黄桃の育種増殖法事件
平成10(行ツ)19 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成12年2月29日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
植物新品種の育種過程における反復可能性
発明は、自然法則の利用に基礎付けられた一定の技術に関する創作的な思想であるが、その創作された技術内容は、その技術分野における通常の知識経験を持つ者であれば何人でもこれを反復実施してその目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体化され、客観化されたものでなければならないから、その技術内容がこの程度に構成されていないものは、発明としては未完成のものであって、特許法二条一項にいう「発明」とはいえない(最高裁昭和三九年(行ツ)第九二号同四四年一月二八日第三小法廷判決・民集二三巻一号五四頁参照)。したがって、同条にいう「自然法則を利用した」発明であるためには、当業者がそれを反復実施することにより同一結果を得られること、すなわち、反復可能性のあることが必要である。そして、【要旨】この反復可能性は、「植物の新品種を育種し増殖する方法」に係る発明の育種過程に関しては、その特性にかんがみ、科学的にその植物を再現することが当業者において可能であれば足り、その確率が高いことを要しないものと解するのが相当である。けだし、右発明においては、新品種が育種されれば、その後は従来用いられている増殖方法により再生産することができるのであって、確率が低くても新品種の育種が可能であれば、当該発明の目的とする技術効果を挙げることができるからである。