として、伝統的に支配的だった有形資産とはかなり違う経済特性を持っている
特徴1:有形資産は転売できる。無形資産はサンクコスト、埋没費用を表す、転売しにくい、企業固有の文脈があるから
特徴2:波及効果がある。工場を持ち、すごい設計図をもっている場合を考える
工場に鍵を閉めれば他の人は使えない。
設計であれば、設計されたものを買って他社がリバースエンジニアリングできる。特許にも迂回発明という対策がある。少なくとも工場に泥棒を侵入させないより、他社に使わせないのは耐燃
投資をしなくても他の企業から多少の知識はもらってくることもできる、スピルオーバー
特徴3:拡張可能、スケーラブル
コカコーラのシロップを製造するためのレシピ
ネットワーク効果があるとより威力を発揮する
特徴4:シナジーを持つ
組み合わせた方が価値が高まる相手がある
有形資産の「トラックと積み込み場」より、革新的で予想外の組み合わせがいろいろある
無形資産、GEのCTスキャン、最初に作ったのは別の会社、つくりかたのコストは低くコピーできる、GEが顧客基盤と組み合わせて、莫大な収益に
競合財はひとりしかつかえない。知識は多くの人につかえる、非競合財、スケーラビリティ
研究開発や製品開発の資産への投資は、物理投資に比べて負債での資金調達がやりにくいことを示した、hall and lerner 2010
無形資産の条件から企業三資本の条件を逆算してつくれそう
組み合わせによる価値増大、の特徴にはコラボレーションの強さがありそう
一般的に考えられる「参入障壁」的な発想は、波及効果があるか切り難しいか、ストーリー側の障壁か
国民会計では、企業や政府や第三セクターによる「生産」を計測する
家計の「生産(自宅での洗濯や料理)」は含まれないし、家計による投資(洗濯機やコンロ)も含まれない
歴史的に主に女性が実施してきた経済の部分を記録から外してしまっている
本書で言う「投資」は、企業、政府、第三セクターが固定資産をつくり出すために行う支出のこと
生産サービスの長期ストリームをつくり出すために使われたリソースの話
こうした長期の生産サービスを提供する固定資産を「資本」と呼ぼう、経済学者たちはこれを「生産要素」と呼ぶ
無形投資の長期的増大の原因
技術と費用
製造業の生産性はサービス産業よりも急速に上昇するのが通例
オートメーションと労働節減設備は、製造業のほうで貢献が大きいから
時間がたつにすれ、労働集約型サービスの値段は製造財と比べて高価になる
有形投資は製造業が中心
無形投資ははるかに多くを労働に依存
デザインはデザイナーへの支払い、研究開発は科学者への支払い、ソフトウェアは開発者への支払い
技術と無形投資の生産性
スマホ普及により、ウーバーの運転手ネットワーク構築の収益性を改善した
ソーシャル技術も同じ
仮説:無形投資の上昇は、IT改善の副作用に過ぎないのでは?
GDP計測の歴史
無形投資の計測の歴史は、GDP計測の歴史のほんのいちエピソード
何を数えるのか?を決める
機械以外は投資と見られなかった
生産を数えるのは難しいので、GDPの最初の推計は支出を使う
1940年代、投資は物理的なものだけに厳しく制限された
設計などは、長持ちせずに生産プロセスで消費されてしまうものだと認識された
1999年に、アメリカBEAは、アメリカGDPの計算にソフトウェアも投資として認めた
銀行がコード開発に支出していることに統計学者が気がつき、かつコードは何年か使えるらしい(資産のようだ)
2000年代初頭には、企業が物理的な実態はないのに価値がある耐久物に大金を支払っているという信念が企業アナリストたちの間でますます高まっていた。ソフトや研究開発だけでなく、新しい組織的な仕組みも含まれた
ソフトウェアの資本化でGDPが上振れした
GDPに取り込まれるというのがひとつの着地なのでは
無形投資の計測
企業が無形資産にいくら支出しているかを調べ、実質投資を計測する
支出のすべてが耐久資産をつくり出すとは限らないから分類する
支出をインフレと品質変化に応じて補正し、物価と品質が変わっているときの各種期間の投資を比較できるようにしたい
これらの投資がつくり出す資産ストックを計測する
この資産はどれぐらい急速に価値を失うか?
毎年どれぐらい陳腐化するか?
経済への投資フローが年ごとにわかり、減価償却の速度もわかれば、ある都市の無形投資のストックも計算できる
財の価値の測定
市場価格を探す
なければ費用ベースで考える
問題点:一部の成功した財はとてつもない収入をもたらす
成功と失敗がつりあえば、大規模な経済における財の測定としては平均化されるのでそれでもよさそう
標準化されない無形資産
他社は買いにくい、量産物ではない
元の所有者にとってのみ価値がある
だからサンクコストになる